ジャジャジャーンジャジャジャーンジャジャジャジャジャン
けたたましい音楽が鳴り、私の意識はどんどん浮上していく。
拘束されているように動きづらかったが意地で片腕を開放し、音の鳴る携帯を探る。
「ん~」
ベッド上を手探りで探すと自分のお腹の上に温かいものが乗っているのに気づいた。
これが私の動きを封じていたのか。邪魔だ。
退かそうと一生懸命押しているのだが、びくともしない。何だこれ。
嫌々ながら眠い目を開ける。ああ、まだ焦点も合ってねぇよこれ。
メガネもないし、見えない。何これ、腕?
・・・・・・腕!?
ぎょっとして一気に目が覚めた。
人の、腕、だ。温かい。
ギ、ギ、ギ、と効果音が付きそうなほどゆっくり首を動かすと、人の顔がドアップであった。
(ギャアアアアアァァァァァァァアアアァァァァッ!!!!!!??)
心の中で叫び声をあげながら、私は固まった。
だっ誰だこのイケメンは?あとなんで私の家にいる?あとなんで私の一緒の布団に?
もしかしてヤっちゃった?いやでもそんなわけないよね?なぜ腕を回されている?
混乱の中、スヌーズモードにしていた携帯がもう一度鳴り始めた。
ジャジャジャーンジャジャジャーンジャジャジャ。
急いで止めて、隣のイケメンを確認する。
眉間にしわが寄り、まぶたが少し動いた。
起きる、か?とじっと男を観察しているとゆっくりと開いた目と見詰め合ってしまった。
男がどんな反応をするか待って、じっと見つめ返すと男はにやりと笑った。
「おはよ」
そしてあろうことか私の後頭部に手を回し、口付けをかましてきた。
いきなりのことで反応が遅れ、簡単に相手の舌の侵入を許してしまう。
反射的にその舌の動きに合わせると男は満足したのかやっと顔を離した。
「おはよ、アマノ」
「おはようございます・・・・・・?」
イマイチ状況がつかめない。というかなぜ私はさっきキスされた?意味が分からん。
え、ガチでヤっちゃった感じ?おかしいな貞操は大切にしていこうと思っていたつもりだったんだけど。
男は起き上がってそそくさとテレビをつけ洗面所へ姿を消した。
洗面所からは水の出る音が聞こえる。
我が家のように使っているが、私はあの男と面識はない、はず。
寝転がったまま男がつけていったテレビを見る。
あ、私も会社へ行く支度しなきゃいけない時間だ。
のそりのそりと起き上がって男と洗面所ですれ違った。
眠いならまだ寝てればいいのに、と頭を撫でられたのだが、意味がわからん。
さっさと顔洗って化粧しないと。
ばしゃばしゃ、ぱしぱし。
下地から何まで鏡に向かって化粧をしていると、朝ごはんの用意をしている。
「めずらしいね、お化粧なんて。今日どこかへ行くの?」
「はい?仕事ですけど」
「仕事?アマノ仕事なんてしてたっけ」
「え?」
私は高校卒業してからすぐに働き始めた。
・・・・・・そうだよね?
急に不安になって携帯を手にとってアドレス帳を調べる。
なんだなんだこの動悸は。
会社の名前を探す。
ない、ない、ない。
仲の良かった上司の名前も、後輩の名前も全て消えていた。
変わりに見知らぬ名前がいくつか。
『折原臨也』
『岸谷新羅』
『セルティ』
『平和島静雄』
こ、これって・・・・・・!
「アマノ?どうかした?」
「おり・・・・・・じゃない、いざ、や?」
「なぁーに?」
やっぱり、合ってた。
一緒に寝ていたり、朝一でキスをしてきたので苗字呼びではないな、と思った。
いざや、臨也、かあ。
どこか腑に落ちない。多分それは私が認識している“折原臨也”と今のこの人物の言動があまりに
違い過ぎるからだろう。私が知っている臨也の方は人が好きなのであって誰かに、平和島静雄以外に
執着するような人物ではない。しかし今のこの臨也はまるで正反対で、なぜか私にべったりだ。
今も後ろから抱きつかれており、頬についばむようなキスを何回もしている。
臨也はイケメンなのでそのイケメンに抱きつかれたり、キスをされたりするのは悪い気はしない。
むしろ好きな部類に入るので拒むこともしないのだが・・・・・・。
「アマノ、ご飯食べよう?」
「う、うん」
臨也が作ったのはおいしそうなフレンチトーストだ。律儀にはちみつまで用意してくれている。
「いただきます」
私がそう言って一口入れるのをじっと見ていた。
「ん、おいしい」
「そ。よかった」
感想に満足したのか臨也もフォークを進める。
素直においしい。というか、臨也ってご飯作れたんだ、と驚いた。
「おでかけはもういいの?なんか急いで支度していたみたいだけど」
「あー、なんか勘違いだったみたい」
「勘違い?相変わらずアマノは面白いね。じゃあ折角だし今日はデートしようか。どこがいい?」
私は考えるのをやめた。不自然なことはしない方がよさそうだと悟ったので、今は臨也の言うとおり
行動していこうと思う。
でも・・・・・・、臨也とデートかあ。夢心地かも知れん。
「イケブクロ・・・・・・だめ?」
「それ、本気?」
あ、嫌そう。
不機嫌な顔を隠そうともせず臨也は感情を露にした。なにこの萌ポインツ。
「お昼に露西亜寿司食べたい」
「ふーん?まあいいけどね。水族館でも見に行こうか」
「やったー」
シズちゃんと首なしライダーに会えるかもと思って池袋にしたのだけど、多分それを察知した
臨也はとても嫌そうだ。おもしろい。
でもでも!折角この世界に来た?混ざった?のなら大好きなキャラクターたちに会いたいじゃない!
二人とも食べ終わって臨也がお皿を片付けてくれる。なんだこの至れり尽くせり!?
というか、そうとう私のこと好きだな!
キッチンから水の流れる音が聞こえる。
その間私は携帯でいろいろ確認した後、水族館に着ていく服を探した。
天音アマノ、折原臨也と水族館デート行って来ます!!
しかし続かない。