ライター海江田の 『 シラフでは書けません。 』 -10ページ目

よかったよかった

今日、東京ヴェルディはサブ組が桐蔭横浜大との練習試合を行った。
南秀仁が2ゴールの活躍で、結果は2‐1。
92年組の大木暁(駒澤大4年)が来てましたね。
「いやー、ちょっと感覚が合わないところがあって。もうちょいボールを受けたかった」と苦笑いでした。

昨日、J2第33節のアビスパ福岡戦で初勝利(1‐0)を挙げた冨樫剛一監督。
「勝ち点1の幕引きも頭に置きつつ、3を獲るための戦い方。僕らは何らかのブレーキをかけると勝ち点が獲れないんですよ。この先、少しでも後ろ向きになったり、足が前に出なくなると1も獲れなくなる」
表情を引き締め、そのあとはいつもの笑顔でござんす。
よかったよかった。

殊勲の決勝弾を頭で決めた中後雅喜。
フィニッシュの場面、ボックス内に入っていった動きをこう語った。
「サイドに展開し、最初は後ろでボールを受けようかと思ったけど、縦にいいボールが出て、クロスに対して走り込む人数が少ないという課題もあったから前へ。カズキさん(平本一樹)と目が合って、これは来るなと。グラウンダーのパスを左足でシュートかなとイメージしていたら、上でしたね」

竹本一彦テクニカルダイレクターもいて、今後の計画についてしばし雑談。
やることは盛りだくさんだよ。
ひとつずつ道筋をつけていってもらえれば、こちらは逐一進み具合を伝えていきたい。
この度の就任は、ある人が羽生社長と引き合わせることで実現した。
ふたりとも早稲田大の出身なんすよね。
学閥とかつまんなく見えるかもしれないけど、まあそのへんの親近感でうまくいくなら取り立てて忌避するものでもなく。


●掲載情報
『週刊サッカーダイジェスト』No.1304  9月23日発売号
東京ヴェルディ、監督解任リポート「手痛い失敗を教訓にして」。

事実と正面から向き合い、適時、過去を過去として清算していく。
クラブの営みってその繰り返しで、余計なものを介在させてごまかしちゃいけないんですよ。
東京ヴェルディの歩みは、それをないがしろにし続けた歴史といってもいい。

あと「J2クラブ番記者が選ぶ"サプライズ候補"の11人」というのも。
ヴェルディからは2選手を推しときました。
現状ではやや無理筋ではあるんだけど、いいでしょ。
先を見てのセレクトですから。





簡単にはいかん

おい、負けちゃうのかよ。
J2第32節、東京ヴェルディ vs カターレ富山@味の素スタジアム。
ヴェルディは前半の失点を挽回できず、0‐1で敗れた。
てっきり、ここは勝つところだと思った。
フツーそういう筋書きでしょうが。
簡単にはいかんよねえ。

率直に言って、あちこちに不足を感じる内容だった。
球際の争いの弱さ、攻守の切り替えがバラけていて、ベクトルが結集されていない。サポートが遅く(というか選手間の距離がありすぎて)、パスコースが1本か2本しかなかった。
これが現在の力ということなんだなぁ。
21位のカマタマーレ讃岐との勝ち点差は3に縮まった。

そのあとは、等々力陸上競技場にハシゴ。
J1第24節、川崎フロンターレ vs FC東京。
たまたま田中育郎さん(ヴェルディの元クラブスタッフ)と会い、
「入ってますねえ。見た感じ、ほぼフルハウス。今日はどれくらい?」
「イチキュウ(1万9000人)じゃないすか。ここ4試合チケットは売り切れ」
はい、1万8805人でした。

このハシゴは身体に悪いね。
サッカーのレベルからスタジアムの雰囲気まで、何もかも違うんだもん。
スコアレスドローだったけど、いいもん見せてもらったという満足感があった。
僕は、今年の川崎はタイトルを獲ると見ているが、結末やいかに。

本日、ヴェルディは竹本一彦さんのテクニカルダイレクター就任を発表した。
「遅きに失する」とは、監督交代よりこっちのことだよ。
近年で最強の補強と思われます。
全体のデザインを見直し、「常識」を取り戻さなければいけない。

