広東語の唔使(m sai)という言葉を商店街やレストランで聞くが、日本語で言うと「いいよ、いいよ!(要らないよの意)」的なカジュアルな表現。それを英語に直訳するとno needになってしまうのだろう。因みに、ポイントは連呼。
例えばどういう場面で使っているかというと、買物を終えレジでお会計をしている時に袋に荷物を入れようとする所を、no need要らないよ、自分の手持ちのバッグに入れて帰るから、というように。
或いはホテル等で荷物を運ぶのを手伝ってくれそうな所を、唔使丶唔使、大丈夫自分で持てるから、のように。全く謙虚な感じで必要無いよ、こっちでどうにかなるから、というニュアンスがある。
でも、このno needを他国、特に英語が第一言語の国で使うと、大変ぶっきらぼうな、むしろ高飛車で失礼な表現となってしまう。そんな事分かっていたにも関わらず、すっかり慣れで手を貸してくれそうになったロンドンのホテルのボーイさんにno needを連呼してしまったり、主人が日本のレストランでビールをもう一杯如何ですか?と丁寧に聞かれているのにNo need!を連呼。
普通にNo thank youと丁寧にお断りすれば良いものを、要らん要らん!と、どこぞの社長かのような態度にも受け止められてしまう言葉遣いでは、相手も気分を害してしまうだろう。ましてや連呼までされて、一回言えや分かるよ!と言い返したくもなるだろう。
ふと、こんな事に気付いた時、郷に入っては郷に従へとは言うものの、慣れに甘んじて同じ言語だからと英語で他国の文化を度外視した振舞いには気を付けなければと身を引き締めた。でもこの微妙なバランス、ニュアンスの違いを感じ取るのに2年かかった。一度はどっぷりその国の文化に浸り、そこから一瞬出てみないと気付かないこともある。
香港は広東語はもちろん、英語も日常生活では普通に使えるので、時折面白い表現に出くわす。しかも、イギリスの影響が一番大きいと言えど、オーストラリア人やアメリカ人、そして英語が第二言語の国の人も大勢暮らしているので、それはそれは面白い香港英語が出来上がっていると感じる。
英語でも香港に来てからは本当に多くのオーストラリア英語、イギリス英語を学んだが、その紹介はまた別の機会に。