みなさんも経験ありませんか? 駐車場から車を出すのに千円札が必要なのに、一万円札しか持っていない。そういう時はコンビニなどに行って、一万円札で安い商品を買いますよね。本当は両替してもらいたいのですが、レジのところに「両替はいたしません」と書いてあるから、この方法しかありません。でも、一万円札を出してもお店の人は気持ち良くおつりをくれるので、まだ救いがあります。


 これがアメリカの場合、深夜のコンビニなどでこの方法をやろうとすると、結構面倒な話になります。防犯上、レジの中には20ドル札(約2000円)以上のお札や硬貨が入っていません。お店の人は20ドル以上のお札の現金を受け取ると機械の中に入れてしまい、それはレジからは出てこないのです。日本のバスを思い出してください。千円札で支払うと、千円札は機械の中へ消えて、おつりだけ出てきますよね。それと同じです。店員はその機械を開けられません。


 さて、例えば100ドル札(約一万円)で安い商品を買おうとしたらどうなるのか。店員は百ドル札を機械に入れますが、そのおつりが出てくるのは一分間に20ドル以下ずつだけです。だから1ドルのものを100ドル札で買えば、おつりを最低5分間待たなければなりません。100ドル奪うのに5分も待つ必要があるとしたら、泥棒は商売になりませんよね。素晴らしい防犯対策ですが、利用客には不便です。


 さて、例によって本題が後回しになりましたが、日本中の店に行くと「両替はいたしません」の下に英語で「No Exchange!」と書いてありますね。ほぼ例外なく、どこの店でもこの表現を用いています。しかしこれは、大変な誤解を招く表現です。


 余談になりますが、まずはそのビックリマークをやめてもらいたい。サービスをしないことを強調しているので、大変失礼です。ビックリマークのニュアンスを日本語に直すと「よ」という強調の助詞になります。日本語で「両替はしませんよ」と書いてあれば、お客様は決していい気持になりませんよね。


 また話が横道にそれました。そもそも「Exchange」とは「両替」ではなく「為替」(外国為替)という意味で、一つの通貨を他の通貨と交換するときに用いられます。だから、この表現だと、「この店の商品はドル(あるいはその他の外国の通貨)では買えませんよ」という意味にしかなりません。表現が間違っているので、外国人のお客様が誤解するのは当り前で、長くやっている店員であれば、「両替をして欲しい」という外国人とややこしい会話をした経験があるでしょう。


 「両替はいたしません」であれば、正しくは「We Cannot Make Change」になります。「両替」は「change」であり、「両替する」は「make change」です。ちなみに「change」にはおつりという意味もあります。両替をしてもらいたい時、例えば「20ドル札をくずしていただけますか?」であれば、

「Can I get change for a 20 dollar bill?」

「Can you make change for a 20 dollar bill?」

「Can I change a 20 dollar bill?」

などと表現します。コンビニでは使えないとしても、銀行では使える表現です。


 国際親善のためにも、一日でも早く、日本中のお店にこの間違った表示を変えてもらいたいですヨ!