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┼─ 読んでわかる!就活の基礎
┼┼─ ①本当の「本気」で臨む
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2012年に就職活動(以下、就活)を控えた学生さんに向けて、就活の基本をお伝えする文章を書きます。1回目は意識の持ち方について「本当の『本気』で臨む」と題してお伝えします。
(mixiではこちら)
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65204088&comm_id=3272915
【いますぐ始めることが大切】
いま9月です。既に始めている方もいるかもしれません。ようやく夏休みがあけたばかり、まだ就活について考えていないという方も少なくないでしょう。「まだ、企業がセミナーを開かないから始めない」「周りが何もしていないから始めない」と、周囲や環境に原因を見つけて始めないという学生もいるでしょう。
しかし、周囲を気にしている場合ではありません。大学受験に比べて就活の選考の倍率は10倍以上、「その他大勢」が選考で落とされて一握りのメンバーが内定にたどり着くのです。
「就活を始めるのに、『早すぎる』ということはない」のです。
就活を支援して10年目になります。私が大学3年生の秋、同級生と始めた就活ゼミですが、幸いにも慶應をはじめ全国の学生の就活に寄り添ってきました。そして、就活に苦戦したり失敗したりする学生が言うのが「もっと早く始めておけばよかった」という言葉です。
私自身、志望企業に内定したものの、就活を振り返ると余裕だったとは口が裂けてもいえませんでした。商社や新聞・放送など難関と呼ばれる第一志望企業に内定した学生でさえ、「楽勝」という言葉を聞いたことがありません。
【社会人の常識という「アウェー」のなかで戦う】
もうひとつ就活で大事な心がけは、「常にアウェーで戦う」ということです。すべてのことが社会人の常識の中で繰り広げられるのです。面接会場は企業が用意した場所ですし、面接官はふだん話している学生ではなく社会人。選考が進めばむしろ親に年齢が近い社員・役員が相手です。
大学で所属していたサークルのOBOG会が、毎年秋に開催されます。就活を経験した4年生と、就活にこれから臨む3年生では立ち居振る舞いや言葉遣いのひとつひとつに大きな差があります。「てゆーか」「ぶっちゃけ」「~~なんですよぉ」などと学生どうしで使う言葉で平然と話す3年生の多いこと多いこと。この学生たちが、1ヵ月後に就活ゼミにやってきて模擬面接を受ける。すると、やはり「てゆーか」「ぶっちゃけ」「~~なんですよぉ」の連発。彼らにはそこで指導しますが、こうした学生がそのまま企業の選考を受けたとすれば、結果は明らかです。
就活の序盤は、こうした学生特有の振る舞いから脱却し、社会人の振る舞いを身に着けることが大事です。学生だからいいだろうという甘えは許されません。
社会人の振る舞いとは、マナーなどの本を読めばすぐにわかります。ただ、もっと簡単なのは、テレビドラマや漫画に登場する優秀なサラリーマンやOLの振る舞いを参考にすることです。サラリーマン金太郎の矢島金太郎(高橋克典)のような個性的なキャラクターではありません。やや古めかしいかもしれませんが、課長島耕作の島さんなどは良いと思います。
余談ですが、弘兼憲史さんは、『弘兼憲史の「大人の作法」心得帖』などの本も執筆されていて、優秀なサラリーマン像をよく考えながら漫画を描いているので、参考になります。マスコミ志望であれば「ラストニュース」を読んで欲しいです。
【企業にとっての就職活動という視点を持つ】
学生がもつイメージだけで就活を考えるのは非常に危険です。また、「下手な鉄砲数打ちゃあたる」の感覚で立て続けに受検する学生もいますが、いまいちど企業側の視点で就職活動を捉えてください。相手の本気を知り、こちらもそれにあわせて本当の本気になるために、必要なことです。
