CODE1 記憶のはじまり
嬉しいめぐり逢い
―七番街スラム付近―
クラウド:うう……ああ……
ううう……
トンピラB:ああ、それに見ろよ
ソルジャーの制服だ
チンピラA:つーことは、あのでっけえ剣
かなりの値打ちものにちがいねえな
クラウド:うう……ああ……
チンピラA:チッ、放しやがらねえ
中毒のくせに、力だけは強いな
住民:おい、あんた大丈夫か?
動けるなら、神羅に行きな
保護してもらえるらしいぞ
クラウド:ああ……あ……
住民:最近、ああいうヤツ、多いな……
よくなるといいけど……
―七番街スラム駅―
クラウド:うう……
駅員:……かわいそうに
クラウド:う……あ……ああ
あ……ぁ……ティファ……?ティファ!
ティファ:あ、クラウド!
クラウド
俺はクラウド……クラウド・ストライフ
神羅を辞めた元ソルジャークラス1ST……
ここはミッドガルの七番街スラム駅……
目の前には幼馴染のティファがいる。任務で故郷に戻って以来の再会だ。それが俺の最後の任務だった――
ティファ:……何年ぶりかな?
クラウド:5年ぶりだ
ティファ:あ、ううん、なんでもない
本当に久しぶりだなって、思って
クラウド:故郷のあの事件以来ずっと
ティファを心配してたんだ
無事でよかった、本当に……
ティファ:えっ?事件のこと、どうして――
――……――……――
ティファ:あれから、いろいろあって
今は七番街スラムに住んでるんだ
近くの酒場でバーテンダーをやってるの
クラウド:……へえ、そうか
ティファ:クラウドは?
ニブルヘイムを出てからどうしてた?
クラウド:俺は……
ソルジャーになって
クラウド:…………
ティファ:……クラウド、どうしたの?
クラウド:すまない、神羅でのことは話せない
守秘義務があるからな
それに楽しい話じゃないんだ
ティファ:そこをなんとか……
幼馴染の活躍を聞きたいから
クラウド:…………
うう……
ティファ:ちょっとクラウド、大丈夫?
やっぱり具合悪そう
クラウド:心配ない
忙しくて、ここ数日寝てなかっただけだ
さすがに ひと眠りしたほうがよさそうだ
宿に行くとするよ
じゃあな、ティファ
またいつか会おう
ティファ:ちょっと!ちょっと待って!
どこで会えるの?滞在先、教えて?
クラウド:……
しばらく、このあたりにいるつもりだ
宿は、これから探す
家探しはそれからだ
ティファ:だったら、うちのお店に来なよ
幼馴染として積もる話あるし、ね?
クラウド:いや、いい
ティファ:家探しも手伝うよ
だから、見つかるまで店にいて
クラウド:自分でなんとかするよ
落ちついたら、また連絡する
ティファ:待ってってば!
私、空き部屋の心当たりがあるの
きっと紹介できると思う
クラウド:……
そうか……じゃあ、頼む
ティファ:うん、任せて!
スラム歴5年の私がいろいろ教えてあげる
ティファ:お店はこっち!ほら、早く!
クラウド
偶然、ティファと再会できるなんて
最高にうれしいはずだった。
でも……
体が重くて、頭は痛い。俺が、俺じゃないみたいだった……
元ソルジャークラス1ST
クラウド・ストライフ。
何度も自分に、そう言い聞かせていた――
うわすべる言葉
―七番街スラム―
クラウド
5年ぶりに幼馴染のティファに再会した。またこうして一緒に歩ける日が来るなんて信じられない思いだった……
ティファ:仕入れしちゃいたいから
ちょっとだけ寄り道していい?
ティファ:ありがとう
カクテルに使うお酒が
足りなくなりそうだったんだ
クラウド:……
ティファ:あれ?どうしたのクラウド?
クラウド:いや、昔のことを思い出してな
ソルジャーの仲間達と一緒にカクテルを作ってよく飲んでた
懐かしいな……ウインターソルトって名前のカクテルが、一番美味かった
ティファ:ウインターソルト?聞いたことがないけど……どんなカクテル?
クラウド:え、えーっと……
どうだったかな
たしか……塩を雪に見立てたやつだ
ティファ:へえ……どんな味だった?
クラウド:し……塩辛かった
ティファ:ええ!?ほんとに飲んだことあるの?
クラウド:あ、ああ、もちろん
名前にソルトってついてるだろ?
