同じ時代を生きた二人 | WONDERFUL ROCK

同じ時代を生きた二人

昭和アーカイブス スーパー・ジェネレイションスーパー・ジェネレイション
雪村いづみ

Columbia Music Entertainment,inc. 2007-07-18


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text by kazgadd

以前、ホーギー・カーマイケル(1899~1981)を取り上げたときに、あまり文章が長くなるのもどうかと思い、書ききれなかったことがあります。

彼の地、アメリカでカーマイケルが珠玉の名作を書き上げていたちょうど同じ頃、日本でも歌謡史を語る上で欠かすことのできない巨人が多くの名曲をのこしてくれました。

その巨人とは服部良一氏(1907~1993)。この人の歌は、それまでの日本に全くなかったもので、当時の時代背景と情報量の少なさから推察するに画期的な業績と言えましょう。

服部さんが作曲家としてのキャリアをスタートさせたのは、なんと昭和11年。クラシックで音楽理論を学び、ジャズにも精通。軍歌を作るのが嫌で上海に渡った、なんて素敵なエピソードも残されています。

〈一杯のコーヒーから〉〈蘇州夜曲〉〈東京ブギウギ〉〈銀座カンカン娘〉〈青い山脈〉〈東京の屋根の下〉などなど。彼がのこした名曲は、もちろんここには書ききれません。

服部作品の中で僕の好きな〈胸の振り子〉を聴いてみてください。歌は雪村いずみ、演奏はキャラメル・ママ、編曲は服部克久氏です。林立夫が「歌いながら」叩いているのがよく分かります(まだ続いてる?!)


♪胸の振り子/雪村いずみ




さて、話はそれから30年ばかり後。現在、アメリカのポピュラー音楽界で、かつてのホーギーと同じように尊敬を集めているのが、バート・バカラック(1928~)ではないでしょうか。〈Alfie〉〈Raindrops Keep Fallin' on My Head〉〈Arthur's Theme〉〈That's What Friends Are For〉と、のこした名曲は数知れず。今もご健在で、昨年はグラミー賞の「永年功労賞」も授与されました。

同じように日本でも、服部良一さんに遅れること30年、中村八大さん(1931~1992)が登場します。永六輔さんとの「六八コンビ」で、代表曲〈上を向いて歩こう〉を初めとして、〈明日があるさ〉〈こんにちは赤ちゃん〉〈黒い花びら〉〈遠くへ行きたい〉〈世界の国からこんにちは〉〈黄昏のビギン〉などのヒット曲を書かれました。そして1963年、〈上を向いて歩こう〉はビルボード3週連続1位、キャッシュボックス4週連続1位に輝きました。

〈上を向いて歩こう〉は、その後、外国でもいろいろな人がカバーしヒットチャートの上位をにぎわせたこともありますが、この人のカバーがなかなか素敵です。


♪上を向いて歩こう/近藤房之助




日本とアメリカで20世紀のポピュラー音楽を振り返るとき、ちょうど同じ時期にこの4人の「巨人」が登場したことに不思議な因縁を感じます。そしてこの4人の方々がのこされた名曲をこれからもずっと、新しいアレンジで歌い継いでくれるミュージシャンが出てくれることを期待します。