企業にとって就活とはどういったものでしょう。社員を1人採用した場合の生涯賃金は、東証一部上場の大手企業でだいたい2~3億円といわれています。商社や新聞・民放、大手金融となればその倍以上という会社もあります。手取りの賃金以外にも、福利厚生費や社会保険など企業側が負担する費用もあります。企業が内定を出すということは、学生の皆さんのポテンシャルが数億円に見合うものだと判断するということです。
数億円に値するかどうかを企業側に理解させるために、学生は何をすればよいのでしょうか。学生時代の自慢話(武勇伝)をひけらかしたり、単に「絶対やってみせます!」を連呼したりするだけでは億単位のお金を動かせません。あなたの仕事能力、特にポテンシャルと成長力を示す必要があります。
2010年11月に執筆に参加した「氷河期だけど大丈夫! 人気企業内定作戦」(エール出版社)という本でも書きましたが、示すべき仕事能力というのは「仕事能力=潜在能力×成長度合い」という掛け合わせで導き出すことが出来ます。どのような経験をしたかだけでなく、その経験のなかで自身をどのように成長させ他者とは違う力を発揮したのかを含めたアピールが必要になります。これは、エントリーシートを書く際にも面接を受ける際にも重要な意識です。
ちなみに、就活の自己PRで、サークルやアルバイトで幹部として頑張ったという経験を話す学生が多いです。「代表を経験して得たリーダーシップが強み」「役員として組織を支えたことが強み」などと肩書きに頼ったものが少なくありません。しかし、社会人は「肩書き」にだまされません。少し考えればわかることですが、サークルの役員を経験する学生は非常に多い。私も、サークルで1団体で代表を経験し、1団体で副代表でした。ボランティア団体では学生代表でしたし、アルバイトでは「業務」というトップも担いました。しかし、役職を売りにした自己PRで内定した企業はひとつもありませんでした。肩書きよりも、経験した事実の過程にこそあなたの仕事能力を示す何かが隠されています。それを発掘する作業が自己分析というわけです。
【本当の実行力・行動力を持った学生が成功する】
就活で成功している学生の共通点、それは自分の足で稼ぐことを厭わないという点です。OBOG訪問をする、志望企業の商品を食べる、志望企業の建てた物件を見に行く・・・様々な方法があります。
まず、失敗する学生の典型例を紹介します。志望企業のエントリーシートを作成する際、就職サイトに企業が設けたページを見て、そこに掲載された先輩社員が「人の絆を結ぶ、それがやりがいです」と書いてあったとしましょう。その言葉を使って「人の絆を結ぶ仕事に就きたいと考え、貴社を志望しました」と書いてしまう。もしくは、テレビCMなどで見た企業のフレーズを使って「地図に残る仕事という言葉に感銘を受け、私もそのような仕事をしたいと思いました」と安直に記す。
もしくは、説明会に参加したときに人事部の社員が「弊社では、行動力のある学生を求めています」と話し、「新規事業に果敢に挑戦していく方針です」と紹介したとしましょう。すると、学生のエントリーシートには「サークルの代表で得た行動力が強みです」「新しいものに挑戦する力があります」という言葉ばかり。
まさか・・・と思うかもしれませんが、実に多いのがこの手の話です。学生からしてみれば、本当にそのような行動力のある学生かもしれません。しかし、本気度を示しているかどうかという視点では不十分です。内定するのは応募者全体の5%であったり1%であったりする。そのとき、他の学生でも書きそうなエントリーシートを出しても内定はほど遠いものです。
足で稼いだ自分だけの情報が「本気度」を表す絶好の武器になります。企業側は、新たな社員を雇うことで企業を成長させたい。そのためには、荒削りであったり少々論理構成が稚拙であっても、自分なりの考えや提案をまとめて企業にぶつけるくらい気概のある学生に出会いたいのです。どこを切っても同じ顔の「金太郎飴」のような学生のなかで、独自の視点でアピールする学生が抜きん出るのは当然のことです。