『あなたの人生に一筆加えます』
渋谷の裏通り、あまり売れてなさそうな古着屋の横に、薄汚れた看板を掲げた地下へ続く入り口が通りすがりに気になった。
一筆加える?
よくある、道端で一言もっともらしい言葉をくれる、あれだろうか?
それにしては店を構えてるのは大げさだ。
気になってよく看板を見たら、その下に『コーヒー四百円』
の文字があった。
なんだカフェか。
最近いろんなカフェが出てるから新手のやつか。
今日はゴールデンウイーク中日。
友達の少ない私は当てもなく渋谷をぶらついていた。
少しでも人の行る場所にいたかったのかもしれない。
散々あるいて疲れていたし一服することにした。
両肩幅ぐらいの薄暗い階段を降りていくと暖色系の明かりが灯った小さな店があった。
昔のテーブルに占いが置いてあるような古い雰囲気の喫茶店だった。
新手のカフェをイメージしていた私は少し肩すかしだったが、まぁ人もいないし休憩にはちょうどいいだろうと妥協点をみつけた。
縦長の店内にはカウンターと2人席が三組あった。
カウンターはなんだか気まずい感じがして私は2人席の真ん中を選んだ。
席についてまず一服。
タバコを吸い始めてもう五年ぐらいになるか。
学生時代もまったく吸わなかったのに、きっかけはなんだったっけか。
あぁ…あの男だ。
あの時つきあっていた男だ。
sexのあとに必ずする一服のなにがいいのかわからなくて、男にせがんで吸わせてもらった。
それにはまって男とはその後一年で別れたがずっと止められないでいた。
セブンスターのライト。女にしてはおっさんくさいタバコだ。
煙を吐き出しながらそんなことを考えていると、店員が水を持ってきた。
『なにになさいますか?といっても飲み物はコーヒーだけなんですけどね』
と言って年の頃40の女性はコロコロと笑った。
『そうですか。じゃあコーヒーで』
私は笑顔で返した。
注文を聞くと女性はカウンターの中へ戻って私に背を見せコーヒーを引き始めた。
店内にゆっくり広がる豆が砕ける音と香りは渋谷の喧騒で尖った私の感覚をゆっくり包んでなだめてくれるようだった。
そしてなかなか人となれあわない私が不思議と彼女の背中越しに話しかけていた。
『あの看板の言葉、なんだかおしゃれなキャッチフレーズですね。コーヒーをあんなふうに表現するとこなかなか無いですよ。』
女性は変わらずゆっくり豆を挽く。
『あぁ…あなたはそう捉えたのね』
渋谷の裏通り、あまり売れてなさそうな古着屋の横に、薄汚れた看板を掲げた地下へ続く入り口が通りすがりに気になった。
一筆加える?
よくある、道端で一言もっともらしい言葉をくれる、あれだろうか?
それにしては店を構えてるのは大げさだ。
気になってよく看板を見たら、その下に『コーヒー四百円』
の文字があった。
なんだカフェか。
最近いろんなカフェが出てるから新手のやつか。
今日はゴールデンウイーク中日。
友達の少ない私は当てもなく渋谷をぶらついていた。
少しでも人の行る場所にいたかったのかもしれない。
散々あるいて疲れていたし一服することにした。
両肩幅ぐらいの薄暗い階段を降りていくと暖色系の明かりが灯った小さな店があった。
昔のテーブルに占いが置いてあるような古い雰囲気の喫茶店だった。
新手のカフェをイメージしていた私は少し肩すかしだったが、まぁ人もいないし休憩にはちょうどいいだろうと妥協点をみつけた。
縦長の店内にはカウンターと2人席が三組あった。
カウンターはなんだか気まずい感じがして私は2人席の真ん中を選んだ。
席についてまず一服。
タバコを吸い始めてもう五年ぐらいになるか。
学生時代もまったく吸わなかったのに、きっかけはなんだったっけか。
あぁ…あの男だ。
あの時つきあっていた男だ。
sexのあとに必ずする一服のなにがいいのかわからなくて、男にせがんで吸わせてもらった。
それにはまって男とはその後一年で別れたがずっと止められないでいた。
セブンスターのライト。女にしてはおっさんくさいタバコだ。
煙を吐き出しながらそんなことを考えていると、店員が水を持ってきた。
『なにになさいますか?といっても飲み物はコーヒーだけなんですけどね』
と言って年の頃40の女性はコロコロと笑った。
『そうですか。じゃあコーヒーで』
私は笑顔で返した。
注文を聞くと女性はカウンターの中へ戻って私に背を見せコーヒーを引き始めた。
店内にゆっくり広がる豆が砕ける音と香りは渋谷の喧騒で尖った私の感覚をゆっくり包んでなだめてくれるようだった。
そしてなかなか人となれあわない私が不思議と彼女の背中越しに話しかけていた。
『あの看板の言葉、なんだかおしゃれなキャッチフレーズですね。コーヒーをあんなふうに表現するとこなかなか無いですよ。』
女性は変わらずゆっくり豆を挽く。
『あぁ…あなたはそう捉えたのね』