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預言者:…………。
……なーんじゃ。
誰かと思えば おぬしか。
おどろかんでもええ。
ここは 天国でも地獄でもない場所。
安心するが よいぞ。
……ほれ。ボケーっとしておらんで
おぬしも 釣り糸を垂らすがええ。
そこに 釣り竿が 置いてあるじゃろ。

預言者:……なんじゃ。じろじろ見おって。
わしのカオに 何かついとるか?

預言者:ふむ わかったぞ。
わしの この姿が気に入らないようじゃな。
では これなら どうじゃ。

預言者:む この姿もダメか。
ならば これで どうじゃ!

預言者:ふむ。わしの姿が定まらんところを見ると
おぬし わしのことを知らんようじゃな。
……おぬしの世界では
わしは 預言者と呼ばれておる。

預言者:わしに抱く 姿かたちのイメージが
人によって ちがうのでな。
その者に応じて わしの姿は変わるのじゃ。
……ところで
どうじゃ 何か釣れたか?

預言者:ウソをつけ。どう見ても 釣れとらんじゃないか。
……いまはまだ その時ではない
ということ じゃろうて。
釣れる時には 釣れる。
来たるべき時が訪れるまで 耐えしのぶこと。
それが 肝要じゃ。
……そういえば おぬしの仲間にも
会ったことがある気がするの。
名前は たしか カミュと言ったか……。
まあ よい。
わしは 部屋に戻るとしよう。
ホッホッホッ。
 


 

預言者の家


預言者:ほれ 苦しゅうない。
そこに座れ。

預言者:……さて ここに来たということは
何か 道に迷っておるな。
ちょいと 失礼するぞ。

預言者:ふむ…… おぬし
勇者のチカラを なくしたと 思っておるな?
……残念だが わしにできることは何もない。
ただ ひとつ言えることはある。
勇者のチカラを 魔王に
握りつぶされたと 思っとるようじゃが……。
チカラなんてもんは 見えやしないし
触れもできん。簡単に握りつぶせるような
やわなもんじゃあない。
……特に 勇者のチカラ なんてもんはな。

預言者:なんじゃ まあわからんのか。
ま いまは それでよい。
釣れるべき時に 釣れるように
時が来れば おのずと つかめるものじゃ。
……そういえば おぬし いま おぼれかけとるんじゃっけ。
ま 案ずるでない。大樹が言っておる。
おぬしはまだ 倒れる運命にない とな。
さーて いつまでも 寝てはおれんぞ。
おぬしは勇者。
やるべきことは 決まっておろう?

預言者:……世界を救え。

 


 

バンデルフォン地方


シルビア:ああっ 主人公ちゃん!
よかった 気がついたのね!

ロウ:主人公が 海に落ちた後 わしらは
なんとか おぬしを助けようとしたんじゃ。
しかし あの状況での救出は 絶望的でのう。
黒い海に 飲み込まれて もう二度と
戻らぬものかと 思ってしまった……。
そんな時じゃった……
突然 辺りが光に包まれて
おぬしが 海の底から上がってきたのじゃ。
わしは 腰を抜かしそうになったがのう。
なんとか おぬしを助け 魔物の猛攻を斬り抜け
ここまで 逃げおおせたってワケじゃ。

シルビア:主人公ちゃん どうかしたの?

シルビア:えっ? さっきまで不思議な場所にいた?
次々と姿を変える 預言者と出会った……?
ンもう! 主人公ちゃんったら
気を失っている時に 夢でも見たのね!

グレイグ:主人公よ 疲れているのだろう。
船員の宿舎を 貸してもらえるそうだから
そこで 一晩休もう。

勇気を胸に いかずちを手に

ロウ:……どうしたんじゃ。
ぼうっと 海など ながめて。
ほれ いまは元気になることが先決じゃぞ。

主人公たちは
船員の宿舎を借りて 一晩泊まった。

 


 

バンデルフォン

 


嘆きの戦士:……お……しい。
ああ くちおしい……。
後悔という名の鎖が この身を縛りつける。
私は 何もできなかった無力な存在……。
もし あの日に戻れるのなら
地獄の業火に焼かれても いとわない。
ああ くちおしい くちおしい……。

