傷跡 | ウズブロイェニエのブログ

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傷跡(1976年)

監督 クシシュトフ・キェシロフスキ
出演 フランチシェク・ピエチュカ
   イェジー・シュトゥール
            マリウシュ・ドモホフスキ
   ミハウ・タルコフスキ
**70年代初頭、ポーランドの地方都市オレツコにコンビナートの建設の計画がたてられ、現場の責任者にステファン・ベドナシュが選ばれた。地元出身で人間性も認められていたベドナシュはオレツコの人々からも快く迎えられた.しかし建設が進むにつれ住民との間に溝ができてしまい、家族からも首脳部からも孤立していってしまう**



キェシロフスキの劇場用長編映画の1作目。もともと短編のドキュメンタリー映画を手がけていた経緯もあってか、脚本をロムアルド・カラシというジャーナリストのルポをもとに作られている。商業映画という意味ではかなり内容が質素。物語も当時のポーランドの政治が絡んだものなので、後期の『トリコロール』3作のようなものとはかなり異質なもののような印象。『偶然』や『終わりなし』では多少政治ネタも絡んでいたが、この監督はワイダと違い、映画の内で戦争や政治を絡めずにひたすら人間を描くことをむしろ追っていたのかもしれない。この『傷跡』の内でも描かれているように当時のポーランドでドキュメンタリーを撮影するにあたっては困難な状況が映画製作よりも多く、ある種の限界を感じ映画の世界へ転向してきたようにもうかがえる。映画もかなり厳しい制約の範囲内でおこなわれる筈なので、ドキュメンタリーの製作と似たような状況かもしれないが、創作することができる映画という場所で人間を描くことへの可能性をより感じたのだろう。
新たな職に就いた監督官のベドナシュが抱いた希望は、映像作家としてデビューしたキェシロフスキ監督自身にダブり、またベドナシュが直面した、葛藤や挫折も監督自身だったのかもしれない。政治を絡めることによって、ドキュメンタリーの製作のときのような厳しい制約がでてきてしまい、本来描きたかった人間の姿が描ききれなかったのかもしれない。次作の『アマチュア』では政治色を全く排除している。
キェシロフスキ監督は作品の完成度に不満を持っていたようだが、地味ななりに良質の作品で、随所に素晴らしい映像が現れる。特に『ある殺人に~』、『ふたりのヴェロニカ』『トリコロール青の愛』でも組んだZイジャックとの相性はよく、刺激的な色彩もみられる。役者も地味ななりに有名どころが多く出演していて、若いJシュトゥールも良かったし、太々しい面構えの秘書を演じたAホランドも良かった。特に主演のFピエチュカは地味に好演していた。