バオバブの木を、知っていますか。
ここムルンダヴァでは、
そのバオバブの木が観光スポットとなっている。
世界中の旅行者がこの地を訪れる理由は、
バオバブの木を見る為・・・と言っても過言ではない。
かくいう僕も、
車検が完全に切れたオンボロバスで、
15時間も悪路に揺られ、
その観光名所に思いを馳せながら、
この場所に来た。
動物達と触れ合うという目的を除けば、
一番楽しみにしていた場所だ。
しかし、である。
ダメダメな僕は、
何の情報もなしにマダガスカルに来てしまった。
バオバブの木の情報は皆無というわけだ。
だから、
蟻がたくさん浮いているスープを飲み干した後(←あっ、この話は前回を参照)
、
ソニに声をかけられた事は、
僕にとっては不幸中の幸いといえるだろう。
ソニは地元のガイドだった。
こいつがまた営業熱心で、
1日3回は僕の泊まっている宿まで顔を出し、
あれやこれやとツアー提案をしてくる。
そこで僕がバオバブの夕日を見たいという事を伝えると、
45000アリで、タクシーをチャーターすればどうだと、提案してきた。
この値段は妥当だった。
ただ、その場で即決という選択をとった事が、
これから始まる大きな不幸と小さな不幸の、
後者の方の第一歩だったのである。
バオバブの夕日を見終えた後、ソニは言った。
『夕日だと、人がいっぱいで美しさが損なわれる。
最初に言っただろう?朝日にすれば良いって。』
『・・・・・!!』
迂闊だった。
最初に声をかけて来た時、ソニは夕日ではなく、朝日を薦めていたというのだ。
そういう話をした事を、無論僕は覚えていない。
聞いてなかったのだ。
45000アリで夕日が見れるという話に浮かてしまったからかもしれない。
いや、僕の英語力の問題か・・・。
どちらにせよ、結果的にソニの忠告?を無視してしまったのだ。
ソニもソニだ。
夕日を見終えた後なんだから、
朝日の事は黙っててくれれば良かったのだ。(←いや、それが商売か?)
僕の性格上、
そんな話を聞いてしまったら、
是が非でも朝日を見ないわけにはいかない。
渋々45000アリを追加して、
翌日朝日を見に行った。
異変に気づいたのは、その後だ。
あれを引き起こしてしまった時の、
誰もが感じる症状が、
僕の身体を襲った。
頭を少し動かすと、
ズキンと響く。
膝の関節が、
痛い。
・・・・・!!
風邪だ!!
・・・原因はなんだ・・・??
・・・食事・・・か。
ちくしょう。
この風邪はマダガスカル旅行にとって致命的だった。
ビザの関係上、滞在期間を延ばすわけにはいかない。
かといって、高熱状態で観光をしたくはない。
どうすりゃいい??
休むか、移動か、観光か。
その時僕は一つの選択をした。
その選択は正しかった。
しかし。
その次の選択が、間違っていた。
不幸への階段を、
少しづつ降りていく自分が、
そこにはいた。
マダガスカルの悲劇・続く。