エレノア:……誰か 私の願いを受け止めて。
あの人を暗い絶望の闇から 解き放って。
私の声よ。どうか誰かに届いて。お願い……。
 



ロウ:……ふむ。それでは ウワサどおり
全員が同じ夢を見たわけじゃな。
くちおしいと なげく 戦士の夢を……。

シルビア:なんだか 必死に助けを求めてたわね。
できれば手を貸してあげたいけど……。
手がかりナシじゃ お手あげだわ。

ロウ:……あの戦士の甲冑に描かれた紋章は
紛れもなく 我が国ユグノアのものじゃった。
そういえば……世界が 闇に おおわれてから
ユグノアが どうなったのかも気になる。
少し 様子を見にいってみようかのう。
 


 

ユグノア城跡


ロウ:この場所は もともと 崩壊しておったが……。
さらに ひどい有様になってしまったのう。

ロウ:たしか この辺りじゃったか……。
すまんが おぬしたち
これを どかしてくれんかのう。

シルビア:わかったわ。これを どかすのね?
ほらほら 主人公ちゃん。
そっち持ってちょうだい!

グレイグ:ロウさま。これは……。

ロウ:これは 地下通路への入り口。
ユグノアに 何か危機が訪れた時に
城の外へ逃げるための道じゃ。
……わしの読みが正しければ
この先に 夢で見た戦士の手がかりがある。
さあ 行くとしようかの。
 



嘆きの戦士:うう……。
くちおしい くちおしい……。

嘆きの戦士:おのれ また やってきたのか。
邪悪なる 魔の者たちよ……。
貴様ら 魔族のせいで
私は すべてを失ったのだ……!
ゆるさん……ゆるさんぞ!

ロウ:この戦士は やはり……!
主人公! こやつと話がしたい。
いったん こやつを鎮めるのじゃ!

嘆きの戦士:ううう…ぐう……っ。
くちおしい くちおしいぞ……!
よくも……エレノアと 主人公を……!
うるさぬ……決して ゆるさぬぞ……!!

シルビア:なんで 主人公ちゃんの名を?
もしかして 戦士ちゃん……。
主人公ちゃんを知ってるの!?

ロウ:……やはり そうか。
おぬしは……アーウィンじゃな。
アーウィンは このユグノア王国の
王であったお方じゃ。それと同時に
勇敢なるユグノアの戦士でも あった。
……そして 主人公。
アーウィンは おぬしの父親じゃ。
まさか こんな形で再会するとは……。
アーウィンよ。なぜ おぬしは
このような姿に なってしまったのじゃ?
わしに よくカオを見せておくれ…。

ロウ:なっ……!
こ これは いったい……!?

エレノア:ああ……。ついに来てくれた。
彼を救ってくれる人が現れるのを
ずっと お待ちしていました。

グレイグ:この声には 聞き覚えがある。
夢で 我々に助けを求めていた声だ。

エレノア:あなた方の おっしゃるとおり
彼は このユグノア王国を治めていた
アーウィン王です。
16年前 ユグノアを襲った悲劇の時……。
彼は 闇にひるむことなく戦い抜き
正義の光を胸に 立派に王国を守りました。
……しかし 今や その光は失せてしまった。
今の彼は 生きることも 死ぬこともできない
悪夢をさまよう 悲しい屍……。
どうか お願いします。
暗く悲しい悪夢から 彼を解放してあげて。
彼の絶望に 光を照らしてあげてください……。

シルビア:今の声は いったい……?

ロウ:この戦士の正体が
アーウィンだと わかった今
このまま放っておくわけには いかんの。
しかし いったい どうすれば……。

アーウィン:ああ くちおしい……!
よくも……エレノアと 主人公を……!
ゆるさん……決して ゆるさんぞ……!

ぬけがらとなった アーウィンの中から
なげきの声が聞こえてくる……。
さらに近づいて 声を聞いてみますか?


主人公は
ぬけがらとなった アーウィンのカオを
のぞきこんだ……。


バクーモス:ゲファファファ……。
新鮮な食材が やってきおったわい。
何年ぶりかのう。ゲファファファ……。
さあ……我が絶望の中に 堕ちてくるがよい!
極上の悪夢を 貴様にも見せてやろう!

アーウィン:……お……しい。
ああ くちおしい……。
もし あの日に戻れるのなら
地獄の業火に焼かれても いとわない。
ああ くちおしい くちおしい……。
 


 

ユグノア城(過去)


男性:アーウィンさま! このたびは
記念すべき 祝杯の日にお呼びいただき
ありがとうございます。

女性:主人公さまの ご誕生は
私たちにとっても よろこばしいことですわ。
本当に おめでとうございます!

