5.孫存周先生に八卦掌をご指導いただき、改変していただく

 

私は存周先生に私の八卦掌を直していただくようお願いした。すると先生は「散手であれば話ができるが、お前の拳、姿勢、動作、套路などはいずれも改変することはできない。さもなければお前に教えた人に申し訳が立たない」と言われた。

 

国術界にはある伝統的な習慣があって、同門、友人、知り合いの弟子などであっても、その者を弟子にすることが出来ないだけでなく、その者に教えたり、その者の武芸を改変してはならないという決まりだ。それを行えば、必ず後々摩擦を生み、ひどければ衝突することになる。そのため、別の師に武芸を学びたい場合、昔は規則に従い、今の師が弟子を連れて、弟子が学びたい師の下を訪問し、弟子をお願いすることで敬意を示すのが慣わしであった。現在は交通も連絡も昔に比べて便利になったので、少なくとも今の師が手紙を書くか、電話で弟子が新たに学びたい師へ連絡してその旨を了承し受け入れてもらわなくてはならなかった。

 

八卦門には相手を制服するが、傷つけない方法がある。相手に接手し、壁に追い詰めるまで相手を動かして、重心を崩してまともに立てず反抗できなくする。これは速度、技巧、功力が融合した高級動作である。存周先生はこの技術が非常に得意であった。

先生は「大切なのは速度、技巧、功力だけでなく、「意制(意念、意識によるコントロール)」が最も重要であり、相手がどのように変化してもそれに従って変化しなくてはならない。さもなければ高手(レベルの高い人間)に出会った時に制服できない」と、説明された。