いよいよプロ野球の開幕です!

スター不在だの小粒になっただの言われますが、それは否定しませんがスターが出にくい時代になっている気がしますね~

がんばれベースボール!

 

久しぶりに「本の話」

 

基本的に「映画」「本」も気に入ったモノは何度でも読んだり観たりするタチで、最近ますますその傾向が強くなっている気がします

 

今日の本は、人生観を変えるくらいの強い衝撃を覚えた「本」ですが、実はドラマを先に観ております

 

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「男たちの旅路」

 /山田太一
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「俺は・・・若い奴が嫌いだ!」

警備会社を舞台に、戦中派の中年と戦後生まれの若者たちの断絶と共感を描いた傑作シリーズ!

 

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この本は「山田太一作品集」(シナリオ)全10巻の中の2冊で、①に第一部~第二部の全6話、②に第三部~四部の全6話収録されています

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この本を見つけたのは初めてドラマを見て数年たったある休日、行きつけの「古本屋さん」で、当時は今と違って本を探したり買ったりするのは「本屋さん」か「古本屋さん」で、並んでいる本を見つけた時の喜びは今も忘れられません

 


もともと「ドラマ」を先に観ております!

時代から考えて多分再放送か再々放送だと思いますが、強烈でしたねえ~DVD化されたのは知っていますが観たのは、その時の一度だけです。それでも、シナリオは何度も読み返しておりますので画像は鮮明に甦ってきます

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NHKの「土曜ドラマ」の中ので76年より79年までレギュラー12本、スペシャルが82年に放映されています

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<第一部>

1話/非常階段 76年

2話/路面電車 76年

3話/猟銃 76年

<第二部>

1話/廃車置場 77年

2話/冬の樹 77年

3話/釧路まで 77年

<第三部>

1話/シルバーシート 77年

2話/墓場の島 77年

3話/別離 77年

<第四部>

1話/流氷 79年

2話/影の領域 79年

3話/車輪の一歩 79年

 

全12話すべてのドラマがすばらしいです!

ひとつひとつテーマが明確で、自分ごときが言うのも失礼ながら「完璧なシナリオ」と言ってもいいのではないでしょうか?今、このようなドラマが少ないのが残念です!

 

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第一部の1話の冒頭、ガードマンの新人研修で数人投げ飛ばし𠮷岡司令補(鶴田浩二)は、こう諭します

 

「いいか、忘れるな!君たちは弱いんだ。それを忘れるな!」

 

ガードマンという仕事を通して、様々な人間の価値観や信念を描くドラマで、若い世代や社会に対する強いメッセージというか憤りを感じます

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豪華なレギュラー陣に加え、毎回の多彩なゲスト陣!レギュラーは鶴田浩二さんこそ変わりませんが、部によって入れ代わり新鮮で見ごたえがあります

 

<レギュラー出演>

 

鶴田浩二/𠮷岡司令補

 

水谷豊/杉本陽平(四部1話まで)

森田健作/柴田竜夫(一部まで)

桃井かおり/島津悦子(三部まで)

 

五十嵐淳子/浜宮聖子(二部まで)

金井大/田中先任長

中条静夫/斉藤司令補

 

柴俊夫/鮫島壮十郎(二部から)

清水健太郎/尾島清次(四部から)

岸本加世子/尾島信子(四部から)

 

池部良/小田社長(二部から)

 

<脚本>

 

山田太一

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とにかく鶴田浩二さんがカッコいい!

 

特攻隊の生き残りで「若い奴は嫌いだ!」と公言し若い世代の価値観に戸惑いつつ自分の信念で生きる男を演じています。共演には、「相棒」の水谷豊や森田健作、桃井かおり、柴俊夫などが「若者」の代表として登場し、代弁していきます

 

今、キレたり怒ったりする「大人」が多い中、なかなか叱ることのできる「大人」が少なくなっています。多分、自分を含めて自信がないからなんでしょうね~いつの時代にも、「𠮷岡司令補」は必要なのでしょう。また、自分たちもそうでなければなりませんね。

 

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今、手元に本があります・・・

 

自殺者が多発している高層ビルの警備を担当している3人(𠮷岡/鶴田浩二・陽平/水谷豊・竜夫/森田健作)が、自殺しようとした女性(桃井かおり/後に同じ警備会社に入る)を、説得し助け出したあとの警備室での3人の会話_

 