アーウィン:皆さま ありがとうございます。
本日は 我が国ユグノアにとって特別な日。
祝杯の宴を ゆっくりとお楽しみください。

アーウィン:サマディー王 クレイモラン王。
おふたりとも ようこそ ユグノアへ。

サマディー王:やあやあ! ひさしぶりですな アーウィン殿!
このような盛大な宴での歓迎
感謝いたしますぞ! だっはっはっは!!

サマディー王:……ほんじつの 四大国会議は
ロトゼタシアの今後を決める 重大な会議。
我が国 サマディーだけ
のけものには させませんからな……。
ひとつ よろしくお願いしますよ!

クレイモラン王:4つの大国の王が 一堂に介するなど
わしが知る限り 前代未聞の事態じゃて。
それほど ご子息……伝説の勇者は
我々にとって 重要な存在だと いうこと。
本日の会議 楽しみにしておりますぞ。

アーウィン:我が息子のため 遠方から来訪していただき
心より感謝いたします。
四大国会議が 始まる際に
また お声をかけさせていただきます。
私は準備がありますので これで……。

アーウィン:デルカダール王は どこに?

兵士:はっ! デルカダール王は
ロウさまと おふたりで
城の中庭の方に行かれました!
 



アーウィン:デルカダール王 ロウさま。
そろそろ 四大国会議を始めましょう。
おふたりとも 準備をお願いいたします。

デルカダール王:ロウから話を聞いたぞ。
そなたの息子 主人公が
あの勇者の生まれ変わりとはな……。

アーウィン:はい……。
息子は 四大国会議の場で
皆さまに お披露目する つもりです。
こんな大勢の方に 祝福していただいて
改めて 実感しました。
やはり勇者は 我々にとって 希望の光……

デルカダール王:……話は 後ほど聞こう。
先に 会議室へ行っているぞ。

ロウ:勇者は ロトゼタシアの命運を左右する
重大な存在だからな。
皆 思うところが あるんだろう……。
さあ アーウィンよ そろそろ時間だ。
主人公を 預かりに
エレノアの部屋に 行ってきておくれ。
 



主人公:だあだあ……あぶー……。

マルティナ:赤ちゃんって こんなに小さいのね。
ちょっと触ったら 壊れちゃいそう…。
エレノアさま。主人公に触っていい?

エレノア:ふふ。主人公ったら
マルティナのこと 好きみたいね。
遊んでほしいって言ってるわ。
……主人公は
勇者として生を受けた 希望の子。
この子が 大きくなったら
父親に似て いかなる困難も乗り越える
チカラ強く たくましい子に なってほしいわ。

マルティナ:エレノアさまに似たら
みんなに優しい子になるわね きっと!

マルティナ:きゃあ……っ!

マルティナ:アーウィンさま!

アーウィン:さあ 主人公。
もうすぐ 四大国会議が始まるよ。
主人公を こちらへ。
主人公! これから行く所は
こわーい おじちゃんが いっぱいだけど
何があっても パパが守ってあげるからな!

エレノア:まったく あなたったら。
そう 強く抱きしめたら 苦しいじゃない。
ねえ? 主人公?
今日みたいな 特別な日に
急に こんな天気に なるなんて。
私 さっきから 何か胸騒ぎがして……。

アーウィン:エレノア 安心してくれ。
何があっても 君と 主人公は
私が守るから心配いらないよ。

マルティナ:アーウィンさま! 私は!?

アーウィン:あっはっは。マルティナのお父さんは
強くて いさましい デルカダール王だ。
私より よっぽど頼りになるよ!
……さて 会議が始まる時間だ。
私は そろそろ行ってくるからね。
エレノア 後のことは頼んだよ。

エレノア:いってらっしゃい。
あなた 主人公……。
 



デルカダール王:あの子が そうなのか?

ロウ:あのアザがある。間違いあるまい……。
暗黒の深淵に たゆたう 邪悪の神。
凍てつく黒き闇を まといて
母なる大樹に 迫りし時……。
光の紋章を携えし勇者 聖なるつるぎで
邪悪の神を討ち……閃光となりて
ロトゼタシアの地を 光で照らさん……。

デルカダール王:ローシュ戦記 終わりの詩か……。

ロウ:戦記いわく……邪悪の神は
いにしえの勇者によって滅ぼされ
世界は平和になったはず。しかし……
以前に比べ ロトゼタシア各地に
魔物が増えたこと……皆も気づいておろう?