23日のアビスパ福岡戦は、近所のスポーツ居酒屋「KITEN!」で見る。





盛り上がっていた

昨日のランドは、久しぶりにたくさんの報道陣(といっても7、8人だが)で賑わった。
僕はエルゴラッソの東京ヴェルディ担当、柴原さんとのんきにしゃべりながらグラウンドに視線を送っていた。

「元気だねえ。みんな声が出てるよ」
「そうですね。活気があります」
「土肥洋一の声、懐かしい。あの殺気が周りをぴりっとさせるのさ」
「変わってくれますかね? チームは」
「大丈夫、間に合うよ。落ちるようなレベルの選手たちじゃない」
「どんなスタメンになるか楽しみだなぁ」
「いまの声なんて、ほとんど絶叫じゃん。どんだけテンション上がってんのよ」
「海江田さん、あれはバンジージャンプのお客さんの悲鳴です」

そう、練習場はよみうりランドと隣接し、まれにこういうまぎらわしいことが起こるのである。

15日、ヴェルディは三浦泰年監督を解任し、ユースの冨樫剛一監督を引き上げることになった。
同時にコーチ陣も入れ替わり、土肥GKコーチ、村田達哉コーチが就任した。
詳しくは、来週売りの『週刊サッカーダイジェスト』から原稿の発注があったので、そちらで。

聞くところによると、村田コーチの指導スタイルは愛に満ちたスーパーS(サド)だそうである。
土肥コーチもまた、同色であるのは疑う余地がない。
これから選手は大変だぞ。
ただ見ているだけの僕は、にやにやしながらがんばれよーと応援する。

にしても、春頃から気になっていた腰痛がうそのように消えた。
不思議だなあ。

監督交代には全面的に賛成なんだけど、
別のことを少し考えた。
昔、ヴェルディにいた人が、諭すように聞かせてくれた言葉がある。

「人の捨て方って大事なんだよ」

人を切るということは、その人の持つデータが流出し、拡散されるということだ。
そこでどんな扱いを受けたか、クラブの内情、身近に接してきた人しか知りえない選手の特性まで、広く伝わる。
スピーカーを生産しているようなもので、周囲に与える影響は計り知れない。
その人は皮肉っぽい言い方をしてたから、情に薄い扱いを受けたんだろう。

近年、ヴェルディは多くの指導者、選手、チームスタッフ、クラブスタッフが入れ替わった。
本来、このなかでクラブスタッフの流動性は比べものにならないほど低いはずなのだ。
なのに、10年前からいる人なんて片手で足りるよ。
いちいち問い合わせて確認したわけではないが、そんなJクラブはここだけだろう。
運営母体が変わる歴史的な転換があり、致し方ない面はある。
が、それを差し引いても、人を代替可能とし、粗末に扱いすぎたと感じる。
残った人はバラけないように必死で、それはやがて同調圧力に形を変える。
そうして、どんどんシュリンクして、小さくなってしまった。
それが、いまの東京ヴェルディの姿なのだと思う。





季刊レポ17号

年に4回のお楽しみ、『季刊レポ』17号が発売された。
今回の特集は「笑う本棚2014」。
みんなで寄ってたかって笑える本を出し合い、そのなかから「笑う本棚大賞」を勝手に進呈しちゃおうという企画である。

選者は、伊野孝行、えのきどいちろう、乙幡啓子、海江田哲朗、霞流一、北尾トロ、グレゴリ青山、下関マグロ、新保信長、杉江松恋、高野秀行、とみさわ昭仁、豊崎由美、林雄司、日高トモキチ、平松洋子、南伸坊、宮田珠己、やまだないと(50音順)の19名。
僕も末席に加えてもらったのが、うれしいね。

笑いと一口にいっても、いろんな笑いがありますよ。
小説、ノンフィクション、漫画など、オールジャンルから86作品が一挙掲載されている。
ちなみに僕は、
『国境』黒川博行(講談社文庫)
『ゴングまであと30秒』髙橋秀実 (草思社文庫)
『ユニヴァーサル野球協会』ロバート・クーヴァー(白水Uブックス)
『巨流アマゾンを遡れ』高野秀行(集英社文庫)
『うらおもて人生録 』色川武大(新潮文庫)
の5冊を選びました。

