『怪我をした鳩』 | 新・旅亀の世界一周冒険活劇

新・旅亀の世界一周冒険活劇

旅亀の冒険・最終章。流れる雲のようにフワフワと。明日の行き先は明日決める。そんな旅をしよう。

良く晴れた午後。

僕達は朝食兼昼食を一緒に済ませた後、別々の行動をとった。
りょうくんはリマをまだ観光しきれていないという理由で街へ、
僕は夕べの寝不足を理由に、部屋に閉じこもる事にした。

適当にネットをしてから眠りにつこうと思っていたのだが、頭の中は変に活性化されていている。

『これじゃあ眠れないな・・・街へ繰り出そうか』

りょうくんが戻ってくるまで少し待とうか迷ったが、彼が部屋を出てから既に2時間。
一向に帰ってくる気配はない。
それに、モタモタしてると久しぶりに晴れたリマの街を満喫出来なくなる。

部屋に鍵をかけ、レセプションに預けた。
そして、僕はタクシーのクラクションが鳴り響く、ホテル前の通りに出た(ほんとに、うるさい)。

『そっか、俺教会を全然見てないや』

ふとそういう考えになり、サンフランシスコ教会が建っている通りまで歩いた。
宿から徒歩1分の距離だ。
教会の門をくぐると、露天商が立ち並び(教会の敷地内で商売していいのか)、
教会へ続く階段には、暇を持て余している若者や老人がいた。
その内の何人かは、庭?に集まった鳩に餌をやっている。
おそらく露天商で購入したものだろう。良く見ると、鳩の餌ではなく、ポテチ系のお菓子だ。

時刻は午後4時。
遠くから照りつける夕日の光と教会、そして無数の鳩たち。
その光景を見ていると、なんだかすごく穏やかな気持ちになった。

教会の庭を少し歩いて、僕も鳩たちに近づいた。
もちろん餌など持っていないので、彼ら(彼女?)はあわてて逃げる。
人間でいうと、鬼にでも追われている気持ちになるのだろうか。
だとしたら餌を持っている人間には尻尾(ないのだが)を振って近づくのだから、なんとも滑稽だ。
その光景をおかしく思いながら、僕は足を止めた。
すぐ横には銅像が建っている。
その銅像を一瞥してから、またすぐに足元の鳩達に目を戻した。
そこでやっと、異変に気づいた。

―目の前にいる鳩の様子がおかしい―

片足を体の中に隠し、羽をバタバタさせているではないか。

―怪我してるんだ―

僕はすぐにそう察知した。が、この鳩?をどうしていいかわからない。
すぐ頭を過ぎったのは、変な細菌を持っているのではないかという不安だった。
その事が『鳩の手当て』というアクションを躊躇させている。

『どうしよう』

―――餌。
そうだ、餌をやろう。

そう思いつくや否や、僕は露天商が並ぶ方向へくるりと転換し、5歩進んだ。
そこまで進んで、自分でもなぜか分からないが、ふと鳩の様子が気になった。
後で考えるとそこで気になったのは、予感というものだろうか。
僕は身体を捻るようにして、振り返った。そして・・・
目の前で起きている事実を見て、目を疑った。

その怪我をしている鳩が、別の鳩に踏みつけられているではないか!!無造作に。ぐちゃぐちゃと。
(ほんと、あの光景は忘れられません。何か異世界にいる感覚が襲ってきます。また表現おかしいですね笑)
しかも周りには別の鳩が数羽群がっている!!
 
―いじめられているのか―?

『この!何やってんねん!!』

僕はとっさに言葉を発し(しかも日本語で)、その場所へ駆け寄った!!
周りの鳩も、踏みつけていた鳩もすぐさま飛び散っていった。
怪我をした鳩は勿論身動きが取れない。
かろうじて傷ついた身体を動かし、僕の足元へやってくる。
助けを求めているんだ。
必死に生きようとしているんだ。

―なんて可愛そうな鳥なんだ―

餌を買いに行くと、さっきみたいに他の鳩がこの子を襲う。
ほっとけない。
かといって、僕には『手当て』を行う勇気がない。
あったとしても、どこに連れて行って、どういう風に処置を行うか検討もつかない。
八方塞だ。

『どうしよう』

と、丁度その時、教会の門からペルー人のおばちゃん二人がやってきた。
カラフルなストライプのスカーフを肩から羽織っている。
僕の様子がおかしい事に気づいたのか、一直線にこちらに近づいてくる。

おばちゃん
『どうしたんだい!?』

唐突にそのように聞いてきた。(スペイン語は解らないが、そういう風に言ったと思う)

僕は鳩を指差して、必死にジェスチャーで伝える。

結果、おばちゃんもその鳩が怪我をしている事を察知した。

そして次の瞬間・・・

何の躊躇いもなしに、鳩をがっしり掴んだ!!

旅亀
『!!あっ・・・!!』

思わず声が出た。

おばちゃんはニッコリと笑い、僕にウィンクした。

『私に任せときな!!』

そう言ってるようだった。

おばちゃんは鳩を抱えて今度は裏手側の門を出て行く。
僕はその後ろ姿を見送った。
そして、人のやさしさは、万国共通だと思った。

いつから、自分を守るようになったんだろう。
いつから、その一歩を踏み出せなくなったんだろう。
そっと手を差し伸べて、抱き抱える事が出来た筈なのに。
また次があればという考え方は、良くないのは分かってる。
だけど、今度困っているモノがいれば――

――――今度は手を差し伸べよう。
そう強く誓った。




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