ある街でバイトをしていた時の事です。。
帰り際、フードトラックのクレープ屋さんが駅前にあり半額キャンペーンをやっていました。。
半額なら安いと思い買うことにしました。。
フードトラックの中にいた彼は、若くメッシュの入った金髪がまじった茶髪の髪型で、日焼けサロンに行っているであろう今時のチャラい男の子でした。。
「どうしてこんなに安いのですか?」聞いたら、
「今日、初めての俺の仕事の日なんすよ。。だから安いんすよ。。クレープ大丈夫すか?」
周りにはいない「す」を、よくつける若者言葉でした。。確かに器用とはいえないぎこちない作りではありました。。
「そうねぇ、確かに言われたらちょっと半生ぽいかも。。」
「マジっすかー!」
聞くところによると、この街と他の街にも出店予定で、私が住んでいる街にもこれから週一で行くというのです。。
「◯◯駅は、私の最寄りだよー。。」
「マジっすかー!絶対、寄ってくださいよ!」
というわけで、週一は必ず仕事帰りに会う仲になりました。。
クレープ屋さんに声をかけると「今日は何がいいすか?」聞かれます。。
毎回、お金は出すと言っているのに、受け取ってくれた事がありません。。
そのかわり、食べ終わるまでしばらく店の前にいて欲しいと言われていました。。
「人がいたほうが、客が来るんすよ。ほらね。」
本当に私がいる時、お客が来るんです。。
お客さんとも、私も混じり、あーだこーだおしゃべりして食べる毎週クレープ。。そんな日々でした。。
ある日、仕事の帰りが遅くなって終電でしたが、クレープ屋さんがまだいたので、声をかけてみました。
「たたいまー!今日、遅かったんだよねー!」
「何、食べます?」
「今日はさすがに悪いからいいよー。。」
「片付けするまで待っててくれたら、家の近くまで送るっすよ。その間、良かったらクレープ食べてください!」
最初を知っているのもありますが、随分手慣れた手つきになり、上達した美味しいクレープになりました。。
車の中からホウキを取り出し、最後に駅の周りを、掃き掃除をするクレープ屋さん。。
「駅の掃除までするの!」と驚きました。。
「これ、駅員さんとの約束なんすよ。ここで営業しちゃダメって言われて、代わりに帰りに掃除するって約束したんすよ。だから駅員さんとの約束なんで守んなきゃいけないんすよ。」
見た目と裏腹で、前々からいい子だなと思ってましたが、見直した一面でもありました。。
私は、派手な塗装の乗り心地の悪いフードトラックに初めて乗る体験もする事ができました。。
半年くらい経ったくらいでしょうか。。
ある日「俺、もうこの仕事辞めるんすよ」といつものようにクレープを手渡され、言われます。。
「本当は、名前も連絡先も聞いときたいとこですが、やめときます。元気でいてください!」
それ以来、新しいクレープ屋さんも来ることもなく彼ともそれっきりです。。
時折、見た目はああでも、心がピュアな彼なら誰からも好かれてうまくやっているだろうと思います。。
約束をみえないところでも「守る」
できそうで、なかなか難しいものです。
うちの旦那ちゃまは「忘れる」という致命的な問題がございますが。。