季刊レポ17号表紙

『季刊レポ』17号の内容とご購入はこちら。

レポ、今号を含めて、あと4冊で終刊なんすよ。残念。
だけど、北尾トロ編集長の事務所で発送作業をやってても、湿っぽさは一切ない。
相も変わらずバカ話をしながら、まー別にどっかで付き合いは続いていくんじゃないのっつう、ゆるやかでいてたしかな手触りがある。





響くはずのない声

すっかり過ごしやすくなりました。
朝の匂いが変わったね。外に出たとき、気分がいい。

ここしばらくのホットトピックスは、なんといっても錦織圭でしょう。
全米オープン、ノバク・ジョコビッチとの準決勝から見たんだけど、まさか勝つとは思わんかった。

ゲームの合間、会場から日本語の声援が聞こえるんだよ。
「錦織、がんばれ!」って。
あの声を熱心なテニスファンはどう聞いたんだろうなぁ。
毎年、ウインブルドンくらいしか見ない僕でも、びっくりするほどジーンときて、うろたえた。
そこに響くはずのない声を聞いた気がしたのだ。
日本が初めてワールドカップに出たとき、オールドファンはこんな気分を味わったんだろうと思う。

決勝、錦織はマリン・チリッチに敗れ、準優勝に終わった。
第2セットだったかな。あのドロップショットは最高だったね。
挑戦は、続く。

で、近ごろのヴェルディですが・・・。
書きもらしたことは多々あり、安在和樹の初ゴール、ポープ・ウィリアムの初出場、楠美圭史の初スタメン、まとめちゃって悪いけど、みんなおめでとさん。

こないだ楠美に話を聞いたとき、こんなふうに振り返っていました。
「途中出場とスタメンではやはり大きく違って、ボールを置きにいった感じになってしまった。悔いが残ります」
野球のピッチャーの表現だけど、まあ伝わるでしょう。

先日、0‐1で敗れたカマタマーレ讃岐戦のことは書く気がせんねえ。
前も書いたとおり、僕は今季のヴェルディについて、「ちゃんと失敗すること」を望んでいるのだが、J2残留争いはさすがに想定してなかったんですよ。
チームの強化体制、監督の選定、初手から間違ったやり方をしていれば、ここまでなっちゃうのかと寒気を覚える。

いまのうちに書いておきます。
一応トップチームの強化担当ということになっている山本佳津さん(肩書きは、トップチーム部部長)に責任をおっかぶせて、放りだすのはやめてくださいね。
山本さんはアカデミーや周辺学校との付き合い、普及活動などで、クラブに必要な人です。
トップの強化で能力を発揮する人ではないんだよ。
自由にできる権限が与えられているわけでもないんだし。
「だったら、引き受けるんじゃねえよ」というのが酷な要求であるのは、社会人ならわかるでしょ?
まっとうな理屈が通る組織ではないんです。


●掲載情報
『フットボール批評』issue1(カンゼン) 9月6日発売
「スターシステムという憂鬱」を寄稿。
『サッカー批評』(双葉社)と『フットボール批評』、対立軸はこれ以上ないほどはっきりしているんだから、バチバチやり合ったほうがおもしろい。
でさ、そのうち「ライター&フォトグラファー花いちもんめ」でもやりゃいいんだよ。
「あの子がほしい」
「あの子じゃわからん」
「相談しましょ」
「そうしましょ」(うちの地元はこの歌詞でした)
この遊び、きょうびの子どもはやらんのだろうね。





お暑いですね

お盆、宮崎の祖母が他界し、どうにかして帰ろうとしたが、仕事の都合、および時期的に飛行機の確保がむつかしく、どうにもならなかった。
こういうとき忌引き休暇のない、フリーランスっつうのは不便ね。
ある先輩ライターの言った「原稿が遅れる言い訳に、身内の不幸を持ち出すのはだせえじゃん」という感覚。
それなら、うそでも気になるオンナがいて仕事が手につかないと言ったほうがずっとマシなんである(仕事なくなる)。

おだやかな人柄で、叱られた記憶がまったくない。
小学生の頃、庭を掘り返し、幅30センチ、全長10メートルの川を造っても、笑って見ていてくれた。
僕が相当にかわいかったせいと思われる。
静かに喪に服す、夏の夕暮れである。

さておき、こないだの水戸ホーリーホック戦、勝ちましたねえ。
1‐0。決勝点は、澤井直人。プロ初ゴールだ。おめでとう!

