さて。

改めて気付いてしまったのですが、多分、人生の中で水辺のない場所を旅行するのは、多分はじめてのような気がするのです。

生まれ育った北海道にも、東京にも、ボストンにも、ロンドンにも、パリにも、ロサンゼルスにも、去年行ったダブリンにも、どこにでもここでも、海や、川や、湖や、池でもいい。

水辺があった。

ある程度旅をし慣れると、一度、ただ闇雲に街を歩いてみる、もしくは運転してみる。

そうすると、大体街のつくりが見えてくる。

東に突っ切ると港があったり、街の真ん中に大きな川が流れていてそれを南北、又は東西に分けていたり、水辺のある地形というのはある程度それを把握するための指針となってくる。


ボストンで昨夜、「バケーショーン開始!!」なんて浮かれてスーパーで安い寿司を買ってきてビールを飲み、洗濯機を回して、訪れる都市の地図やらゲイバーリストやらをプリントアウトして、荷造りをしたりしたら結局2時間30分しか寝ることが出来なくて、最悪気分でアパートを出た。

サウスウエスト航空ボストン-ダラス便は、一度セントルイスでストップオーバー。

飛行機のチェンジはないので、一度セントルイスで着陸、離陸してもそのまま乗っていればテキサスまで連れて行ってくれる。

いつボストンを離陸したのか気付かないほどの深い睡眠だったんだけれど、いきなり、がががががががとすごい音がして飛び起きた。

窓を開けてみるとまだ雲の上。

そのなかでのものすごい振動。

はい、死ぬかと思いました。

でもよくよく目を凝らしてみると、実はそれは雲の上ではなくて吹雪で外が真っ白に染まったセントルイス空港。

っていうか、サウスウエスト、よくこの天候で飛ばしてくれたわね…。

ここで飛行機キャンセルまでを覚悟したんだけど、普通に乗客の入れ替えをしてゲートアウト。

大雪で滑走路がどこなのかわからないうちにセントルイスを離陸しました。

いや、っていうか、これこそ、死ぬかと思いました。


セントルイス大雪の為、それでも1時間遅延してダラス到着。

トータルフライト5時間30分だから、ボストンからだとアイルランドよりかなり遠いということに愕然とする。

飛行機から降りて颯爽とバッゲージクレームに向かう途中、いるいる、カウボーイハットをかぶったジェントルメン。

にやにやしながら観察。

外に出てタバコをふかしていると、ヒューストンの大学生が話しかけてきて、それこそダーティーブロンドブルーアイズテキサン。

もうセクシーなテキサスアクセントで屈託なくにこにこと話しかけるこの青年のバックに今すぐ突き入れたい衝動に駆られるも、なんとかおさえる。

訛りがすごくて言ってることは60%くらいしか理解できないけれど…、でも一晩中ベッドで話しかけていて欲しい。


レンタカー会社のおっさんの親切度は度を越していて、こっちは腹減ってんのにホテルまで電話して周りに交通規制がないかを確かめて行き方をきいてくれたり、お勧めのアトラクションやら美術館やら、ついでに彼の昔の日本人やらボストンに住んでいた人やらの話も織り交ぜ、後ろに並ぶ人々を次から次へとオフィスに向かうシャトルに乗っけながら延々と1時間ほど語り倒し、ごっそりと地図もくれた。

さて。

レンタカー会社に車をピックアップに行くとまたもやずらりとブロンドブルーアイズのテキサス好青年たちがおで迎えし、にこにことボトルの水を勧めたり、保険を勧めたり。

もうここで廻されたい。

黒人イケメン青年も負けずと車を予約していたより一ランクアップグレードしてくれたりするものだから、もう彼もまざっていいやっていう気分。

トヨタのカムリシルバー(ここからはこの車両を角田の小説より「ネモ号」と呼ぶ)を選んで、いざ出発。


路上に出ると、ここがボストンではないというのがすぐに分かる。

景色は変わらない。

アメリカのチェーン店がずらりと並び、なんらかわりのないアメリカの風景。

でも、ひとの運転があまりにものんびりしている。

隙あれば割り込む、信号変わって3秒後にはクラクションという東海岸運転とは明らかに違う。

ゆっくりと、ひとを先に優先させて、のんびりのんびりと運転している。

なのに、都心なのにも関わらず普通道路で6車線片道通行というとんでもない道路がまっすぐと延びている。


ところで、自分は「苦手な食事はなんですか」と聞かれると、インド、メキシコ、タイの3料理をいう。

食べられないわけではない。

嫌いなわけでもないんだと思う。

でも、決して好きではないので、もうどうしようもない危機に面しないとその3料理は口にしない。

空港からホテルに向かう途中どこかいいところはないだろうか、と運転するもなんとこの街、マクドナルドとメキシコ料理屋しかないことに気付き始める。

「あ、メキシコはパス、これはパス、これもなぁ。」

なんて言ってると全く食事ができない。

結局30分運転し、食事のできないまま地図上ホテルの近くまできた。


ところが、ここで冒頭の話。

ホテルの近くにいるということはわかるんだけれど、水辺、山などの目印がないので自分が東西南北どっち方面に向かって走っているのか全く検討がつかない。

しかも車線が多すぎるので右折、左折するための車線変更が全然追いつかない。

更にアメリカ田舎名物、巨大な高速道路にかならず道は通じているため、少しでも迷うと乗りたくもない高速道路にのってしまってわけのわからないところまで連れて行かれてしまう。

行っては戻り、行っては戻り。

自分は毎回の海外旅行かならず最初の街で迷うんだけれど、今回なんと延々とホテルを探して2時間運転し続けた。

ぐるぐるぐるぐると、途中あまりにもおなかが好いていらいらして仕方なくメキシコ料理屋でタコスとビールを飲んで、そこのバーテンの兄ちゃんから行き方を訊いたらあっけなく10分で着いた。


水辺がないところだという不便さは、更に続く。

チェックインの後、時間つぶしでダウンタウンを運転してみた。

ケネディが暗殺されたビルや、街角のカウボーイストア、若者のクラブ地区に、地元のパブ。

周りの風景や変わったものに目をとられて、テキサスにいると浮かれて鼻歌を歌ったら最後、自分がどっち方向に運転しているのか分からなくなってしまう。

いつもの旅行はちょっと運転していると川にぶつかったり、海にでてしまったり、逆に海が右に見えたり、いくら走っても見えないときは逆方面に走っているということだ。

でも、この街には、何も目印がない。

ホテルの冷蔵庫に置くビール、シャンプーを買う薬局を探すのにまた2時間も運転した。


そんなわけで、へとへとです。

でも、「だから今夜はもう寝ようと思います。」なんていう自分では、ありません。

うふふ。

だって、木曜の夜、しかもテキサスダラスだもの!


今夜はホテルまでイケメンが一時間後に迎えに来てくれる予定となってます。

すっぽかされたら自分で運転して、ご飯食べて、カウボーイ探してきます。

運転の可能性を考えてビール飲みすぎれないところが、つらい。

とりあえず、デートの準備です。

ああ、楽しみ…。

初日、まだまだ続く…。