竜夫「本当に仕事だけですか?仕事だから助けたんですか?」

陽平「おお~中年なんか、そんなもんよ」

竜夫「じゃあなぜ助けたあとで、あんなに殴ったんですか?仕事なら助けるだけでいいじゃないですか?」

陽平「憎かったんだろ〜人生とやらをなめてる若いモンが」

竜夫「そうですか?それともしっかり生きろって・・・」

陽平「そんな甘い話しじゃね~よ」

竜夫「どっちなんですか?」

𠮷岡「俺は・・・若い奴が嫌いだ。自分でもどうしようもない。嫌いなんだ」

陽平「それみろ!」

𠮷岡「今の若い奴は、昔の話しをするなとよく言う。めったに俺は昔の話しなどしない。今さらという顔をされるのはかなわんからな。しかし、昔を忘れることは出来ん!戦争中の若い奴は、つまり俺たちはもっとギリギリに生きていた。死ぬことにも、生きることにも、もっと真剣だった!」

陽平「時代がちがうんですよ~」

𠮷岡「そうだ!昔だっていい加減な奴がいた。今だってギリギリに生きている奴はいるだろう。しかしなあ、明日は死ぬと決った特攻隊の連中を俺はわすれることが出来ない。明日は確実に死ぬと決った人間たちと暮らしたことがあるか?それも殺されるんじゃない、自分で死にに行くんだ!自分で操縦桿を握って死んでいかなければならない連中と過ごしたことがあるか?顔色がみんな少し青くてな、でかい口をきく奴もふいに声が震えだしたりした。間もなく俺も後を追うことになっていた。そんな晩が幾晩もあった・・・」

竜夫「・・・・」

陽平「・・・・」

𠮷岡「ある晩、”吉岡、星は出ているか?”と聞いた奴がいた。残念ながら出ていなかった。”見えないようだ”と答えると、”そうか・・・降るような星空というものは、いいものだったなあ~”と言った。俺は一晩中、雲よ晴れてくれと空に祈った!晴れたら奴を起こして降るような星空を見せたかった・・・翌朝、曇り空の中を、そいつは飛んでいった。甘っちょろい話しじゃないかと、今の奴は言うだろう。しかしな・・翌朝、確実に死ぬとわかっている人間は星空が見たいと言う、それだけの言葉に、百万もの思いをこめたんだ!」

竜夫「・・・・」

𠮷岡「それを甘いと言う奴を俺は許さん!」

陽平「・・・・」

𠮷岡「少なくとも好きにはなれん!」

陽平「・・・・」

𠮷岡「よくも悪しくも、あの時代が俺をつくった。あれから後は”そんなもんじゃない、そんなもんじゃない”と何をみても思ってしまう。とりわけ、若い奴がチャラチャラ生き死にをもてあそぶようなことを言うと我慢がならん。きいたふうなことを言うと我慢がならん」

陽平「・・・・」

竜夫「・・・・」

𠮷岡「俺は若い奴が嫌いなんだ」

陽平「そりゃあ、付き合いにくいっすね~」

𠮷岡「ああ・・多分、若い奴を知らないせいだろう」

陽平「・・・・」

竜夫「・・・・」

𠮷岡「俺は、そういう人間だ。君たちに好かれようとも思わん。明日、君たちの勤務地を替えてやろう。ここは、若い奴抜きでやる」

陽平「やだな。俺は・・・あんたが嫌いじゃないですよ」

𠮷岡「・・・・」

竜夫「俺も替わりたくないです」

𠮷岡「・・・・」

陽平「中年にしちゃ~歯ごたえありそうなんでね」

𠮷岡「そんな言葉で、ホロッとはぜんぞ」

陽平「こっちもアテにしてませんよ」

竜夫「勤務を続けさせてください!」

 

第一部の第1話「非常階段」から抜粋しました

 

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この第1話目のこのシーンこそが、このドラマの根幹であり、この𠮷岡司令補の憤りと信念がここにあります

 

大人が大人らしく、若者が若者らしい最後の時代だった気がします

 

 

当時、これを観たり読んだりしたのは、まさしく陽平や竜夫と同じ若い世代でしたが、今では𠮷岡司令補と同じ世代となりました。そういう意味では生きざまは教えられませんが、「映画」や「音楽」や「本」を伝えていけたらと思います

 

「男たちの旅路」

 

「古い人間」が全ていいとは思いません、「古い映画」も全ていいとも思いません。ただ、それを理解し伝えていくことが大切ではないでしょうか?

 

この物語は、自分にとっては大切な「本」であり「ドラマ」であり、多くのことを学んだ「道標」です!時代背景は少し古いですが、この物語に込められたメッセージは普遍的なものです!「本」ももちろん素晴らしいですが、できれば「ドラマ」に触れてみてください!