昼は実習が続く。
実習は少人数制で、一人ずつサンプルがあり、講義と平行して進んでいく。
基本的に、英語で会話が進み、ときおり日本語で補足(蛇足)する。
今日は、はやめに終わったので、自分のデスクに帰る前に、お茶をしていくことにした。
実習は、気力と集中力を知らず知らずのうちに消耗するから。
タイトルの二人と私で、おやつタイム。
ケニア出身の邦人(以降、Kさん)は、クリームパンを、
ムスリムのインドネシア人(以降、Iさん)は、軽食(味噌汁含む)を、
私は、チョコボールを それぞれはみながら
英語で会話が進む。
Kさん 「私はキリスト教徒。日本にはとても変。宗教がない。ないのに、結婚式は教会で挙げ、クリスマスを祝い、元旦には神社に参詣し、死んだらお経をあげる。信じられない。」
Iさん 「そう。わたしはムスリム。イスラム教とキリスト教はもとが同じであり、経典のストーリーは共通点が多い。」
と宗教の話があり、さまざまな人物の名前があがる。キリスト教のだれだれは、イスラム教でだれそれだ、というような。
世界的には、宗教はあって当たり前で、それを前提に話が進むことも多いのではなかろうか?
わたしは、彼らの会話を聞いていて、宗教は言葉のようなものではないかと感じた。
つまり、生まれたときから特に意識することなくあり、あるのが当然という。でも日本はそういう素地がないため、
宗教的なものには偏執的な印象を感じることがある。おそらくわたしだけではないだろう。
英語が世界語として活用され、必須になってきているように、なんらかの宗教を世界ツールとして備えておくのは、どうだろうか?
もちろん、世界に通じる自己が確立されていれば、宗に頼らずとも生活できるとは思うが。
ともかく、宗教の話は聞きながら、ふむふむうなずいて、流すこともできたが、
次に、戦争の話になった。ここに来ると、二人とも遠慮なく自由な意見を戦わせていた。
Kさん「アメリカはひどい。世界の戦争のほとんどはアメリカが背後で操って、それで武器売却で儲けている。」
Iさん「そう。そのとおり。インドネシアでもティモールで戦争がある。アフリカもそうでしょ?」
Kさん「そう。内戦がたくさんあって、アメリカの爆弾が使われて、多くの人がなくなっていると思うと本当に腹が立つ。」
Iさん「でも、中国も強い。どんどん成長している。インドネシアの50%が中国人だ。」
Kさん「そう、中国はすごく強い。もう50年もしないうちに、世界一の軍を持つようになる。中国人は貧困を知っていて、経済が上手で、どこでもコミュニティを作って、生き残っていける。日本はダメ。」
Iさん「そう。日本はもう中国に侵略されるでしょう。」
Kさん「中国人は日本を憎んでいる。だから、近いうちに侵略するはず。そのときには、アメリカは中国と手を組むから、日本はあっという間に侵略される。」
Iさん「明らかだ。」
この見解が現時点では、現実的ではないことは私も承知している。
しかし、ふつふつ沸き起こる怒りを禁じえなかったのは、彼らが、日本に寄食していながら、きたるべく日本の惨状を傍観者として眺めていたからではない。
私のいかりは多分、私自身に向けられている。
わたしは、戦争はどんな理由があっても正当化されるべきものではなく、圧倒的な愚であり、これは世界のコンセンサスだと考えていた。しかし、実際は、いまだに戦争が起こることが当然であるという意識があること。これは、日本にいては、信じられないことだと思う。世界では、身の回りで爆弾で死ぬ人が出るのは、非日常ではないのだ。つまり、私の中の平和感など、何の根拠もない、つかの間の産物であることを感じた。彼らは、戦争を体験しており、それは今も大なり、小なり続いている。そういうことも知らない自分。
また、外から見ている人には、今の日本がとても危うく見えている。在日米軍の拒否運動が起こっている現状。日本自体は軍を持っていない現状。一方で中国は世界に進出し、金を稼ぎ、経済をつかみ、軍を膨張させている。中国は日本を深く恨んでいる。日本も中国にいい印象を持っていない。これは、冷静になってみると、大人同士の牽制(アメリカと中国)で保たれているのが、赤ちゃんの平和(日本)であり、今までは赤ちゃんよりの大人が勢いがあったからよかった。
しかし、これからは日本嫌いの大人の勢力がすさまじく、日本びいきの大人も、大人らしい外交感覚で、日本から一歩引くであろう。赤子の手をひねるとはこのことで、戦争という形にすらならないと思われる。圧倒的な力の差で侵略されるでしょう。力がモノもいうのは、どこの世界でも同じである。力のない正義など、弱者の戯言になってしまう。そのことにいまさら気づいた自分。
世界はどうする?力のある方が、歴史を正当化するのだから、中国による侵略を順、日本を逆とするでしょう。あらゆる手段を用いて反抗すること。その志を良しとしたいが、中国の力強い統制を見てください。そして第三者からは、チベットの現状は日本の未来であると思われているのです。
ここにおいてどうするか?
Kさん「だから、素敵な中国人と結婚しなさい。そうすれば、助けてもらえる。」
Iさん「それしかないね。」
わたしの一番の怒りは、これに対し、何も言い返せなかったことだ。今も、言い返す言葉が思いつかない。
私は、考えてみようと思った。自分なりの答えを。
座談の狂言ではあるが、かといって流せるわけもなく、
実習よりも何よりも、疲労感と無力感を感じた1時間であった。