町田薬師堂でスケッチ

 

1.薬師園内の古民家と蝋梅

2.夕焼けに沈む山並み

3.薬師堂

4.夕焼けの木立

 

薬師園内の古民家と蝋梅のスケッチを描くにあたってのプロセスと考察

1.手前の蝋梅と奥の古民家とさらに奥の山と空。

軽く蝋梅の黄色の花と幹を描いた後、奥の古民家は、それを「避け」ながら筆を入れていきます。一本の線で民家の直線を描きたいのですが、手前にある蝋梅の花や幹を「避け」なければいけません。さらに、民家の屋根は背景の山を描くことで表現します。この「避けて描く」というのが結構ストレスです。残したところが手前の形になります。そして空。

ここまでは、形の取り方についてのお話です。

 

2.それに、構図を考えます。紙全体に描いている形がどう配置されているか。色と形の配置が全体にもたらされる影響を考えます。

 

3.そして、色の強弱。色相のバランス、明暗のバランス、彩度のバランスを考えながら、パレット上で色の混色を考えます。その色になるには、コバルトバイオレットとインディゴとバーントシェンナを、何対、何対、何で混ぜるか。などなど。混色の計算です。

それに、水彩画は、紙の白さを利用するので、塗らないことで色を出さないといけません。つまり、白を混ぜるのではなく、白を混色から引くわけです。引き算による混色。

 

4.さらには、筆致の動かし方。大きい筆小さい筆。僕は基本的に、二本しか使いませんが、たくさん使う人はさらに複雑な筆の交代があります。

 

5.そして、にじみ、ぼかし等々考えます。マチエールですね。にじみは乾く前に描かないといけませんが、濡れてると隣同士が混ざってしまって色も形も崩れてしまいます。乾く時間との塩梅です。濡れ具合と乾き具合を考えながら筆を入れるわけです。

 

6.最後にペンで細かな形を描くのと、表情を与えます。例えば花の形は、ペンで軽く描き加えたり、古民家の窓や柱はペンで少し強く描いてやります。

 

7.サインの位置と落款の位置を考えて入れて完成。

 

ということで、形、構図、筆致、素材とマチエール、明度、彩度、色相、混色、重色、それらを全て同時に頭の中で何十次方程式を解きながら、最終的にそれが三十分後にあるイメージとして完結するように、今の一筆を入れるわけです。

と、自分の絵を見ながら、うまく描けない言い訳を考えながら、こんな理屈を捻り出したわけです。

 

うまくいかないこともたくさんありますが、それをなんとか画面の中で折り合いをつけて、どんなに不味くても30分後に完成されなければいけない。完成してしまえば、その結果が、自分に突きつけられるし、うまくいかなかった時は、それを生み出した自分の力量に耐えなければいけないわけですね。

 

スケッチは自分の画力の非力さを思い知る良い機会でもあるし、うまく行った時には喜びでもあります。たったの三十分ですが、毎回ドラマがあるわけです。そんな、画面がいかに自分の思い通りにならないかを知る体験を通して、還暦のおじさんでも、今日も一日ほんの少し成長したなあ。(たぶん)と、思うわけです。

それってなんか、人生そのものにも似てるような気がします。

頭は目まぐるしく使ってるので、料理と同じくボケ防止にはなりますので、お年寄りの方にもぜひ、おすすめです。