前半を見ていて、今日はちょっと厳しいなぁと思っていたら、相手がことごとくチャンスを外し、こちらは少ないチャンスをものにできた。
まあ、勝つときはこういうもんです。
それにしても杉本竜士のターンは鮮やか。
サイズに勝る相手は上から体重をかけて動きを止めようとしてくるんだけど(小柄な選手はここが苦しい)、抜群の小回りですり抜けていく。

試合後、あるスタッフがこんなことを語った。
「西が丘では、サポーターの表情が全然違うんですよ。みんなにこにこして、楽しそうに笑っている。サッカーが最大のイベントになり、ほかには何もいらない。味スタだと、何を仕掛けても手応えがいまいち乏しくてね。そんでイベント貧乏になっちゃう」

あのさ、みんな味スタではどんな顔してんの?(笑)


●掲載情報
『フットボールサミット第24回 美しく危険な男フォルラン』(カンゼン)
「駐日ウルグアイ大使、二等書記官が語る ウルグアイの英雄ディエゴ・フォルラン」を寄稿。

『2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って。 第9回 松澤香輝(早稲田大4年)』(フットボールチャンネル)
この人にはきっと何かあるな――という勘はほとんど外さない。
自分のキャリアを感じるのは、このセンサー機能ですね。
僕が欲するのは、こういう小さくてもかけがえのない物語だ。
冨樫剛一監督の写真、手の動きに表情があっていいでしょ?
どんな話をしているときか忘れたけど、なんか面白い。
いつも2、3枚送って、編集部がチョイスする。
まじめな顔をしている正面のショットも入っていたが、やっぱこれを選んだかぁ、と。





8月初旬

8月1日(金)
日本クラブユースサッカー選手権、準決勝を観戦。
第1試合、三菱養和SCユースがコンサドーレ札幌U-18を破り、決勝に駒を進めた。
ちょうど三菱養和関係の取材をしてて、どんなもんかなぁと足を運んだのだ。
正直、ここまで来ると思っておらず、おみそれいたしました。
翌日の決勝、FC東京U-18を倒し、31年ぶりの優勝。おめでとうございます。

2日(土)
FC東京 vs 清水エスパルス@味の素スタジアム。
大榎新監督の清水に興味があった。
FC東京がばかばか点を取り、4‐0。
途中出場の高木善朗、
GKと1対1になったあの決定機は決めたかったね。
今後、出場機会は増えるだろう。たぶん。

3日(日)
東京都リーグ1部、Criacao(クリアソン) vs 早稲田ユナイテッド@清瀬内山グラウンド。
1‐1のドロー。Criacao、首位キープ。
こりゃ、いよいよ関東リーグ昇格を狙えますなぁ。
この日の最大の収穫は、テクニカルディレクターの桜井直人さんとひっさしぶりに会ったこと。
しゃべるのは、かれこれ7、8年ぶりだよ。
現役を辞めた人はだいたい丸くなるものだが、とんがっている部分を多く残しているのがなんだかうれしかった。
そのぶん、世渡りで苦労も少なくないだろうと思う。
新しいサッカースクールの準備を進めているらしく、オープンしたら見に行く約束をした。

4日(月)
東京ヴェルディがFC町田ゼルビアと練習試合を行った。
牧野修造(中京大4年)が練習参加しており、後半15分からピッチに立つ。
「楽しかったですよ。ユースで一緒にやったことのある選手も何人かいたから。あうんの呼吸とまではいきませんでしたけど」
これから、92年組が順繰りに練習参加の予定だそうだ。

うだるような暑さが続く。
ぼちぼちがんばりたい。





おめでとう!

