昨日、夏井いつきさんとのコラボ

「浅草の粋、大和絵師伊東正次と俳人夏井いつきのコラボ句会ライブ」無事終了いたしました。

お越しいただきました皆さまありがとうございました。

夏井さんの軽妙なおしゃべりと一つのイベントとして息も付かせず2時間行うライブに感服いたしました。

最初、句を作るコツをみなさんにご教授。1番前に座っているおじさんをいじりながら、その方の今日のお昼ご飯をネタに一句。その方のお昼ご飯に何を食べたかを聞き出しただけで、一句できるところが凄い。(作り方については、ぼくが言いたいところですが、ここは、ライブに来ないと聞けないということで、どうぞライブにご参加ください。)

そのあと、こんな作り方で皆さん作ってくださいね。と言って、お題が出されます。

お題は「実演」。なんの実演かというと、ぼくが、スケッチしているところをライブで観ながら、それについて、会場にいる全員が一句を作ります。

それを、できた人から回収して、その350ほど出てきた句を全部、夏井先生が読み込んで、7句を選び出します。多い時は1500人ほどいるそうで、それを、全部その場で読み込んて、選句するのも驚異的です。

ここから後半。

まずは選外になった句から拾って、いわゆる出来の悪い生徒をそれなりに貶しながら、でも、暖かくサポート。この辺りは、中学生を教えていた経験からの面目躍如。夏井さんが辛口なのに、みんさんが夏井さんについていくところの一旦がこの辺にもあるかもしれません。

ここから、本番

7句ある句の中から、どれかを選び会場の人が、その句の良いところを解説します。まだ、誰の句かわからないので、他人のふりして、それを褒めまくっても大丈夫です。この辺は、誰の作品かわからないところがミソです。順番に、それぞれ、数人の人が、その句をほめていって、最後は多数決で大賞が決められるという流れです。

それが、会場の皆さんの一人一人の解説もおもしろいし、それを、一人一人サポートしながら、笑いをとっていく夏井さんのリードもまた絶妙。

最後に作者に名乗り出ていただいて、顕彰。

ぼく自身、これなんだろうと。思いながら見ていて、思ったのは、まさしく「面白い授業」。授業って、ライブだから、生徒さんが寝てるような授業もあれば、生き生きとみんなが聴いている授業もあるとするなら、これは後者。

みんなが、ハイハイ、と、手を上げて先生に当てられるのを待っているところなど、まさに、授業と一緒なんですね。2時間終わった時に、みんながあっという間の2時間だったね。みたいな方法論はぜひ、全国の先生の皆さん方にお知らせしたいなという句会ライブでした。

その中で、ぼく自身もどの句が良いかなあと思いながら、見ていたのですが、最初ピンと来なかった句がありました。

「水筆の走るさなかを銀杏散る」

ぼくが前で実演している時に、水筆という筆を使いました。筆の中に既に水が入っていて、スケッチの時に、バケツに水を用意しておかなくても、これ一本あれば、どこでもスケッチできますよ。という便利な筆なんですが、この筆で描いている「さなか」を銀杏が散る。と言うことなので、実際とは違うわけです。

でも、その句を誉めた人は、スケッチをライブ会場ではなく、あたかも、その現場で描いている時に、銀杏が散る風景をイメージしたわけですね。

あっと、思いました。たしかに、会場で描いている時に銀杏は散らないけど、スケッチをその木の前で描いていたら、そうなったかもしれない。という臨場感がパッと広がったわけです。

最初にぼくが絵を描き出す時に、「普段は実際の風景の前で、これを描くわけですが、今日はその風景が見えないので、写真を使って描きますね。」と、一言伝えて描き出したわけですが、まさに、その方は、このスケッチを現場で描いているようなイメージで捉えたわけです。

それは、ぼくの絵を描く時の気持ちとも合致してましたし、なにより、その解説が、ぼくのこの句に対するイメージをガラリと変えてしまったことは衝撃でした。

最後に、巻きが入っていたので、あまり、話せませんでしたが、「芸術というのは、作者だけが作るのではなく、作り手が半分、後、半分は観る側が作っている。」というのを、この句と、それを解説した方の話から改めて感じました。

そう言えば、夏井先生も、この間、一つも自分の表現をしていないにも関わらず、会場の観客の中から、多くの想いを拾い上げ、それをパフォーマンスにして、みんなと共有している。これは、教育者のありようともいえるし、さらに言えば、芸術家のありようとも言えるのではないでしょうか。

とかく、芸術は自己表現と思われがちですが、そんなことはないとぼくは思っています。いかに、人の想いを汲み上げて、それに形を与える。素晴らしいライブはその力を持っているものだと深く感じ入った句会ライブでした。

夏井先生のパフォーマンスの素晴らしさに感じ入る一日でした。夏井先生お疲れ様でした。ありがとうございました。

また、浅草で開催するにあたり、会長の冨永様はじめ浅草おかみさん会のみなさま、東京おかみさん会、浅草商店連合会、三冬社のみなさまには多大なるお力添えをいただきましたことを感謝申し上げます。

また、最後になりましたが、スタッフの皆様には、短時間で舞台設営から、撤去まで、(舞台も客席もないところに作っていただいて)ハードワークで支えていただきましたことを感謝です。

皆様ありがとうございました。