千葉県船橋市の社会福祉法人「恩寵(おんちょう)園」が運営していた児童養護施設をめぐり、元園長から虐待を受けたとする卒園生らが県などに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(須藤正彦裁判長)は、卒園生側の上告を退ける決定をした。5日付。卒園生7人に対する慰謝料計430万円の支払いを県に命じた二審・東京高裁判決が確定した。

 一、二審判決とも、訴えた卒園生11人のうち4人は時効が成立しているとして請求を棄却。7人について元園長による虐待を認めたが、「県から公的権限を委譲された公務員にあたる」として、元園長個人に対する賠償責任は認めなかった。

 同園での虐待や体罰をめぐっては、1995年夏に児童相談所に匿名の告発電話が入り、96年にも園児13人が脱走し、児童相談所に保護を求めたことなどから問題化。元園長は2000年に傷害容疑で逮捕・起訴され、懲役8カ月執行猶予3年の判決が確定している。

重い障害のある53歳の長女を名古屋城の敷地で絞殺して殺人罪に問われた無職石黒一男被告(82)=名古屋市西区=の裁判員裁判で、名古屋地裁は22日、石黒被告に懲役6年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。後藤真知子裁判長は「無抵抗な長女の首に二重にロープを巻いて絞め続けており、強固な殺意に基づく冷徹な犯行」とした。

 公判で弁護側は「娘の将来を悲観した」「介護で追いつめられた」と説明した。判決は、長女の介護の大部分をしていた妻の死亡が犯行の契機となったと認定。妻が介護していた分も負うことになった被告は、もともと介護に不慣れで、高齢による判断能力の低下もあって、自分だけでは無理と思い込んで殺害を決意した、と結論づけた。

 検察側は、妻の死から犯行までわずか10日だった点などを挙げて「介護疲れが原因の殺人ではない」と主張したが、判決は「動機には同情することができるから、刑を軽くする事情として考慮すべきだ」と述べた。(志村英司)

■裁判員「障害者介護、社会が考えなければ」

 長年ともに暮らした障害のある子を老いた親が手にかけた事件。「事件を契機に障害者の介護について社会が考えていかなければならない」。裁判員の男性(57)は、判決後の記者会見でそう感想を語った。

 公判では、検察側と弁護側の立証を通じて、石黒被告が、別居している長男とは疎遠で、同居していた次男とは折り合いが悪く、結果的に孤立していたことが明かされた。「一言で言うと、かわいそうだった」

 別の男性裁判員(45)は、地域によっては障害者施設が不足していることを挙げ、「(裁判とは別に)そこは行政がカバーしていかないといけない」と指摘した。

石黒被告が妻の死後、長女が通っていた施設の職員から「助け舟」となる説明を受けても、福祉制度をよく理解できなかったことも施設長の証言でわかった。女性裁判員(51)は「高齢化が進む中、制度を分かりやすく説明する必要がある」と話した。

 だが、命を奪った事実は重い。法廷のスクリーンに、ケーキを食べて笑顔を見せる長女の生前の写真が映されても、石黒被告は無表情で「長女には喜怒哀楽がない」と繰り返すばかりだった。この女性裁判員は「娘というよりは感情のない人形のように見ていたのではないか。障害者を蔑視(べっし)している」と批判した。(渡辺周)

小沢一郎・民主党元代表について「起訴すべきだ」との結論を出した検察審査会。東京地裁の脇の掲示板に4日に張り出された「議決の要旨」には、審査申立人の欄に「甲」とだけ書かれていた。小沢氏を東京地検特捜部に告発した市民団体だ。一体どんな人たちで構成され、何が狙いなのか。匿名を条件に、謎の団体の代表が口を開いた。

 その団体の名は「真実を求める会」という。

 「命の危険があるから、名乗ることは出来ない」

 団体の代表は取材の冒頭で、こう切り出した。強大な政治力を持つ相手を告発しただけに、素性を明らかにすることで、様々な中傷や嫌がらせを受けるのが心配なのだという。議決の要旨でも、審査会の事務局に頼んで名前を伏せてもらった。

 代表は、取材には氏名や経歴を明かしたが、それを公表することは拒んだ。メンバーは関東近郊に住む60代を中心とする男性約10人で、行政書士、元新聞記者、元教師、元公務員などがいるという。

 政権交代前から民主党に批判的な目を向ける点で一致していた。「せっかちだ」「すぐに議員連盟を作って騒ぎ立てる」など、メンバーによって「ここが嫌い」の中身は様々だが、何か具体的な行動を起こそうと決めた。

 政治的には「保守層」と自認する。自民党寄りではないか、との見方もあるが「政党とは関係ない」という。会の名前は、「右翼や政治団体だと思われないように、庶民っぽい名前」に決めた。

 本格的な話し合いが始まったのは今年に入ってから。様々な民主党議員の疑惑を検討する中で、東京地検特捜部が小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件の強制捜査に着手。1月15~16日に、小沢氏の元秘書ら3人を相次いで逮捕した。別の市民団体の告発が受理された結果だったが、この告発対象に小沢氏は含まれていなかった。

秘書に責任を押しつけて、小沢氏だけが逃げるとしたら、許せない」

 法律の専門家の助言を得て、急いで小沢氏を「被告発人」に含めた告発状をつくって、同21日に特捜部に提出した。告発状の末尾には、あえて「何らの政治的意図やイデオロギーを背景として行っているものではない。売名行為で行っているのでもない」と結んだ。

 捜査当局への告発は、だれでもできる。まもなく告発状は受理され、特捜部による小沢氏自身の事情聴取も行われた。しかし2月4日、特捜部は元秘書ら3人だけを起訴し、小沢氏を不起訴(嫌疑不十分)にした。

 納得がいかず、東京の検察審査会に審査を申し立てた。土地取引事件では複数の市民団体が東京地検に告発したとみられるが、審査会への申し立て資格が認められたのは、小沢氏本人を告発して不起訴となった「真実を求める会」だけだった。

 審査会の手で起訴に持ち込み、「小沢氏が無罪になったとしても、公判で資金の流れを明らかにして欲しい」との考えだった。十分な捜査をせずに不起訴にした特捜部への不満もあったという。

 審査会を「政争の具」に使ったのではないか。その問いに対して代表は、「それは心外。小沢氏ありきでも、検察審査会の制度改正を利用したわけでもない」と反論した。「申し立てはあくまでも問題提起で、審査員も結局、公の場での説明が必要だと思ったから、このような議決になったのだから」と胸を張る。

 4日の「起訴議決」の知らせを審査会事務局から電話で受けたときには、「とんでもないことを成し遂げてしまった」と驚いたという。

 今後は、小沢氏の裁判の行方を見守ると共に、「今回の手応えをもとに、おかしいところはどんな政党であれ、追及したい」と語る。(藤森かもめ)