イザイホーは、沖縄県南城市にある久高島で12年に一度 午(うま)年の旧暦1115日の満月の日から5日間にわたって催される神女の誕生儀礼 



久高島で生まれ育ったナンチュ(成り人)とよばれる30歳(数え年)から41歳までの女が、五日間、村の祭場の後ろにあるイザイ山の仮小屋にこもり、前回の祭り以降に30歳以上になった女性を新たに神女とする祭りで

先輩の神女に導かれつつ森に入るなどして神女としての資格を得る。



初日の夕刻,ナンチュの新入りの神女が,唱え詞(となえことば)をしながら祭場の拝殿 7度回り,「七つ橋」と呼ばれる仮設の橋を渡って森に入る儀式があるが,この際に橋から落ちる者は日頃の素行が悪く,神女の資格がないとされる。最終日には,神女全員が男性と綱引きをして東方の海上にあるとされる異郷,ニライカナイの神を迎えてまつり,最終的に神女としての資格を得る。




こうして神女となった女性たちは神がかりして祖霊と一体となり、祈りの力で海に出ている男たちを守護し続けてきた。島には一年に30もの祭祀があり、神女たちの日々の暮らしそのものが祈りと密接に繋がっていた。そのおかげで久高島の男たちの乗っている船は一隻も沈まなかったという。


久高島は、琉球の創世神アマミキヨが天から最初に降りてきて、国づくりを始めた場所とされており、沖縄の中でも最も神聖な島と信じられてきました。そのため久高島にはノロと呼ばれる最高位の巫女を中心とした神女組織が、琉球王国時代より継承されてきました。そして久高島で生まれ育った女性は神女になり、祭祀を執り行う役割を与えられてきました。


本来は、神の依代(よりしろ)や神座(かみくら)を中心として、その周囲を繰り返し回りながら神がかりする、イザイホーは、今もなお舞の原形態をとどめており、また、小児遊戯の〈かごめかごめ〉は,神がかりの舞がぼやけて残った姿だといわれている。舞はこのような性格のものであったから、それが芸能化されてからも声聞師(しようもじ)などの呪術芸能者が担当した。



久高島には様々なタブーも存在します。特にイザイホーでも重要な祭祀が行われる場所の一つであるフボー御嶽は、島の最大の聖域であり、外部者の立ち入りを厳しく禁じています。また口に出さなくても島の人々が嫌っている行動や信仰上の禁忌も多くあります。


戦後、男たちは就職口を求めて島から流出し、女たちも島の外で働き始めた。島の人口は200人前後に激減し、神女たちも高齢化した。いまでは新しく神女となる資格のある女性が一人もいなくなり、1990年、2002年の午年のイザイホーはやむなく中止され、1978年を最後に、幻の儀礼となっている。




  • 夕神遊び1115日)

巫女となる女性ナンチュの加盟儀式。夕刻、祭場の御殿庭(うどんみや)に集まり、ナンチュは神アシャゲと呼ばれる拝殿を「エーファイ。エーファイ」と連呼しながら七回旋回する。そのあと拝殿に先輩の巫女とともに神歌(テイルル)を歌い、奥の森(イザイ)に入る。ナンチュは洗い髪のままで白衣をまとう。巫女たちは髪を巻き白鉢巻に祭礼用の白大衣(ウフジン)を身につける。拝殿前には七つ橋という橋があり、躓いてはならないタブーがある。ここで躓いたり橋から落ちたりする女性は浮気など何らかの悪いことをしたためにそうなるものとされ、そのような女性は神女にはなれないとされる。

  • カシラタレ遊び1116日)

ナンチュが昨日のままの洗い髪「髪垂れ」(カシラタレ)で三重の円陣を組み踊る。

  • 花差し遊び1117日)

ナンチュは先輩の巫女(ノロ・掟神)に引率され、巻き髪、鉢巻き、ウフジンの巫女の扮装になる。イザイ花と呼ばれる花飾りをつける。テイルル(祝詞・神歌)を唱えながら旋回する。ここで、ナンチュは先輩の巫女と同等になる。

  • 朱づけ遊び

外間根人と呼ばれる巫女の中心外間家の男性主人が巫女、ナンチュの額、両頬に朱印を付ける。その後、ノロがナンチュの額と頬に団子の粉を付け、正式に巫女の証明をする。その後、再び花差し遊びをする。

  • アリクヤーの綱引き1118日)

巫女全員が男性と綱引きをする。このときニカイカナイからの神の降誕を歌う。巫女は「ホーノー」男たちは「エーファイ」とそれぞれ掛け声を掛け合い、両手で縄をつかみ舟を漕ぐしぐさをする。

  • 御家回い(グキマーイ)

ノロは森の中にいるナンチュを迎えに行き、ナンチュは家に帰る。それぞれの自宅では家族がナンチュを上座に座らせ、祝福する。ここで、ナンチュは頭に緑の葉の冠をかぶり神と同等になった巫女の変身を表す。

  • 桶回い(ウケマーイ)

再び巫女一同集合し桶に入った神酒をいただいて、自然と神を賛美する歌を歌う。優雅な踊りの後、東方に扇を掲げてニライの神を拝礼。神酒をみんなで飲む。ナンチュは葉の冠にクバの葉の扇、先輩の巫女は太陽と鳳凰、月と牡丹を描いた色鮮やかな扇を持つ。それぞれ扇を使っての舞は実に美しい。

そのあとは打ち上げの宴会。カチャーシーとよばれる踊りとなる。