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いつからだろう。
その瞬間に、決まって手を差し出すようになったのは。
旅に出る前から?
それとも旅に出た後?
いつからだろう。
その瞬間に、その手を差し出す事に、悲しみを感じるようになったのは。
旅に出る前から?
それとも旅に出た後?
わからない。
そんなもの、覚えちゃいない。
でもいつだって僕は、その瞬間に、その場所で、自らの右手を差し出してきたのさ。
“別れ”
それは暖かさを帯びた悲しみの別れ。
それは太陽が沈む前の色のような別れ。
そう、僕達の前にも、とうとう別々の道が顔を出したのだ。
多くの旅人がその場所に辿りつくように、僕達もまた、その場所に立っている。
それは運命であり、必然でもある。
人が意思を持っている以上、避ける事の出来ない、分岐点なのだ。
長らく旅を続けてきた2人の仲間との別れは、
辛い。
僕は今まで、多くの別れを経験してきた。
そしてこの1年間は、別れの連続だった。
その多くの別れの瞬間、いつだって僕は右の掌をそっと出してきたんだ。
そしていつも笑顔だった。
何故僕は、辛いのを隠して、笑顔を見せるのだろう。
何故僕は、悲しみをごまかして、笑うのだろう。
違うよ。
ごまかしてるんじゃないんだ。
その時は本当に、心の底から笑顔になってるんだ。
何故って?
それがきっと、最高の出会いだったから。
その人達と一緒だったその時間がきっと、
自分にとってすっごくすごく、大切な時間だったから。
いつかきっと、また再会出来るって知っているから。
だからきっと、笑って分かれるんだ。
別々の道をゆくんだ。
別れた後、寂しくなるのを知ってるのに、その時ばかりは笑うんだ。
いつものように僕は右手を差し出す。
それに答えるように、仲間も右手を返す。
いつからだろう。
笑顔と悲しみが、紙一重だって気づいたのは。
やっぱり寂しいよ、別れは。
いつかきっと、
この分岐点の先が、
僕達が進む別々の道が、
未来、再び交わる事を願う。
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