勝った勝った、勝ちましたよ。
J2第24節、東京ヴェルディ vs 京都サンガF.C.@味の素フィールド西が丘。
1‐0。得点、38分田村直也。

ピッチが近い西が丘での試合は、眼と耳でサッカーを楽しめ、ぎゅっと詰まった空気感がいいのだが、テントの記者席からアウェイ側のゴールはやや見づらい。
南秀仁のパスからシュートが決まったとき、周囲の記者と、誰だ、誰だ、澤井直人じゃないか、プロ初ゴールだ、こりゃめでたい、よくやってるもんご褒美だよとか言い合っていたら、田村だった。
田村にしても今季初ゴールで、めでたいことに変わりなし。

京都は攻撃がちぐはぐで、案外迫力がなかった。
大黒将志と周囲の呼吸がぜんぜん合ってない。
怖さがあったのは、山瀬功治のミドル、川勝監督がいかにも好みそうな伊藤優汰のドリブルくらいかなぁ。
監督が代わったばかりのこの時期に当たっておいて、助かった。

プロ初勝利となったGKのキローラン菜入。
試合後、うれしさを満面に表すことなく、淡々としていた。
広報さんから「ほら、初勝利だから」とインタビューの収録に呼ばれても、「勝つのが当たり前じゃん」とそっけない態度である。
相手への敬意を欠いているように聞こえるかもしれないがそうではなく、ゲーム内容からして妥当な結果でしょ、特別な仕事はしてないよと言いたかったらしい。
事実、京都の決定機はゼロ。ピンチらしいピンチはほとんどなかった。
もっとも、シュートストップだけがGKの仕事ではなく、コーチングやポジショニングなど、90分を通して安定した働きをしたといえる。

それでも静かに喜びをかみしめている様子で、「西が丘はスタンドが近く、サポーターの存在が心強い。一緒に守ってくれている感じだった」と菜入は語った。

先発した2試合、厳しいコースに飛んだシュートはまだ1本もない。
この先はそうもいかないだろう。
菜入のミス、あるいは経験の浅さで試合を落とすこともある。
大事になるのはそこだね。
いまのヴェルディは個人のミスを全体でカバーし、目立たなくしている。
ただ、GKの場合はミスが失点に直結するから、どうしたって目立つ。
目立っちゃうけど、そこをどうにかするのがチームですよ。

ここ3戦、磐田(2‐1○)、松本(1‐1△)、京都(1‐0○)の勝ち点7。
まさかね。望外の結果。


●掲載情報
『フットボールサミット第23回 FC東京 本当に強くなるための覚悟 育成型ビッグクラブへの道』(カンゼン)
特集に関しては「知ったことか!」。
シリーズ「日本サッカーの『土』をつくる」の第6回は、浦和レッズの発行するオフィシャル・マッチデー・プログラムの編集人・清尾淳さんにご登場願った。
現場では互いに見知っていたが、会って話すのは初めて。
印象に残ったのは、清尾さんの「個としての態度」だ。
ダンマク問題についても、質問を逸らしたりしないんだよ。
周りの眼を気にせず、一個人の主観、価値観を表明する。
「自分がこれを褒めると、あっち側の人間だと思われちゃうなぁ」みたいな小賢しい計算が一切ない。
いいもんはいい。ダメなもんはダメ。
あったりまえのことなんですけどね。

『2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って。 第8回 キローラン木鈴・菜入(東京ヴェルディ)』(フットボールチャンネル)

26日の松本戦、菜入のプロ初出場で書き直すことになっちゃったよ。
けど、喜んでやったね。
ツキがあるなぁと思った(選手の故障を歓迎するつもりはないが)。
やるだけ赤字が増えるばかりの仕事だけに、たまにはこういう僥倖がないとやっとれん。

アイルランドの音楽の話ができるかなと思ったのだが、
「あんまり知らないんですよ。Enya(エンヤ)と……U2くらい」(菜入)
「僕もその程度。あ、ワン・ダイレクションのメンバーにアイルランド人がいますよね」(木鈴)
と、なんとまあ歯ごたえのない回答。
ドーナル・ラニーとか聴かんのかい!





文句なしに最高のゲーム

祭りのあとってのはさみしいもので、はい、これからふだんの生活に戻りますよ、とわかってはいるのだが、まだどこか浮ついている感じでしっくりこない。
ほんとおもしろかったからね、今回のブラジルW杯は。
決勝の前、ひまつぶしに寄った新宿DUG。
終わりを告げるかのように流れていた『ダニー・ボーイ』がずっと耳の奥に残り、マーク・ハーマン監督の映画『ブラス!』をまた観たりしていた。

そんで、なんの気なしに緑者4人でクルマに乗り、磐田に向かったのだった。
たいした期待はなく、あっちで鰻を食べようね、なんて話しながら。
まさか、あんなもんが見られるとは思いもしなかった。

