個人的に航空史に残ったり、航空業界を変えた事故を少し上げてみます。
飛行船の終焉
ヒンデンブルク号爆発事故
(ドイツの飛行船ヒンデンブルク号がアメリカニュージャージー州の飛行場に着陸しようとした際に爆発・炎上した。)
この事故が契機となり、飛行船は今ではほぼありません。(この事故の前から飛行船は悪天候に非常に弱いなどの指摘はありました。)この事故がなければ、今でも観光船みたいな感じでいくつかの飛行船は残っていたかもしれません。
「ブラックボックス」の誕生と新しく発見された現象「金属疲労」
コメット号連続墜落事故
(世界初のジェット機、イギリス・デハビランド社製コメット号が連続して墜落した事故。事故原因は当時はわからなかった「金属疲労」という現象。)
イギリスの威信がかかっていたため、当時の首相チャーチルは「国庫が空になってもいいから(事故調査を)やれ」と命じたらしいです。
なお、金属疲労を発見する装置を作ったのはかの迷名兵器「バンジャンドラム」の開発者だとか…。
コックピットボイスレコーダーとフライトレコーダーの総称「ブラックボックス」はこの事故の遺族が開発したそうです。
CRM誕生
テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故(テネリフェの悲劇)
(カナリア諸島にあるテネリフェ空港でジャンボジェット機2機が滑走路で衝突。管制塔の指示を機長が無視して強硬離陸しようとしたのが主原因。(副原因はほかにもあり、どれか一つでも起きていなければ事故は起きなかったかも。))
イースタン航空401便墜落事故
(アメリカ・マイアミ行きの旅客機がマイアミ近郊の湿地帯に墜落。直前に着陸装置に異常が発生し、操縦士3人がその原因を調べて操縦をしていなかったため墜落。)
ユナイテッド航空173便燃料切れ事故
(アメリカ・ポートランド行きの旅客機がポートランド空港近郊に墜落。墜落原因はイースタン航空401便墜落事故とほぼ一緒。)
CRM(クルーリソースマネジメント)は組織間の上下関係にかかる影響をなくし、風通しを良くする手法です。
この当時はもちろん、今でも機長に関しては特別な敬意が払われております。が、それ故に機長が間違ったときに周りの乗務員がそれを指摘できなかったり、止められない場合がありました。(日航350便逆噴射墜落事故の副操縦士や航空機関士(機長が致命的な操作をしたときに止めようとした。)ばかりではない。)それでも止める必要がある場合に止める方法が開発されました。これがのちの事故に奇跡を起こす要因になります。
「90秒ルール」、「ハロン型消火器」、「非常扉の扱い」、「火災時のおける乗務員の対応」、「機内全面禁煙」他
エアカナダ797便火災事故
(アメリカ・ダラス空港発カナダ・モントリオール行きの旅客機が上空を飛行中に出火。奇跡的にアメリカ・シンシナティ空港に緊急着陸に成功するが、着陸数分後に旅客機は爆発した。火災原因は現在も不明)
上記の通り、当時も機長に対して特別な敬意が払われておりました…が、この乗務員チームの場合はCRMがきっちり機能し、功を奏しました。墜落確定クラスの航空機が奇跡的に滑走路に着陸し、乗客乗員が緊急脱出。操縦士2名はこの事故でポラリス賞などを受賞。(旅客機パイロットで初めてポラリス賞を受賞。)上空での火災事故(インシデントレベルのものは別)で乗務員・乗客のだいたい半分が生き残った現在でも唯一の事故。(基本的には火災発生→墜落)この時に残された航空機の残骸や生存者の証言等からほぼ今の対策ができました。
油圧全喪失の対策
日本航空123便墜落事故
(大阪空港行きの旅客機が群馬県に墜落。原因は数年前の航空事故の修理ミス。)
ユナイテッド航空232便不時着事故
(アメリカ、シカゴ行きの旅客機がエンジン爆発、スーシティ空港に緊急着陸しようとして結果的に失敗。原因はエンジン不具合。)
DHL貨物便撃墜事件
(バーレーン行きの貨物機がテロリストに地対空ミサイルで撃墜された。)
油圧全喪失は端的に言うと、飛行機が操縦不能に陥ることです。この油圧全喪失が起きると、墜落が確定します。
123便→232便→DHL貨物便とみていくと、油圧全喪失の対策が進化していっていることがわかります。いずれも次の事故のパイロットが前の事故のパイロットの教訓を叩き込んだ結果です。これらの事故関係者全員がポラリス賞をもらっています。(123便のシミュレーションをテストでしたパイロットはみんな30分持たなかったそうな。)
テロ対策
9.11 同時多発テロ
(アメリカで4機の旅客機がほぼ同時にハイジャックされ、2機は高層ビル、1機は政府機関に墜落させられた。最後の1機は乗客がテロリストと戦い、テロを阻止しようとしたが、ペンシルバニア州に墜落)
言うまでもない…。
が、後でこの対策が逆になる事件も発生しています。(ジャーマンウイングス9525便墜落事故(というか、事件だろ、これ)など)
2023.1.23 初出