忖度(そんたく:他人の心を推し量ること) | そんなの日本語じゃない

忖度(そんたく:他人の心を推し量ること)

朝日の社説 にこんな記述がありました。

「側近」が小沢氏の意向を忖度(そんたく)して締め付けに動く。

難解な単語のようで、ふりがなが振ってありました。この例は、小沢氏の存在と「側近」という単語の選択により、ビクビクしながら顔色をうかがっている様子がイメージを喚起します。そして、その効果を出すために、わざわざ非頻出の忖度という単語を投入したかのようです。

実際に、そういう意味なのでしょうか。Yahoo!辞書の和英辞典にある例文では、

・ 彼の真意はそんたくし難い
I find it difficult to surmise [guess] what he really means.

・ 少しは彼女の立場もそんたくしてやれ
Consider [Put yourself in] her position a little.

と、特に否定的な意は含まれていないようです。対応する英文を見る限り、状況を暗示するような性質は全くなさそうです。

しかし、2009年の末から、忖度という言葉は、小沢一郎氏の顔色をうかがうことを表す動詞として定着しきているようです。

小沢の考えを忖度するな! (中島 岳志)
小沢一郎忖度(そんたく)政治とは?

といった用法が大多数を占めています。さらに、民衆党の忖度政治という表現も定着しているようです。この朝日の用法は特別な効果を狙ったものではなく、この流れに乗っただけのものだと考えられます。

ここまでくると、この単語と小沢氏との関連を払拭することはできません。逆に、そのイメージを醸しだしたいときには、2010年現在では効果的といえます。例えば、

チームメンバーは、常にリーダーの考えを忖度することが求められていた。
彼は上司の心中を忖度することに長けていた。

というように、上に媚を売る態度を暗示する効果を出せます。最後に、「他人の心を推し量る」という意味ですが、目的語に「心」の部分をとるようです。意向や心を忖度するのであって、誰かを忖度するのではないことに、注意が必要です。小沢氏を忖度する、という表現は認められていないようです。