マイク・ミルズ監督の少し前の映画。友人に勧めれ、DVDを借りてきた。
サム・サッカーと雰囲気は似ている。
母が亡くなったあと、ゲイであることをカミングアウトし、恋人を作って、溌剌と生きる父が癌で亡くなるまでの思い出と、無理やり駆り出されたパーティで出会った不思議なかわいい女の子と過ごす現在が交錯する。
主演は、ユアン・マクレガー。父を失った喪失感と、まわりとうまく馴染めない頼りなげなまなざしにとてもシミジミしてしまう。ユアン・マクレガーは何やっても良いなあ。
主人公のオリバーは、父が残した犬アーサーと一緒に暮らしている。オリバーが時折交わすアーサーとの会話がいい。犬を飼っていたことがあるせいか、親近感も湧いてしまう。思い出してしまう。
アーサーは寂しがり屋で、オリバーのそばを離れるのを嫌がる。かと思えば、思わぬ人に懐いていったり、奔放で自由な様が、カミングアウト後の父の姿とタブル。
メラニーロラン演じるアナが、あまりにかわいくて、オリバーが夢みたいに感じる2人の生活がほんとにファンタジーに思えるところがいい。
ホテル暮らしをするアナの部屋へ向かうシーンで、アナの部屋へと続くホテルの廊下をカメラが舐めるように進むカットがとても好きだ。アーサーが駆けてゆき、オリバーが追いかける。とても素敵な場所に通じる秘密の通路のような趣きがある。
だからこそ、オリバーが、自分の家にアナと一緒に暮らそうと提案し、ホテルの部屋を引き払うと魔法が解けてしまうのが自然と伝わってくる。
母と父の仲に疑いを持ち、ゲイであることを知り、確信に変わる。母の気持ちを思い、父が父らしく生きることに喜び戸惑いを感じる。
同じシーンが繰り返し使われ、オリバーの悩みを浮かび上がらせる。
時折、両親の若いころを象徴する写真のカットが連続して入る。現在と過去の対比。小気味よく印象的で、かつうまく説明もしている。
ラスト近く、母親は、父親がゲイであることを知った上で結婚したことを知るシーンが入る。
現在のオリバーは、映画の冒頭から知っていたわけだが、観客は後半で初めてそのことを知り、すると、現在のオリバーの気持ちにも変化が現れるような気がする。
オリバーは、一度経験したこと、知ってしまった事実を、再度、追体験することで、解釈し意味付けして、自分の中に取り込んでいるからだ。
母の野望と絶望と諦念。父の罪悪感と誠実さと自由を得た喜び。
オリバーは、全てを抱え込んで、アナを求め、受け身だった自分を捨て、自分から行動する。懸命な姿は滑稽で愛おしい。
アーサーがいつも一生懸命なように。