ティファ:ふーん、そんなカクテルあるんだ
あとでレシピを教えて
作ってみたい
クラウド:え……
いや、その、あれだ……
レシピはソルジャー秘伝なんだ
ティファ:そっか……
じゃあ、予想して作っちゃおう
味見してね、クラウド
クラウド
ティファは露店商と楽しそうに話しこんでいた。
昔から、ティファはどんな人とも楽しそうだったな。
ティファ:今日、お酒が安いんだって
多めに買いたいから
クラウド、持ってもらえる?
クラウド:問題ない
酒くらいならいくらでも持てる
元ソルジャーだからな
ティファ:ありがとう、助かる!私ひとりじゃ、1箱が限界だったよ
じゃあ、いつものお酒を7箱分お願いします
クラウド:え!?
露店商:毎度あり!ちょっと待ってな
クラウド
7箱運んで腕はパンパンだったけど
ティファに頼られるのは悪い気がしなかった。
だけど……次の依頼にはおどろかされたな。
―セブンスヘブン―
クラウド
セブンスヘブンはスラムにしては小ぎれいな、いい店だった。
ティファは鼻歌交じりで酒を片づけている。 俺は聞いたこともない歌だった――
ティファ:今日はクラウドのおかげで助かっちゃった!
昔は、小麦の袋一つ運ぶのも苦労してたのに
クラウド:フッ、ガキのころの話だ
他に手伝うことはないか?
ティファ:え……あるにはるけど……
そうだ、あのさ……
ソルジャーってやっぱり武器に詳しかったりする?
自分で作ったりもするのかな?
クラウド:簡単だ
敵地で孤立した時は
ありもので武器を作って生きのびる
兵士の基本だな
一般兵の訓練にもある
ティファ:それなら……
爆弾の扱いはどうかな?
これも兵士の基本?
クラウド:爆弾……?
もちろん基本だが
なんでそんなこと聞くんだ?
ティファ:あ……別に!
クラウドがすごいから気になっちゃって
ほんと、クラウドってなんでもできるんだね
クラウド:……なんでも?
あ!そうだよな!俺は他の奴らが持ってない知識や技術を
たくさん持ってるんだよな!
よし、決めたぞ!俺は『なんでも屋』をはじめる!
ティファ:ん?どうしたの?
クラウド:ティファ、俺……なんでも屋をはじめるつもりなんだ
ティファ:なんでも屋って、何するの?
クラウド:頼まれたことは
報酬しだいでなんでもするのさ
ティファ:すっごく危険だったり
難しかったりしても?
クラウド:もちろんだ
俺にはソルジャーの
知識や技術があるからな
本当に欲しいのは
ティファ:クラウド、お疲れみたいね?なんで、そんなに忙しかったの?
ティファ:そう……
開店まで、ゆっくりしてて
何かほしいもの、ある?
う~ん……
何をどうするにしても
とりあえず金だよな……
ティファ:え、お金……
クラウド:いや、金がほしいから仕事を探したい
依頼人を紹介してもらえないか?
ティファ:……うん
じゃあ、そのまえに確認させて
神羅のこと、どう思ってる?
あんなに憧れたソルジャーや神羅に未練はないの?
クラウド:全然ない、むしろせいせいした
神羅には愛想を尽かしたからな
ティファ:じゃあ、もしも神羅にトラブルが起きたらクラウドはどう思う?
クラウド:あれだけ裏で悪事を重ねているんだ
自業自得だろう
ティファ:よかった……
私達と同じだね
クラウド:私……「達」?
ティファ:うん、なんでも屋さんの初仕事
私と仲間達から依頼させて
クラウド:……
ティファ:クラウド?聞いてる?
クラウド:あ、ああ、もちろん
で、何をすればいいんだ?
ティファ:私、反神羅組織のアバランチなの
明日、大事な作戦があって
それを手伝ってほしいんだ
どうかな……?元ソルジャーのクラウドが手伝ってくれたら
仲間達も心強いと思うんだ
クラウド:反神羅組織が
元ソルジャーの力を借りるのか?
ティファ:もう神羅じゃないんでしょ?
ね、お願い、クラウド!
クラウド:報酬は?
ティファ:1000……ううん
1500ギルは払えると思う
クラウド:……
ティファ:うそ……まだ足りない?
どうしよう……もう予算ないな……
セブンスヘブンで飲み放題!
私が作ったおいしいご飯つき!
ティファ:まだダメ?だったら――
クラウド:……
『ティファを守ってやりな』
ティファ:え?
クラウド:ティファの頼みだ
幼馴染価格で受けよう
ティファ:ありがとう!本当にいいの?
クラウド:ああ、お互い様だからな
クラウド
ティファの力になる……
今はこれだけが俺にとって
クラウドという証だった。
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