僕は、相手が悪いなぁと考えていた。
これから東京ヴェルディは、
ジュビロ磐田、松本山雅FC、京都サンガF.C.と順に対戦する。
どこも力のあるチームだ。
先週の天皇杯でちょっといい風が吹いてきたとはいえ、微風も微風。
結果が出なければ、また元の腰の引けたサッカーに戻ってしまうだろう。
いまのヴェルディに手ごろな相手なんてありはしないのだけど、めぐり合わせの不運を思うところがあった。

スタメンに杉本竜士の名があり、おっと目を見張る。
あの突貫小僧を、ついに先発起用してきたか。
あとは、正GKの佐藤優也が入った以外、天皇杯のメンバーから変更はなかった。
前傾姿勢のまま、一歩も退かない構え。
三浦監督の意気を感じさせるメンバーリストだった。

入りのテンションは、最高だったね。
常盤聡、杉本が前から圧力をかけ、2列目もそれに呼応して走る走る。
いなそうとした磐田のボールを強引にもぎ取り、前へ運んだ。

15分、南秀仁がやってくれましたよ。
澤井直人の縦パスを受けて、くるりと反転。右足を振って、先制ゴール。
さらに23分、安在和樹が絶妙なコントロールで裏に出し、杉本が伊野波雅彦をかわして、左足でシュートを突き刺す。
うわー、2‐0だって。

後半、磐田のカウンターできれいに1点返されて、危うい気配が漂ったが、ヴェルディは最後までベタ引きにはならなかった。
後半のシュート数は、前半の7本を上回る11本。
ただ、前から追いたい選手と、もう足が残っていない選手がいて、そのへんのかい離を突かれたら、もう1点食らってもおかしくなかった。
磐田の拙攻に助けられた面はある。

後半から出てきた新加入のチンガは能力の高い選手だった。
ボールを持つさまに落ち着きがあり、相手の狙いをひょいとかわしてプレーできる。
今後の活躍を予感させるなあ。
ポジションのかぶる小林祐希は、新たな正念場を迎えることになる。

この試合は三浦監督の采配も的確だった。
後半が始まってすぐ足にきていたニウドを下げて吉野恭平、サイドの運動量を補完し、かつスピードアップできる安西幸輝、前でボールを収められる平本一樹を次々に投入した。

それより3点目っすよね。
常盤選手、まじすか。
南さん、あんたなにやってんだよ。
と、笑っていられたのは勝ったからこそである。

いやはや、つくづく磐田に行ってよかったなあ。燃えたー。
印象的なシーンは、ほかにいくつもある。
杉本が交代間際(ボードに33と表示されていた)、3回連続で相手を追ったんだよ。
ビュン、ビュン、ビュンと。
あれにはしびれたねえ。
「みんなが苦しい時間帯。最後、あそこで自分が走れば、トキくん(常盤)は1回休める」だとさ。

澤井の運動量もすさまじかった。
攻守にアップダウンを繰り返し、まさにゴール・トゥ・ゴールの働き。
あそこまで走れる選手とは。
ボディーバランスが抜群で、相撲を取らせたら相当強そうだなとは思ったけれど。


笑っちゃったのは、たしか後半ロスタイム、ヴェルディのベンチにボールが飛び込んで、
ポンポンッって壁に跳ね返るみたいにボールが出てきたとき。
監督、鬼の形相でベンチを怒鳴りつけたからね。
丁寧な言葉で説明すると、「多少は手間取って時間を使うという発想はないんですか?」ということだと思います。
とにかく、必死なんだよ。

間違いなく、ここは今季のターニングポイントです。
この勢いを生かせるか、確固たる何かを掴めるかによって、実りの大きさはまったく違うものになる。
さあ、皆さんお誘い合わせのうえ、松本に行きましょう。

翌日は、せっかく静岡まで行ったのだからと、JFLのアスルクラロ沼津の試合を取材してきた。
相手は、ファジアーノ岡山ネクスト。
愛鷹運動公園競技場を訪れたのは初めてである。
アシタカって読むのね。

ピーカンの空の下、13時キックオフ。
試合をやる選手たちは、あっちいなどころの話ではない。

目当ての高野光司は右サイドバックで出場していた。

後半の途中、高野のご両親のところに挨拶がてら伺い、一緒に試合を観ていた。
お母さんの「もう、コウジ、しんでもいいから(比喩的表現)走んなさいよ!」の檄に大笑い。
息子さん、指一本で倒れそうなくらいヘロヘロっすよ。
終了のホイッスルと同時に、高野は大の字になってピッチに寝転んじゃった。
双方力を尽くし、0‐0のドロー。
アスルクラロでは興味の湧く人にも会え、充実の連休だった。





あのトカゲが!

