台湾物語 『麗しの島』の過去・現在・未来
新井一二三著 筑摩選書 2019年
非常に良かったです。
対象になるのは,おそらく台湾に数回程度は行ったことがあり
お気に入りの食べ物やだったり,場所や景色があったりして
そろそろガイドブックに載っていない場所を探してる、くらいで
かつては日本が台湾を統治していて、戦後に国民党が渡ってきて、
白色テロなんかがあったりしたものの、李登輝さん以降大幅に自由な国に変貌した
親日の方が多い国、
くらいの知識をぼんやりと持っては居るけれど、
もう少し踏み込んだ事を知りたい、位の感じの方になるのでしょうか。
つまり自分にはとてもあっていました。
ものすごく乱暴に言ってしまいますが
(詳細は本を読んでみてください)
台湾は原住民、本省人、外省人という括り、
更にそれぞれの括りの中での世代間での違い
そこに絡まる支持政党の違い(国民党、民進党、ほか)、
これらによって、様々な立場、考え、モノの見方の違いが存在しています。
多分ですが、これ、気をつけないと見えているものの意味が
結構変わってしまうのです。
著者の方は,割と一歩引いた形でどこか一つのクラスタに肩入れをするわけでもなく
バランスよく色々な角度からの見方を提示してくれています。
(日本人的にはどうしても本省人-民進党-独立-善,的な視点で読み解く方が多いような気がします)
また、ここから更に踏み込んで理解を深めたい人のための
映画や作家さんの名前が結構沢山紹介されています。
そして何より、出版の日付が昨年(2019年)と割と新し目なのもポイントです。
自分が台湾に行って見聞きしたものに対する追加知識だったり
現在の台湾を理解するにあたり、知っていると見えてくる景色が変わってくるかも、
というような情報が多いです。
現地住みの方やガチ勢の方は先刻ご承知、という内容が多いと思いますのであれですが
初心者が一歩踏み込むためのガイドとしては本当に秀逸だと思います。
個人的には
全聯のCMのくだりが興味深かったです。
多分自由渡航にはもう少し時間がかかると思いますので
それまでの予習として手にとってみる価値のある書籍だと思います。
絶対違うものが見えると思います。