may とくれば、~かも知れない、とか ~してもよい、と訳しますね。

就業規則の中で、「会社は~することがある。」とか、「~することができる。」という表現が使われることがあります。これは、「会社は~します」という約束をするのではなく、その行為をするしないは会社の裁量に任されているという場合に使われます。

例えば、非常災害時の会社の対応について、就業規則で下のように決めていることが多いですね。



第5条 非常災害時の特例
会社は、事故の発生、自然災害、その他けることができない事由により、特別な必要がある場合には、全社員に対し、第X条に定める勤務時間を超えて、または休日に労働を命じることがある。


Article 5 Overtime and holiday work in emergency disaster
The Company may require all employees to work beyond the working hours stipulated in the article X, or on holidays when special necessity arises due to unavoidable causes such as an accident or a natural disaster.




この条文は、会社は非常災害時には、社員に特別の労働を命じることがあるかも知れないので、その時は命令に従って、働かなければならないという意味です。

「命じることがある。」を"may require" と訳しました。"may order"としても良いかも知れません。

stipulateという単語は、規定する、明記するというときに使いますので、英文の就業規則の中ではよく使われます。上の英文でも、"stipulated in the article X" と書かれていますが、「第X条に定める」に対応しています。

"due to"という単語もよく使われます。「~のせいで」とか「~により」という意味で使われることが多いです。


「避けることができない」は、文字通り unavoidable (un できない+avoid 避ける)と訳しました。


それではまた

就業規則には、社員に対して、「~してはならない。」と決めているものがあります。
例えば、セクハラ行為は絶対にしてはならない、個人情報は漏洩してはならないといった事柄です。

特に、会社が社員に対して禁止する行為は、社内外に対するリスク発生要因となる行為だけに、法律に違反しない行為でも、会社として禁止したい行為があれば、それは就業規則の中で明確に禁止しておかなければなりません。

特に、文化も生活環境も違う外国で育った人を、日本国内で雇う場合には、日本人の中では良くない行為であっても、彼らの中では、悪いことでも何でもなく日常的に行われている行為だったりします。その行為が行われてしまってから、「それは就業規則に違反する行為だから処分する。」と言っても、会社が周知義務を怠っている場合には、その処分は不当であるということになりかねません。外国語(まずは英語版)の就業規則を作成することは、こうした社内外のリスクを軽減する意味もあるのです。

以下のような禁止行為はどの就業規則にもある条文です。


第4条 秩序の維持
社員は職務上の地位、権限を利用し、金品を受け、または自己の利益を計ってはならない。


私が英訳したのは以下のような英文です。


Article 4 Maintenance of discipline
All employees shall not receive money or any other personal benefit by taking advantage of the position and/or power related to their duties.


~してはならないは、may notを使うこともできますが、may notには、「~できない」という意味もあると言われているので、私はshall notだけを使っています。

あるいは、


No employee shall receive money or any other personal benefit by taking advantage of the position and/or power related to his/her duties.


とする表現方法もあります。

~を利用し、というところは、 take advantage of という表現を使いました。
and/orは、両方またはどちらか1つでも、というときに使います。

his/her dutiesというのは、直訳すれば、彼/彼女の職務となります。男女の区別を付けずに、その人の、と言いたいときに、こうした表現を使うことがあります。

これと似た表現で、he or she(男性女性を特定せずに、ある人が~と言うときに使っているようです)というのがあります。漫然と聞いていると、ひろし、と聞こえるので、びくりします。(特にヒロシさんは)

職務、任務、、職責dutyを使うときは、duties と、複数形にします。


それではまた

就業規則は、会社が決めた社員の働き方に対する決まり事を集めたものです。
したがって、書き方に特徴があり、「~する。」「~しなければならない。」「~してはならない。」等で終わる文章が多くなります。

例えば下のような規程文を就業規則に入れることがあります。

第2条 (選考)
会社は就職希望者の中から選考して、社員を採用する。

ごく普通の日本語の文章ですがこれを英訳するとどうなるでしょうか?
私なりの英訳ですが以下のようになりました。

Article 2 (Screening)
The Company shall employ these applicants who are qualified as the employee of the Company.

ここで、shall という単語が使われています。上記のような日本語を普通に英訳すると、"will "を使いたくなりますが、間違いではありませんが、会社が社員を採用するという意思をはっきりと示すためには、shallを使った方が明確です。法律の条文や売買契約書などでもshallはよく使われています。

英文の規程や契約書を読んで理解したり、作成するときはshallの使い方に慣れることが大切です。

この英訳文に、qualifiedという単語が出てきます。qualifyの過去分詞で、基準を満たした、とか、資格のある等と訳されます。英文の、these applicants以下を直訳すると、「当社の社員としての基準を満たした応募者」となります。

shallはまた、「~しなければならない」という意味にも使います。
must とどちらを使っても良いのですが、私は、どちらかというとmustを「~しなければならない」に使い、shallは「~する」に使うようにしています。例えば下のような条文の場合は、mustを使って英訳しています。

第3条 (規則遵守の義務)
会社及び社員は、共にこの規則を守らなければならない。

Article 3 (Duty of Compliance)
Both the Company and the employee must observe these rules.

shallの代わりにshouldという単語は「~しなければならない」や「~する」に対応する英語として使えないのか調べてみましたが、あまり使われていません。
shouldには「もし、~なら」(もっと砕けた言い方をすれば、あり得ないことが起きてしまったら~)という仮定の意味が込められていて、意味が曖昧になりやすいので避けられているのでしょう。


それではまた