今日のランドはめちゃめちゃ暑かった。
こっちは見ているだけだけど、選手たちは大変だよ。

クラブハウスでぐたーっとしてたら、視界の端でちょろちょろっと何かが動いた。
トカゲである。
ボディが光沢のある茶色で、しっぽが青。珍しい色合いをしている。

トカゲ


「ちょっと、柴原さん来て!」
まじめに仕事をしていたエルゴラッソの東京ヴェルディ担当、柴原貴彦さんを呼び、ふたりでしげしげ眺めた。

「トカゲっすね。こんな色のトカゲ、初めて見た」
「でしょう。大発見かもしれませんよ」
「もしや、ここから連勝が始まるという予兆なのでは?」
「神の使い、現る!」
「見出しを飾る、あのトカゲがすべてを変えた!」
「憶えておきましょう。僕らは今日、奇妙なトカゲを目撃しました」

ふたりして、すげえ根拠のないこと言ってるよ。
いい気なもんだね。

そのあと、キットマンの佐藤崇史さんが来て、「そう、こっちのトカゲってしっぽが青いんですよ。グラウンドにはよくいるけど、クラブハウスで見たのは初めてだなぁ」と言ってました。

この日の主要な目的は、キローラン木鈴のインタビューで、無事終了。
菜入のほうにはちょっと前に話を聞いたから、そのうち合わせてお届けできると思う。

以下、ここ最近あったことを列挙する。

10日、取材で西麻布のウルグアイ大使館を訪ねる。
そこに、昔、ヴェルディで通訳の仕事をしていた羽生直行さんがいてびっくり。
主にアルディレス監督の頃ね。
いやー、助かった。
通訳さんがサッカーを知っている人だと安心感が違う。
相変わらず、ごつい身体をしてました。

12日、天皇杯2回戦、浦和レッズ vs 浦安SC@駒場スタジアム。
終わってみれば、8‐2で浦和の圧勝だったが、前半の浦安は狭いエリアでパスをつなぎ、球際の争いに激しく、見どころのあるサッカーをしていた。
右サイドバック、秋葉勇志の成長ぶりは感動的だったね。
チームに必要とされ試合に出る、出続けることの大切さをあらためて思う。
注目の10番清水康也は左ももに裂傷を負い、テーピングでぐるぐる巻きにして出場していた。
最後の最後にゴールを決めてくれたが、ゲームの流れを大きく左右した2失点目、ボールロストの場面は相当悔いているだろう。

13日、天皇杯2回戦、東京ヴェルディ vs ギラヴァンツ北九州@味の素フィールド西が丘。
1‐2、トーナメント敗退という結果に。
まあでも、大きく蹴らずにパスをつないで押し込むことができるのを実証できた点では、価値のあるゲームだった。
ボックス付近で効果的に立ち回った南秀仁、ぼちぼち計算が立つようになりそうな澤井直人ら、収穫もある。
ただし、チームを勝たせられるほどの力はなかった。
今後につなげてほしいと願う。
そうしなきゃ、うそだよ。

14日早朝、ドイツ、アルゼンチンの対戦となったワールカップ決勝は、赤坂の東京ドイツ文化センターのパブリックビューイングに行った。
ドイツ人もたくさんいて、超満員ですよ。
延長後半、マリオ・ゲッツェのゴールでドイツが4度目の優勝。
でかい男と女の歓喜爆発は迫力があったねえ。
世界一ってどんな気分なんだろう。
ちょっと想像がつかないなあ。


●掲載情報
『サッカー批評』 issue69(双葉社) 7月10日発売
「ブラジリアンタウン探訪記 群馬県大泉町ひとりぼっち」を寄稿。
こういう計画性のないルポをたまにはやっていきたいっすね。
波間に漂う感じを大切に。