家の中を川が流れている。

その川の流れる廊下を、赤白の錦鯉が遡上する。

 

どの方向にいくのか読めない不規則な流れだが、その中を、鯉は元気に泳いでいる。

 

「あなたの家では、こういうことはないの?」

家主の女性はさも当然のように、明るく尋ねてくる。

 

モダンな着物に、綺麗に整えられたショートボブが似合っている。

 

 

「不思議なことは起こるけれど、錦鯉が家の中を泳いでいたことは、これまで経験ないですね」

 

その答えが的を射ているかどうかわからないけれど、私はそう返す。