バレンタインの土曜日。
インフルエンザ療養中の娘。
二日前から解熱していて
何故家にいないといけないのかわからないくらい元気。
すると始まる。
「熱ないしさ……」
「ちょっとだけなら行けるんじゃない?」
「玄関で渡すだけとか……」
「外出なければいいんでしょ?」
いや、出てるよね
母は心の中で即ツッコミ。
「ダメなのはわかってるけどさぁ」
と前置きしながら、延々と交渉してくる。
その“ダメってわかってるけど理論”は
一番ややこしいやつだ。
行きたいよね。
交換したかったよね。
準備してたもんね。
でも。
インフルエンザ
自宅待機と言われていて、とにかく
他の人に広げたらいけない。
母は心を鬼にして言う。
「来年、倍でいこう」
娘、布団に顔をうずめて
「はあああ……」と深いため息。
その数時間後。
ピンポーン。
「ポストに入れておくね!」
お友達の友チョコ。
さっきまで“渡しに行ける説”を
唱えていた人が、
今度は目をキラキラさせて
「優しすぎる……」とつぶやいている。
予定どおりじゃないバレンタイン。
でも。
我慢した日も、
ちゃんと報われることがある。
熱がなくても、
外に出ないという選択をした娘。
ちょっとだけ、大人になった土曜日。
来年はきっと、
堂々と渡しに行こう。

