おはようございます。「秘話」にまつわる過去記事をご紹介いたします。



 まずは、あの「たまごっち」から・・・


No.50:起死回生



 起死回生:今にもだめになりそうな物事を立て直すこと。



 私が当社に入社する前にいた会社WIは、おもちゃの企画開発会社でした。一般的な知名度はまったくない会社なのですが、業界では日本のみならず海外でも抜群の知名度を誇っていました。なぜなら、1996年11月にBA社から発売され国内外で4,000万個(800億円)を販売した「たまごっち」を、企画開発した文字通り「生みの親」だったからです。


おもちゃ業界では、BA社、TO社。TA社といった会社が有名ですが、ほとんどの「企画機能」は、ブレーンとよばれる企画会社の「持ち込み」に「依存」しています。「持ち込み案件」を検討して「商品化」の決定が下されると、MD(商品政策)プランを立案します。その上で、マーケティングプランを合体させ、商品開発がスタートするのです。いわば、「アイデア」は「他人」に「依存」していますが、「イケル(売れる)」と踏んだ「アイデア」は「採用」し、大きく肉付けしていく「育ての親」に徹しているという感じでしょうか。これは、日本に限ったことではなく、アメリカでも同様です。企画会社は「INVENTOR:インベンター、発明者」と呼ばれているぐらい、一目置かれる存在です。

もともと、BA社の企画を担当していたアイデアマンが、独立して創業した会社でしたが、当初は、生きるために何でもかんでも請け負っていたそうです。ショップのレイアウトや、お菓子のパッケージデザイン、チラシにいたるまで、「銭」になるものをがむしゃらにやるしかなかったそうなのです。ところが、やはり「昔とった杵柄(きねづか)」か、おもちゃの企画が一番「大好き」だし「やりたいこと」だということに気づき、そこから「おもちゃ」の「企画」に「集中」することになります。その社長は、とにかく「趣味」の多い人でした。子供のころから「飼育」が好きで、昆虫や金魚、犬、猫、小鳥など、なんでも飼った経験があるそうです。また、バイクや音楽も大好きで、本当に「興味・関心」と「好奇心」の塊のようなひとでした。会社を入ると、巨大水槽の、熱帯魚と陸カメが眼に飛び込んできます。社長室は、ジムマシーンが所狭し、と並んでいて、まさに異様な光景です。四六時中、「アイデア」を考えている・・・そんな人でした。

「たまごっち」も社長が「企画」した商品です。当時、腕時計型のミニ液晶ゲーム「ゲームウォッチ」が流行っていました。「ペット」が好きな社長は、この液晶の中で「ペット」を飼えないかと考えたわけです。ユーザーが一生懸命「育てる」と「ペット」が「成長」する。でも、ちゃんと「育てない」と「ひねくれたり」、場合によっては「死んだり」するという、まさに「真実味」を帯びた「育成ゲーム」を考えたのです。つまり、社長は、「コンセプト」もしくは「グランドデザイン」(木でたとえれば幹)」を考えるのです。そこに、「企画」のメンバーが、どんどん肉付けをしていきます。つまり枝葉をつけていきます。たまごからスタートするから「たまご型」の概観にしよう・・・「たまご」+「ウォッチ」=「たまごっち」・・・でも腕時計型ではなく、チェーンをつけてぶら下げよう・・・死んでしまうのは「おもちゃ」として問題では・・・「ポーズ」機能をつけて「育成」をストップさせたら・・・ダメダメ!それだと「真実味」がなくなる・・・成長したキャラクターは何種類?・・・「ヘタウマ」なタッチが新鮮だ!・・・などなど、喧々諤々(けんけんがくがく)だったそうです。


プレゼンテーションした時、BA社はSE社との合併話が出ているほど、業績は不調でした。創業者のジュニア社長が「合併推進派」で、社員は全員「絶対反対」という状況だったそうです。この当時から、「おもちゃ」というジャンルに、「ゲーム」というジャンルが出現し、業界地図も劇的に「変化」し始めていたのです。ですから、プレゼンテーションの「反応」は「可もなく不可もなく」・・・「もうどうでもいいよ!」といった「投げやりな雰囲気」だったそうで、下手すれば「没!」になるところだったと言います。幸いにも、「GO!サイン」が出て、商品化に至りました。


誰も「期待」していなかった「たまごっち」ですが、発売開始と同時に、若い女性(学生やOL)の支持を受け、「爆発的な話題」となりました。授業中に「ピーピー」鳴るのがニュースになったぐらいです。多分誰でも、やったことはなくても、一度ぐらい耳にしたことはあるのではないでしょうか?ブームは、「ニセモノ」も巻き込んで、世界中に広がりました。そして、あっという間に「沈静化」したのです。


この歴史的な「大ヒット」で、BA社の買収話は「解消」となりました。ジュニア社長は退き、銀行から新社長を受け入れて再スタートを切りました。WI社の売上は200億円に上りました。まさに「神風」です。「起死回生」です。

ところが、一気に「ブーム」が「終焉」したため、BA社は多大な「不良在庫」を抱えました。ただし、「再生」への「自信」と「覚悟」を持つことができ「社員一丸体制」ができたのです。一方、WI社は、売上は一気に落ち込んだものの、「コアコンピタンス(他社との優位性・競争力をもつ事業領域)」を見極めることができました。


「起死回生」のきっかけとなった「たまごっち」ですが、もとは、シンプルな「アイデア」です。いつも考え続けているからこそ生まれたのだと思います。普段から「問題意識」も、「興味・関心」も、「好奇心」もない人には、絶対「生み出すことなどできない芸当」だと思います。その後、「育成」を「バトル(闘い)」に変えて、男の子向けに生み出したおもちゃが「デジタルモンスター」です。また、「液晶画面」のなかで「育成」するのではなく、実際のペットのようなおもちゃをめざして開発されたのが、「プリモプエル」(触ったり握手したりといったスキンシップに反応し言葉をしゃべるコミュニケーション型ぬいぐるみ)です。「キーワード」を次々とあげながら「新化」させていっています。




育成ゲームの元祖ともいえる「たまごっち」ですが、その後、復活し、キャラクタービジネス展開を軸に、息の長い商品を目指しています。





 その復活の模様は、次回・・・




 元記事はこちら・・・





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