この選挙は意味があったのだろうか。
出直し大阪市長選で橋下徹氏が再選された。
しかし、過去最低の投票率では、大義とした大阪都構想への「民意」が得られとはいえない。
大阪維新の会以外の政党が候補者を立てなかったことも大きいが、そもそも都構想に議会の賛同が得られないから、ちゃぶ台返しのように辞職、出直し選挙に持ち込むのは乱暴すぎた。
有権者の関心が低かっただけでなく、予算編成の大事な時期に市政を停滞させ、約6億円もの選挙経費を支出することに批判が大きかった。
それが棄権、あるいは白票となって表れたと、橋下氏は真摯に受け止めるべきだ。
不敗戦を選択した各党にも反省を求めたい。
橋下氏の挑発に乗るのは得策ではないと考えたようだが、傍観はあまりにも消極的だ。
市議会は野党が多数である。
むしろ市長不信任案を可決して都構想の是非を問うなら、これほど市民不在の無意味な選挙にはならなかったのではないか。
橋下氏は都構想の制度設計を話し合う法廷協議会から反対派の府議を外し、議論を加速させる考えだが、府議会でも維新は4人を除名したため過半数を割っている。
秋に住民投票を行い、来春には大阪都に移行するというスケジュールはほぼ不可能だろう。
となると、再び辞職、統一地方選とダブルで再度出直し市長選に挑むことが予想される。
が、強引な策は信を失うだけである。
もはや、一時の橋下ブームはない。
出直し選挙で本人が再選されても任期は延びない。
来年12月までの残りの任期は、市営地下鉄などの民営化、市政改革、財政再建などの喫緊の課題に取り組み、ゴールとしての都構想を目指す方が、遠回りのようで近道になる。
今回の市長選は「大阪の問題」だったが、選挙結果が国政に与える影響も小さくはない。
日本維新の会は憲法改正や慰安婦をめぐる河野談話見直しなどで独自の存在感を示してきた。
ただ、当初から聞かれる旧太陽の党系と大阪維新の会系との東西の不協和音は強まっている。
その接着剤の役割を果たしてきたのが、集票力を発揮する橋下氏の個人人気だった。
求心力を保てるかは、党の行方、野党再編にもつながる。
橋下氏にも、日本維新の会にも、正念場だ。