忘れもしない10代、ちょうど分かれ道に立っていた頃。
いつも見ていた音楽番組のエンディングテーマを唄う彼女の歌に出会った。
真っ白肌にボブカット。特徴的な声。
画面に映し出された瞳はギリギリのところで生きているように見えた。

その目が忘れられなくて、いつもの何倍もの速さで手当たり次第の情報を集めた。
まだその頃、インターネットは今のように普及していなかったから、
もちろん私のPCを触る手もおぼつかず。
慣れないマウス操作で彼女を知るキーワードを拾い上げていった。

そんな中辿りついたあるサイトで『彼女』の生き方に惹かれた人たちが沢山いることを知った。

その頃の私は、ただなんとなく過ごして取り得もないまま今日まで来てしまったことをとてもとても後悔していたから、そこに広がる世界はとても新鮮だった。

一人の人にここまでココロが動かされることってあるんだって想った。


何も知らない私が彼女のファンの人にまずはこれを聴きなさいって勧められた1st album『A Song for XX』。
何度も何度もリピートする日々が続いた。
耳に触れる言葉たちが、私の抱えていたモヤモヤを代弁してくれていた。
ちょうど世間も病んでいた時代。

求めるものは多くの人が同じだったのかな。
年を追うごとに彼女の名前はどんどん大きくなっていって、
歌姫ともてはやされるようになっていく姿を見る事が多くなった。
売り上げ・大賞・歌姫合戦。

それでも時間は待ってくれない。
彼女が生き急ぐようにハードスケジュールをこなしていく中で、
私も自分の生きる術を見つけ、その存在はどんどん遠ざかっていった。







あれから数年。
守りたいもの、自分のスタートラインを見つけられたのは、紛れもなくあの歌声があったからなんだって気づいた。
『過去は捨てる』そんな鋭角的思考を切り替えられたのは聴いている側も一緒に成長できた証なのかもしれない。
環境や境遇、逆境や運。 生まれてしまったら誰のせいにもできないのだから。
どんな場所で息をしようと、小さくても揺るぎないものを見つけることはできる。
多くは自分の気持ち次第なんだって、身を持って教えてくれた。


今でもヒントが見つからない時、あの夜寄り添ってくれた曲たちを引っ張り出してきては彼女の声を聴いている。
辞書にも本にも載ってない、正解もない答えを探していくんだ。

残してきた足跡は、歌となりまた見えない誰かの傷に優しく触れていくんだね。

こんな離れたところでも、近くへ行ける日を夢見て。
私はいつも応援しています。


伝えたいことは歌にしていこう。
あの日の私は今ここにいます。

守るべきものを教えてくれてありがとう。
お大事に。

to 浜崎あゆみ