食堂のおばちゃん 山口恵以子
高峰秀子かく語りき
日本の心の色100 弓岡勝美
マイストーリー 私の物語 林真理子
職業としての小説家 村上春樹
洋食セーヌ軒 神吉拓郎
ベストエッセイ 2015
その姿の消し方 堀江俊幸
家族シアター 辻村深月
図書室で暮らしたい 辻村深月
ベスト・エッセイ
わからないから面白い 木内昇 抜粋
二十代の頃、伝統芸能や工芸の第一人者と呼ばれる方々にインタビューさせていただく機会に恵まれた。その際、あなたにとって仕事とは、というお決まりの質問に対し、「わからない」とお答えになる方の多さに驚いたものだ。初め私はそれを、「一言では言えない」というおしかりだと受け止め、身をすくめた。なにしろ、それぞれの道を見事に極めた方々なのだ。が、戸惑う私に、ある方がそう補足してくださったのである。
「やればやるほど、突き詰めれば突き詰めるほど、その先にあるものが見えてくる。だからわからなくなるんです。つまり、私どもの仕事は終わりがないんですね」
困った風でも苛立ったふうでもなく、どこか楽しげな表情をされていたのが印象的だった。