森の仕事人日記 第7回

講師にも、

「今日はうまく教えられなかった」

と思う日がある

 

はじめに

講師というと、何でも分かっていて、正しく教えられる人のように見えるかもしれません。

 

確かに、教える側には知識も経験も必要です。

 

でも、講師だからといって、毎回うまく教えられるわけではありません。

 

説明したのに伝わらなかった。

 

相手の表情を見落とした。

 

分かっていると思い込んでしまった。

 

もっと別の言い方をすればよかった。

 

一日の研修が終わってから、

 

「今日は、うまく教えられなかったな」

 

と思う日があります。

 


 


教えたことと、伝わったことは同じではない

講師は説明します。

 

手順を話す。

 

実演する。

 

注意点を伝える。

 

でも、それで相手に伝わったとは限りません。

 

自分では分かりやすく話したつもりでも、初めて聞く人には難しいことがあります。

 

専門用語が多かった。

 

説明の順番が悪かった。

 

一度に情報を詰め込みすぎた。

 

受講者がどこで迷っているか気づかなかった。

 

教える側は、「説明した」という事実に安心してしまいがちです。

 

でも本当に見るべきなのは、

 

相手がどう受け取ったかです。

 


分かっていると思い込むこともある

研修では、受講者がうなずいていると、

 

「分かっているな」

 

と思うことがあります。

 

返事も「はい」。

 

質問もない。

 

ところが実際にやってもらうと、手が止まる。

 

動きが違う。

 

そこで初めて、

 

「伝わっていなかった」

 

と気づくことがあります。

 

これは受講者だけの問題ではありません。

 

講師が、

 

「この説明なら分かるはず」
「前にも話したから大丈夫」

 

と決めつけていた可能性もあります。

 

だから私は、教える時ほど自分の思い込みを疑うことが必要だと思います。

 


一人ひとり、分かり方が違う

同じ説明をしても、理解の仕方は人によって違います。

 

言葉で分かる人。

 

図を見ると分かる人。

 

実際に触ると分かる人。

 

一度見本を見てから動ける人。

 

何度か繰り返して身につく人。

 

早く覚える人が優秀で、ゆっくり覚える人が劣っているわけではありません。

 

大切なのは、その人に合った入口を探すことです。

 

だから、伝わらなかった時は、

 

「どうして分からないのだろう」

 

ではなく、

 

「自分の伝え方を変えられないか」

 

と考えます。

 


教えすぎても、育たない

講師は、分からない人を見ると、つい全部教えたくなります。

 

ここをこうして。

 

次はこれ。

 

その次はこう。

 

でも、答えを全部先に渡してしまうと、本人が考える時間がなくなります。

 

教えなさすぎても困る。

 

教えすぎても育たない。

 

この加減は本当に難しいです。

 

一歩だけヒントを出す。

 

少し待つ。

 

本人に考えてもらう。

 

必要ならもう一度支える。

 

教えることは、答えを全部渡すことではなく、自分で進めるところまで支えることなのだと思います。

 


失敗した日の方が、次の授業を変える

うまくいった日は、気持ちよく終われます。

 

でも、講師として一番考えるのは、うまくいかなかった日です。

 

なぜ伝わらなかったのか。

 

説明の順番はどうだったか。

 

見本の見せ方はどうだったか。

 

言葉が難しくなかったか。

 

相手の表情をもっと見られなかったか。

 

そうやって振り返ると、次の研修で伝え方が少し変わります。

 

教材を直すこともあります。

 

説明を短くすることもあります。

 

実演を増やすこともあります。

 

うまく教えられなかった経験が、次の指導方法を作っていきます。

 

 


講師も「分からない」と言える方がいい

教える立場になると、

 

「何でも答えなければ」

 

と思いがちです。

 

でも、分からないことまで分かったふりをしてはいけません。

 

自信がなければ、

 

「確認します」
「もう一度調べます」

 

と言う。

 

自分の説明が違っていたら、

 

「私の説明が間違っていました」

 

と訂正する。

 

それは講師として恥ずかしいことではありません。

 

むしろ、安全を教える立場だからこそ、間違いをそのままにしないことが大切です。

 

講師もまた、学び続ける一人です。

 


おわりに

講師にも、

 

「今日はうまく教えられなかった」

 

と思う日があります。

 

でも、それで終わりではありません。

 

なぜ伝わらなかったのかを考える。

 

説明を変える。

 

教材を変える。

 

待ち方を変える。

 

自分の思い込みを見直す。

 

そうやって少しずつ、教える側も成長していきます。

 

教えるという仕事は、完成するものではないのかもしれません。

 

受講者が変われば、伝え方も変わる。

 

現場が変われば、必要な説明も変わる。

 

だから講師も、毎回学ぶ。

 

森の仕事人として人を育てるなら、技術だけでなく、教え方そのものを磨き続けることも仕事の一つだと思っています。

 


彩ちゃんのひとこと

「講師って、いつも正しい答えを持っている人だと思っていました。

 

でも、伝わらなかった時に『相手が悪い』ではなく、自分の教え方を振り返ることも大切なんですね。

 

言葉を変える。
見せ方を変える。
少し待ってみる。

 

教える側も、毎回学び続けているんだと思いました。」

 

 


note更新のお知らせ(8月12日更新)

彩ちゃんの安全物語 48話

『その急ぎ、周りを置き去りにしていないか?』

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