人工知能(AI)と並び注目すべき最新技術はブロックチェーンだ。

ビットコインという仮想通貨の基本技術であるため、日本では、金融とIT(情報技術)が融合した「フィンテック」の話と捉える人もいるが、はるかに革命的な可能性を秘める。

本書は、デジタル社会論の世界的権威らが、企業経営や経済社会、国家に及ぼす影響を幅広く論じたものだ。


インターネットのおかげで、消費者と生産者が直接やり取りし、様々な経済取引から中間業者の介在が不要になった。今では生産者が提供するプラットフォームの下で消費者が新たな付加価値を生み出し、消費者と生産者が混然一体となるプロシューマーの時代が訪れつつある。


 ただ、経済取引に付随するお金のやり取りは、ネットバンキングを使う場合も、銀行がいまだに介在する。写真や書類を電子メールで直接送るように、お金をネットで相手に渡すのは無理で、送金を証明する銀行の仲介を要する。

 お金に限らず、銀行や国家の介在なしに所有権の移転をネット上で当事者間だけで可能にする技術がブロックチェーンだ。改ざん不可能な公開された台帳の上で、資産が取引される。匿名性を担保したまま、ネット上の分散されたデジタル情報を通じてやり取りできるから、何と国家も捕捉できない。


 今のところコストが大きいため、現実的とはいえないが、将来、銀行が不要になるどころか、政府や中央銀行の通貨発行権を揺るがすことになりかねない。

インターネットが所有権移転の領域にまで関わることで、国家という概念そのものが変容する可能性を予感させる。