アーウィン:アーサー王率いる バンデルフォン王国は
邪悪な魔物に襲われ 滅びたと聞いています。

ロウ:このような事態の中 勇者と同じアザを持つ
赤子が生まれた。これが何を意味するのか……。
聡明なる王たちの見解を 問いたいと思う。

サマディー王:邪悪な神だとか 魔物が増えたとか
いろいろ おっしゃりますがねえ。
どんなに不穏な影が 世界をおおうとも……
こうして 伝説の勇者が誕生したのですぞ!
勇者がいる限り この世界の平和は
約束されているでは ありませんか?

クレイモラン王:かっかっか……! なるほどのう。
勇者がいる限り 平和は約束される……か。
……ロウ殿も 人が悪い。
先ほど語った ローシュ戦記……
肝心な部分が抜けたおったようじゃが?

デルカダール王:始まりの詩……ローシュ戦記の第一章。
勇者の誕生が記された序言だ。
……生命を紡ぐ 命の大樹
その息吹より生まれし 光の勇者。
勇者の光 尽きることなき まばゆさで
果ては 漆黒の影を生みださん。
影の名は 混沌を統べる 邪悪の神なり……。

アーウィン:それでは 伝説の勇者自身が
邪神を誕生させたと……?

クレイモラン王:夜の暗闇がなければ 星が かがやけぬように
光がなければ 闇も生まれない。
太古の昔より定められた摂理じゃて。
光と闇は 常に表裏一体……。
勇者の誕生は 命の大樹の福音か
邪神の目覚めの暗示か 果たして……。

アーウィン:言葉が過ぎますよ クレイモラン王!
勇者が悪と同等の存在などと……!

クレイモラン王:勇者が 善い存在だと なぜ言いきれる?
……不吉な影は 魔物だけではないぞ。
最近になって 夜空をかがやく 勇者の星が
にぶい光を 放つようになったじゃろう。
ご子息の誕生と 同時に起きた異変じゃ。

アーウィン:なんということを……!

主人公:ふえっ ふええええーーーっ!

クレイモラン王:わしには聴こえるのじゃよ……。
まがまがしい かがやきの中 勇者の星が歌う
ロトゼタシアを混沌へ導く 破滅の唄が!

デルカダール王:……一理あるな。

アーウィン:デルカダール王……!

デルカダール王:緩やかに だが確実に
世界には まがまがしい足音が近づいている。
その兆しが各地で起こっているのは真実だ。
我々は 上に立つ者として
ロトゼタシアに住む すべての民のために
その元凶を断たねば なるまい。
……たとえ それが伝説の勇者であってもな。

アーウィン:……それは この子を亡き者にしろ。
そう言っておられるのでしょうか?

一同:………………。

アーウィン:息子 主人公が生を授かる直前……。
命の大樹から 聖なる光が発せられ
夜明け前の空を まばゆく照らしました。
その直後 その光に共鳴するように
光り輝くアザを その手に携えた
主人公が生まれたのです。
この子は まごうことなき 伝説の勇者。
大いなる闇を 晴らすチカラとして
命の大樹が与えてくださった 希望の光です。
光と闇は 表裏一体などではない!
命の大樹の申し子である 勇者の聖なる光は
必ずや闇を消し去る……私は そう信じます!

デルカダール王:よくぞ言った アーウィンよ!
もしも 我らの意見に賛同していたら
即刻 勇者を引きとるところだったぞ!
勇者 主人公は 命の大樹の意志。
我々に与えられた 光のチカラだ。
全力で守らなければ なるまい。

クレイモラン王:ちと いじわるが過ぎたかのう?
おぬしの まことの心を知りたかったんじゃ。
許せ アーウィン殿! かっかっかっか……!

デルカダール王:我が国は 勇者への支援を約束する。
主人公が 16歳になった暁には
デルカダールで修練を積ませよう。
主人公には いち早く
我々を導くチカラを つけてもらわんとな!

アーウィン:デルカダール王。皆さん……
ありがとうございます!

サマディー王:これにて 一件落着ですな。
まあ 私は こうなると思ってましたがね!
だっはっはっはっは……!

デルカダール王:では 結論は出たようだな。
我らの心は ひとつとなった……!



一同:すべては 命の大樹の導きのものとに!

デルカダール王:さあ これで四大国会議は仕舞いだ。
勇者を待ちわびている者たちに
主人公のカオを見せにいかれよ。

アーウィン:デルカダール王……!
ありがとうございます……!
……それでは 皆さん。
長々と ありがとうございました。
四大国会議は これにて……

兵士:ア アーウィンさま……!

アーウィン:どうした!?

兵士:み 皆さま! お逃げください!
魔物が 我が城に……
ぐ ぐふっ……!!

