　露しげき葎の宿にいにしへの

　　　秋に変わらぬ虫の声かな　　　　　「源氏物語　横笛」

　台風が過ぎても依然として暑さは残る。今週も３０℃超えの予報だ。とは言っても日中以外は落ち着いてきた。夕方以降の虫の音に癒される。平安時代にどんな虫が鳴いていたのかは想像するしかない。中国の紀元前の詩に虫の声を表現したものもあるので古くから虫の声は秋の風物詩だったのだろう。

　大河ドラマ「光る君へ」も９月に入り、クライマックスが近づく。まひろは物語を書き始め、宮中に入り再び道長と関りを深める。今日の回では犬が鳴いて籠の中の雀が逃げてしまうシーンがあって、紫の上と光源氏の若き頃の出会いの着想になっていくことが示唆された。残り２か月余りで二人はどのような展開を見せるのだろう。

　人生はあまりに短く、また制約も多いのでやれることは限られてしまう。しかし人間は想像力を働かせて物語を作ることができるし、それが出来なければ書物や芸術、映像を通じて人生を豊かにすることができる。源氏物語は歴史的にも、あるいはグローバルな視点からしても稀有な物語を構成している。紫式部の創作モチベーションについては興味をそそられざるを得ない。

　またこの秋には一つ年を取ってしまうのだけれど、今まで以上に自分自身の物語をより楽しくしていくことに意欲が湧いてきている。これから先の人生も多くの人に出会い、汗をかき、人生の物語を深めていきたい。

人生の物語を楽しむ