おはようございます。すでに東京では桜の「開花宣言」が出されました。とはいえ、見頃はまだまだという感じですが・・・。毎年、この時期になると、通勤途中に、思わず「桜」に目を奪われ、「あんなところに・・・」と、つい寄り道したくなります。週末出かける方も多いのでしょうね。



No.282:処世術


処世術:生きてゆく術策。世渡りの術。


 「齋藤孝」氏といえば、「声に出して読みたい日本語」が大ベストセラーになったことをきっかけに、今では日本テレビ系列で放映中の「世界一受けたい授業 」でもおなじみの、のりに乗っている教育学者。数多くの著作があり、私も何冊か読んでいます。


 そんな「齋藤孝」氏自信が「マイ名作」と呼ぶ本が、「バカボンのパパはなぜ天才なのか?」です。「名作マンガのヒーロー、ヒロインたちの奇想天外な処世術に学べ」として、選りすぐりの68作品を取り上げて、「大人の作法・処世術」を学ぼうというのです。


齋藤 孝
バカボンのパパはなぜ天才なのか?




 これを知ったのは、お気に入りのブログ「純粋書評・・・お暇なら読んでね 」で紹介されていたからです。もともと、「齋藤孝」氏のわかりやすい文章が気に入っていたのと、以前、氏が推薦していた「DEATH NOTE (デスノート )」が本当に面白かったことから、部類のマンガ好きなんだろうとは思っていましたので、非常に興味がわきました。



 内容はといえば、ともかく、「これでもか!」というぐらい、「大人の処世術」を指摘しています。少々こじつけ気味のところもあるのですが、本来の「マンガ好き」が講じたからか、「水を得た魚のよう」に、まるで自身が漫画家のように、生き生きと、「描写」しているのです。


 目次を見るだけでも、興味をそそります。


ゴルゴ13が「超一流」なのはなぜか―『ゴルゴ13』

バカボンのパパはなぜ「天才」なのか?―『天才バカボン』

無気力に活を入れる「バカの力」とは?―『空手バカ一代』

これぞ史上最強の「伝言力」だ!!―『ワイルド7』

お蝶夫人に学ぶ「プライドの保ち力」―『エースをねらえ!』

SEXを強くするのは「意識の高速回転」だった!―『東京大学物語』


「ウンコ座り」で会議革命!?―『ビー・バップ・ハイスクール』
こんな「自己暗示術」ってアリ?―『柔道部物語』
こまわり君は「プレゼンの達人」だった!?―『がきデカ』
チエちゃんはなぜ「ダメ男」と付き合えるのか?―『じゃりン子チエ』・・・


 とにかく、どの作品に対しても、根底に氏の深い「洞察力」と「思い入れ」、そして「愛情」感じられるからすごいのです。


 「あしたのジョー」からは、「矢吹丈の『ベストパフォーマンス』は紀ちゃんとの初デートだった!」と、断言しています。ストーリーを知らない方には、「なんのこっちゃ!?」という感じかもしれませんが、かなり奥が深いマニアックな考察です。


 あらすじは、こうです。


簡易宿泊所が立ち並ぶ東京の片隅。「ドヤ街」と呼ばれるそんな場所にふらりと姿を現した、天涯孤独の少年、矢吹丈(ジョー)。元ボクサー丹下段平との出会いをきっかけにボクシングを始めることになる。

様々なライバルと戦いながら、やがて世界へと挑戦していくジョー。だが、ジョーの中に燃える思いは、ただ「真っ白に燃え尽きること」だった。



 そして、作者の「ちばてつや」氏がこんなコメントをしています。


この作品の原作者が高森朝雄さんであることはみなさんご存知だろうと思います。その、原作でのラストシーンは当初、この絵のような雰囲気になる予定でした。

激しく熾烈な攻防の末、僅差でホセに敗れたジョー。力尽きてリングサイドに座るジョーをなぐさめる段平。「おまえは試合には負けたが、ケンカには勝ったんだ」…と。

その後、白木邸のテラスで、ぼんやりとひざを抱えるジョーを優しい眼差しで見つめる葉子…。

それはそれなりに一つの良いラストの形であったと思う。けれど長い連載の間に、色んなドラマがあった。鑑別所から少年院の地獄のような毎日、力石との出会い、そして力石の死。その後も、ウルフ金串、カーロス・リベラ、ハリマオ、金竜飛、色々なライバルとの激しい戦いが続き、そして最後にパーフェクトなチャンピオン、ホセ・メンドーサとの命をかけた戦い。そのあとの情景としては、ボク自身がどうしてもそのラストに納得できず、ページ数の都合もあったので、高森さんに相談して「ラストは任せる」と言ってもらいました。しかし、いくら考えてもコレといったラストシーンが浮かんでこない。締め切りが過ぎても何も出てこない。そうして悩みに悩んでいたとき、担当の編集さんが、数ヶ月前に描いたジョーと紀子が初めてデートするシーンを示してくれた。そこでぽつりと語ったジョーの一言、「真っ白に燃え尽きたい」というセリフを見せられたときに、あのラストシーンがふっと浮かんで、一気に描き上げることができたのです。


last


高森 朝雄, ちば てつや
あしたのジョー (12)
○論議を呼んだ印象的なラストシーン!




 ・・・さすがです。


 「あとがき」の最後に、「これは私のベスト本なのだ!!」と、バカボンのパパのように「断言」しているのが、実にしゃれています。


 仕事や生き方へのヒントが満載ですので、ぜひ一読してみてください。



PS.

 今までの著作とは違って、「小沢昭一の小沢昭一的こころ 」のような文体も笑わせる!「下ネタ」系にも踏み込んでいるのは、「大人」を意識しているからこそか・・・。