アーウィン:皆さん 大変です!
多くの魔物が こちらに向かっています。
どうか ここから お逃げください!
 



魔物:グハハハハ……!
勇者は どこだ!? 勇者を出せ!!

デルカダール王:くっ。数が多いな……。
しかし 悪しき 異形の者どもに
勇者を渡すわけには ゆかぬ。
ここは 私とロウが引きうけた。
そなたは 主人公を連れて
エレノアと共に 城の外に逃げろ!

アーウィン:デルカダール王!
しかし この数では……!

デルカダール王:案ずるな。この程度の魔物に
不覚をとるほど 老いぼれては おらぬわ。
私も 後から必ず追う……さあ行け!

アーウィン:デルカダール王 ロウさま……。
ここは 頼みます!
 



マルティナ:アーウィンさま!
私 こわかった……!

エレノア:ああ! よくぞ ご無事でいてくれました。
窓から魔物の大群が向かってくるのが見えて
あなたと 主人公が心配で……!

アーウィン:今は 話している時間はない。
主人公を連れ ここから逃げよう。
さあ 私に ついてくるんだ!

アーウィン:君たちのことは 私が 絶対に守る。
たとえ 何があっても……!
さあ 早く ここから脱出しよう!
 



アーウィン:よし。ここから 外に……!

魔物:感じる……感じるぞ。
勇者の気配がする……。
どんなに 姿を隠しても
その忌々しい光の波動は隠せまい。
さあ おとなしく 勇者を差しだすのだ!

アーウィン:私の家族には
指一本 触れさせん!

魔物:ぐおぉぉぉぉーーーーーーっ!!

エレノア:魔物が 次から 次へと……。
あなた……私たち いったい どうしたら……!

アーウィン:この城は もうヤツらに囲まれている。
正面からは とても突破できないだろう。
倉庫にある 地下通路へ向かおう。
あそこを使えば 城の外に出られるはずだ。
さあ こっちだ!

アーウィン:たしか この棚の後ろに……。

アーウィン:さあ エレノア マルティナ。
魔物に気づかれぬうちに 早く中へ!
 



アーウィン:よし……ここから外に出られるはずだ。

アーウィン:ここは 私が食い止める!
君たちは 早く ここから逃げるんだ!

エレノア:あなた でも……!

アーウィン:さあ 早く行け!!

アーウィン:忌まわしい 魔物どもめ!
ここは 絶対に通さんぞ……!
 



アーウィン:ハア ハア……。
これで 全部 倒したようだな。
早く エレノアたちを追わなければ……。

デルカダール王:……マルティナ!
ここにも いないのか!?
マルティナ……!!

アーウィン:この声は……デルカダール王!
よかった。ご無事だったのか!

アーウィン:こ…これは……!?

アーウィン:デルカダール王……!
おのれ お前は いったい何者だ!

アーウィン:デルカダール王……!!

デルカダール王:……おお。お前は
アーウィンではないか……。
皆は……皆は 無事なのか……?

アーウィン:ああ……デルカダール王!
よくぞ ご無事で……!
幸いにも この戦禍の中
我が息子と妻 そして マルティナは
無事に 城の外に逃げのびました。

デルカダール王:そうか……それは よかった……。
では 逃げのびた者のもとに
我が手の者を さっそく 向かわせよう……!

アーウィン:デルカダール王 何を……!?
ぐあああ…………っ!!

デルカダール王:勇者の血筋など ここで途絶えるがいい……。

グレイグ:デルカダール王!
いたら お返事を……!
デルカダール王!!
おお デルカダール王!

グレイグ:王! よくぞ ご無事で……!
到着が遅れ 申し訳ありませんでした!
アーウィンさま……!
デルカダール王 これは いったい……!?

デルカダール王:……アーウィンが 突然
私に 襲いかかってきたのだ。
だから 仕方なく この手で……。
そして 我が娘 マルティナも
ユグノア王妃 エレノアに 人質として
さらわれてしまった……!

グレイグ:なんと……!
ユグノア王家ともあろう方々が
なぜ そのようなことを……!?

デルカダール王:おそらく 勇者の誕生が……。
この城の者たちを 変えてしまったのだ。
城を襲った魔物たちの狙いは
勇者を手に入れること。
そのために あまたの命が消えていった……。
勇者の光に 闇が引きよせられたのだ。
伝説の勇者 主人公が いなければ
このような悲劇は起こらなかった!
……主人公は
世界を救う 希望の子などではない。
この世に 邪悪なる闇をもたらす存在……!
災いを呼ぶ 悪魔の子だ……!!
ロトゼタシアの平和を 脅かす勇者を
野放しにする わけにはいかん!
草の根を分けても 見つけだすのだ!!

