教養としての世界史の読み方
木村 凌二
・序章 「歴史に学ぶ」とは何か?
歴史は人類の経験の集大成に他ならない
ビスマルク(鉄血宰相)「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
経験は個人の体験でしかないが、歴史は過去5千年にわたる文明史の、あらゆる人々の経験の集大成であるため
・第1章 文明はなぜ大河の畔から発祥したのか?
コロンブスがアメリカに到達したときアメリカはまだ原始的な生活をしていた。
→なぜ文明の発達には差があるのか?
→「馬」の存在
様々な交流・交易の中で自然風土の拘束が排除され、普遍性を持った文明に昇華する。
文明発祥に必要な条件とは?
→「文字の発症と使用」
古代エジプト:ヒエログリフ インダス文明:インダス文字
黄河文明:甲骨文字 メソポタミア文明:楔形文字
→「乾燥化」
前5000年後ごろから、アフリカ北部、中東、ゴビ砂漠、中国で乾燥化が始まった。
それ以前のサハラは「グリーンサハラ」と呼ばれ、洞窟壁画などに記録が残っている。
→乾燥化と、それに伴う人々の水辺への集中
少ない水資源をどのように活用するかに知恵を絞る。
Ex)水争いを防ぐための水活用システムと記録するための文字の発明。
恵まれた土地では人口の集中が起きず、小数人の集落で安定した社会が長く営まれる。
・第2章 ローマの比較で見えてくる世界
歴史の起承転結が完璧なプロセスで展開されている
「ローマの歴史の中には、すべてが詰まっている」
Ex)五賢帝のような立派な皇帝がいれば、ネロのような暴君皇帝もいる。
政治システムも様々で最初は王政、次に共和政に変わり、その後独裁制に変わる。
・ローマは、なぜ帝国になりえたのか?
→ローマという国の国政システムが、非常にバランスが良かった。
基本的にローマは独裁を嫌う。しかし合理性を好むローマ人は、権力がある程度集約されていたほうが、物事が合理的に進むことを知っていた。
「コンスル」に代表される独裁政治的な部分を国政システムに組み込んだが、独裁にならないように必ず2人で務めるように制約をつけていた。
また、貴族院に相当する「元老院」と、民主制に相当する「民会」が同時に国政を担っていた。
・名誉心が国家を支えた
なぜローマだけが大帝国に鳴れたのか?
なぜ日本だけが植民地支配を免れ独立を保つことが出来たのか?
→ローマでは「父の遺風」、日本では「武士道」と呼ばれる精神の支えがあったから。
戦争に敗れた軍はたとえ生きて帰ってもよくて追放、悪くて処刑だが、ローマにおいては戻ることが出来た。(負けた時点で十分な恥辱を受けていると考えたため)
→次は負けないように努力をするようになる。
→日本にも名誉返上という言葉があるように、再チャレンジを認める風紀がある。
・ローマ帝国の「寛容性」
ローマは戦争に勝ったとしても敵国を植民地とせず、対等な国としてローマ帝国内に取り込んだ。
→戦争をしなくて済むし、長く生活するうえで味方になる。
寛容性を失うことによりローマは滅びた。
・第4章 なぜ人は大移動するのか?
日本は周囲を海に囲まれた島国であるので、国境を越えて異民族が大量に流入してくるといった経験をしていない。しかし、過去5千年の歴史の中ではごく当たり前のように、世界各地で繰り返されていることである。そして民族の移動は、異なる言語や宗教の工作が生じるので、単なる人の移動にとどまらず、それまで存在しなかった新しい世界の秩序の形成を促す。
・なぜ人々は動くのか?
→基本的に人は条件のいいところを求めるから。
・民族移動にはパターンがある。(民族移動の「出力」と「入力」)
出力の問題
→人口の増加と寒冷化や乾燥化といった気候変動が原因で起こる「食糧問題」。
信仰の弾圧や奴隷愛倍のような人為的な強制移動。
戦乱による難民。
入力の問題
→デメリット:大規模な民族移動は争いに発展する。
→宗教や思想の違いなど。
メリット:労働力不足の解消。
新たな文化の生成(デメリットにもなりうる)。
・今欧米国は異民族が多数派になる恐怖を感じている
一気に大勢の異民族が入ってきたことでそれまでの価値観が変わる。
Ex)ゲルマン民族の大移動
騎馬民族である「フン族」が気候問題で西に移動したことによりそれまで住んでいた「ゲルマン民族」が押し出されるような形でローマに流入。
ローマの市民生活や軍の中まで異質な価値観が浸透していき、不満を感じたローマ人がゲルマン人の排斥を訴えるようになり、国内問題に資金を費やす羽目になった。
→ドイツやアメリカが異民族を拒んでいる理由。
・第5章 宗教を抜きに歴史は語れない
・宗教は人々にモラルと結束力を与える。
→神の前で恥ずかしいことをしてはいけないというのがモラルの基本。
言葉は結束力を与えるが、言葉よりも宗教のほうが強いといわれる。
言葉が通じるかどうかで結束力が大きく違ってくるがそれよりも同じ宗教観があるかのほうが結束力を与えるのである。
・人間にとって神とは?
→一種の「理想」
人間は理想に近づこうという宿命のようなものを背負っている。
理想的な行動をしようとするものである。
宗教とは、人間が神という理想に近づくための方法を示すもの。
・イスラム教体キリスト教というウソの構図
いまも難民が多数ヨーロッパに押し寄せているが、彼らは皆イスラム教徒である。
宗教として敵対しているのであれば、敵のところに助けを求めるはずがない。