自動車産業 | これからの「地理」の授業をはじめよう

これからの「地理」の授業をはじめよう

今までとはひと味違う「地理」の授業を展開します!

中国の自動車産業

経済成長による需要を背景に,1990年代以降,日本や欧米資本との合弁企業を中心に自動車生産が急増した。工場は,経済発展の著しい東部沿岸地域に多く,中国の自動車生産台数は2,450万台(2015年)となり,2009年以降日本を抜いて世界1位の地位を保っている。

 

韓国の自動車工業(ウルサン)

現代(ヒュンダイ)財閥から分離した自動車企業の工場である。韓国の自動車生産台数は456万台で世界5位(2015年),乗用車輸出台数はフランス,ドイツ,日本に次ぐ世界4位(2014年)である。

 

タイの鉱工業

「アジアのデトロイト」を目指したタイは,税の優遇措置やインフラ整備などを進め,各地に家電や自動車,電子機器などの製造業が多く進出している。タイにとって日本は最大の投資国で,日産自動車は「マーチ」の生産拠点をタイに移し,ASEAN域内の自由貿易の利点を活かした分業生産を行なっている。2011年には,集中豪雨により広範囲で洪水が発生し,部品を製造する工場が被災してサプライチェーン(供給連鎖)が途切れ,関連する多くの企業の製造ラインがストップした。

 

インドの低価格車

インドのタタ・モーターズが2008年に発表した10万ルピー(当時のレートで約28万円)車「ナノ」は,排気量約620ccで,エアコンやカーステレオがなく,基本性能のみを追求した低価格車である。コストダウンを図るため,プラスチックが大量に使用されている。インドで最も安い車というイメージは人々に敬遠され売れ悪かった悪かったため,2015年に発売された2代目「ナノ」は,19万9千ルピーの価格設定となった。

 

南アフリカ・イーストロンドンの自動車生産

資源輸出に依存していた南アフリカ共和国は,工業化に力を入れ,イーストロンドンに外国自動車企業が進出した。輸出品目の上位に自動車が登場し,ダイムラー・クライスラーの工場で製造されるメルセデスベンツの高級車は,主に日本へ輸出されている。

 

ヨーロッパの自動車産業の生産拠点

1990年代前半の東欧民主化とEUの市場統合以降,低賃金労働者を求めて,南欧・東欧諸国に進出する企業が増えている。特に自動車工業では国際分業体制が確立され,ドイツ車のほとんどの部品は国外で製造されている。フォルクスワーゲングループは周辺諸国の自動車会社を子会社することにより,人件費を圧縮して競争力を強化した。さらに,極めて高額のモデルと従来より低価格帯のモデルをそろえ,市場の拡大を図っている。

 

ハンガリーの自動車工場

EUの東欧への拡大で,ドイツなどの大手メーカーの工場移転が,社会資本の整備が進み労働コストが安く関税のかからない東欧へと進んでいる。部品の製造や組立てはほぼ東欧で行われ,EU域内での国際分業体制が形成されている。

 

自動車産業の成長(三菱自動車とロシア企業の合弁会社)

外資誘致政策により,サンクトペテルブルクやモスクワ,ウラジオストクなどの周辺に,日本,韓国,アメリカ合衆国などの自動車メーカーが進出している。国内の自動車販売台数も一時期急速にのびたが,近年は不安定な対外政治や,それに起因する通貨(ルーブル)の下落などで生産が落ち込んでおり,撤退する企業も現れている。

 

アメリカ合衆国の伝統的工業地域

デトロイトは世界最大の自動車工業都市で,「ビッグ3」の本拠地が立地している。カナダとの国境を流れるデトロイト川対岸は,カナダ最大の自動車工業都市のウィンザーで双子都市となっている。ダウンタウンの失業の増加,治安の悪化対策として都心の摩天楼建設による再開発が進行している。

 

ホンダの自動車組み立て工場

メキシコはアメリカ合衆国との国境に設定したマキラドーラという保税地区のもとで工業が発展した。北米自由貿易協定(NAFTA)発足後はアメリカ合衆国向けの工場が多く進出しており,工場で生産される自動車も,多くが北米に輸出されている。