■藤原隆家
隆家は一本芯の通った男として人気者でした。
没落しながらも誇り高く生き、赴任先の太宰府では大陸からの襲撃を撃退するなど(刀伊の入寇。1019)、貴族ながらも武力があって、「天下の性悪」(”世の中のさがな者”。『大鏡』)と呼ばれていた。要するにヤンキーだったんです。貴族のヤンキーだから人気者だったんでしょう。悪の魅力というか、くそじじいの魅力とも通じます。
もっとも先の発言は、実際に隆家が言ったかどうかというよりは、世間の人の思いを、隆家を使って代弁させたものと言えるのかもしれない。
同じように藤原道長の栄華を中心に描いた歴史物語としては、平安中期、道長と同時代の赤染衛門の手になる『栄花物語』があるんですが、『大鏡』はそれより後に書かれただけに、リアルタイムでは権力者に憚って筆にできなかった話題や世間の思いを伝えることが可能になったわけです。

しかも翁が見聞きしたことを「語る」という設定だから、歴史書に記されていない事実も口伝えで残っていたのだ、という言い訳が成り立ち、かなりデリケートなことも暴露できるという仕組みです。

■貝原益軒(1630-1714)
彼が「養生訓」(1713)を書いたのは84歳の時なんです。
「養生訓」によれば益軒はその年齢でも”目の病なく、夜、細字をよみ書く”という健康さで、歯も一本も抜け落ちていなかったというから羨ましい。
それもこれも、益軒によれば養生を心がけているからで、最も有名な養生法が腹八分目、食べ過ぎないことです。
そして薄味。
”凡ての食、淡薄なる物を好むべし”(巻第3)
さらに夕飯は少なめにして、夜酒は飲まない。
小児や老人は四季を通じて温かいものを食べる。
40を越えたら、用事がない時は目を開かぬ方がいい。
口を閉じて寝る。
夜更かしはしない。
熱い風呂はいけない。
長く歩いたり、長く座ったり、長く立っていたり、長く語ったりしてはいけない・・・

 

 

知恵者、素直すぎる方など、愛すべき人物をまとめて

「くそじじい、くそばばあ」と敬称としておられる一冊。

 

藤原さんの中では、隆家さん好きです。

 

そして、益軒先生の養生訓のこの行。

『40を越えたら、用事がない時は目を開かぬ方がいい。』?!

な、なるほど~・・・

目を休めるのではなく、開かぬ!がインパクトです。