グレイグ:はっ!

アーウィン:う……ぐ…………
ち 違う……。
勇者は 主人公は
悪魔の子などでは ない……。
デルカダール王を 止めなくては……。
このままでは 世界は 闇に……!
エレノア 主人公……!
ふがいない私を 許し……
 



バクーモス:ゲファファファファ……。
うまい うまい……。
我が名は バクーモス。
絶望を 食らうもの……。
国は滅び 愛する家族とは 死に別れ
この男の絶望は まさに高級フルコース。
こんな絶望には そう ありつけはしない。
だから この男に16年前の悪夢を何度も見せ
こうして食らい続けているのだ。
この男の絶望は 一度 食べたら忘れられぬ。
16年間 食べ続けても飽きぬほどだ。
だが しかし……。
そろそろ違う味も 試したかったところだ。
次は お前の新鮮な絶望を いただくとしよう!

バクーモス:さあ 感じるがいい。
お前の心の悲痛な叫びを……。
ここは お前の心の中にある
もっとも 忌まわしい記憶……。
お前は 勇者のチカラを奪われ
魔王を誕生させてしまった。
そして この世界は壊れたのだ。
お前は誰も守れなかった……。
お前は世界を救えなかった……。
それは 無力な 勇者の罪。
あらがえぬ絶望の暗闇に落ちてしまえ。
それが私の糧となる……。

エレノア:……主人公。
聴こえますか 主人公。
主人公……。
あなたの中にある 聖なる光は
決して消えるおとは ありません。
その光は あなたの中で
ひそやかに目覚めの時を待っています。
この世界を ふたたび光で照らすために!
闇を滅ぼすことが できるのは
勇者である あなただけ!
さあ 目覚めなさい……!!

バクーモス:な なんだ この光は……!
ぐわああああーーーー!!

シルビア:な なになに?
いったい 何が起こったの!?

ロウ:おお 主人公!
よかった。無事じゃったか……

バクーモス:ぐおおお……っ!
忌々しい光で 前が見えん……!

グレイグ:貴様が すべての元凶か!
さあ 主人公! こいつを倒して
アーウィンさまの 呪縛を解き放つぞ!

バクーモス:くそう……あと一歩で
極上の 新鮮な絶望のディナーを
食らえるところだったのに……!
まあいい……こうなったら
お前ら全員 皆殺しにして
まとめて オードブルにしてくれるわ!
 



バクーモス:ゲギャアアァァァァ……!!

アーウィン:ここは いったい……?
その眼差し……。
その目に宿る 優しい光は……。
まさか そんな……!
主人公! 主人公なのか!?

アーウィン:そうか……私を 絶望の淵から
解き放ってくれたのは お前だったのだな。
立派になったな。主人公……!

エレノア:……あなた。
ようやく もとの あなたに戻ってくれたのね。

アーウィン:……ああ 信じられない。
君なのか? エレノア……。

エレノア:あなたを 苦しめていた呪縛は
主人公が 解き放ってくれた。
これで 私たち 安心して旅立てるわね……。

アーウィン:そうだな エレノア……。

エレノア:……主人公。
私の かわいい 主人公。
あなたには これからも
多くの困難が 立ちはだかるでしょう。
それでも そのまま まっすぐに進みなさい。
あなたの中にある 希望の光が
きっと あなたを導いてくれるはず。
父と母も いつも あなたを見守っていますよ。
さようなら 主人公……。
ずっと あなたのことが 大好きよ……。

ロウ:……これで本当に お別れじゃな。
アーウィン エレノア……。

シルビア:主人公ちゃん! それ……!

ロウ:おお 勇者の紋章が 光り輝いておる……!
アーウィンとエレノアが 勇者のチカラを
よみがえらせてくれたんじゃな……。

グレイグ:さあ 行こう。真の勇者 主人公よ!
今度こそ 勝利をこの手に つかむのだ!

勇者のチカラが 復活したことにより
主人公のスキルパネルが
新たに 解放された!


ロウ:さあ いつまでも なげいていてはいかんな。
気を引きしめて 次の目的地へ向かうぞ。
ここより北にある グロッタの町ならば
人も多いし 新たな情報が得られるかもしれん。
さっそく 行くとしようかの。

 

 

 

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