日曜日です。
塾の模試から帰ってきた娘は、
早速分析をしていた。
「算数、あれ最後までやりたかったな」
「次は時間配分考えたほうがいいかも」
私はまだ、
「おかえり」とも言っていない。
この子は昔から、
自分の中にエンジンを持っている。
誰かに言われなくても、
勝手に回し始めるタイプだ。
私は、追い立てる母ではない。
「もっとやりなさい」とも言わないし、
「今が勝負どき」とも思っていない。
だから時々、
この子には物足りないのかもしれない。
頑張った話をしても、
私が拍手しないから。
模試の結果は、
私より先に、この子が見る。
点数を見て、
少し黙って、
もう一度見直す。
私はその横で、
夕飯のことを考えている。
同じ部屋にいるのに、
見ている未来の高さが違う。
この子は、
上に行きたい気持ちを隠さない。
「〇〇ちゃんに負けたくない」
「もっとできる気がする」
それは、たぶん本心だ。
私はそのたびに、
「そうなんだ」とだけ言う。
止めていない。
でも、煽ってもいない。
もしかしたら、
この子は私より先に走っている。
でも私は、
走らないことを選んでいる。
転びそうなときに、
すぐ戻れる場所でいるために。
夜、寝る前。
女の子がぽつっと言う。
「次も、受けたい」
私は一瞬考えてから、
こう答えた。
「いいよ。
でも今日は、もう終わりにしよう」
娘は、少しだけ不満そうで、
でも、ちゃんと電気を消した。
追い立てていないのに、
あの子は先に走っている。
私は何だか置いていかれている?
でもこの距離が、
今の私たちには、ちょうどいい。
