最近のニュースで、「女性専用外来」という言葉をよく耳にします。「女性医療」という言葉がひとつのキーワードのようです。と言っても、「女性医療」ってなんだかよくわからないな?と思ったので、女性医療の専門家にお聞きすることにしました。それでは、ご一緒にどうぞ。


Q: そもそも「女性医療」とは何ですか?

A: 女性は一生を通してホルモンバランスが大きく変わるため、それを抜きにして今までのように画一的に医療を行うには無理があるので、「女性という性別を考慮に入れて疾患を考えようという試みが女性医療であり、女性専門外来」です。観念的に言えば、「女性を一人の人間として、女性の気持ちに寄り添って考える医療」といえます。女性の卵巣は10代から50代まで機能し、ホルモンを産生しています。ホルモンは、女性の体にとって大きな働きを持っています。女性は一生を通しても、思春期、妊娠・出産、更年期とホルモンバランスが大きく変わりますし、もっといえば、月経周期のなかですらもホルモンバランスが変わっているのです。ですから、繰り返す様ですが、性差を抜きにして女性の医療を考えるのは難しいと思われます。


Q: なぜ今、「女性のための医療」が脚光を浴びているのでしょうか?

A: アメリカでは1988年ごろから国会で、女性の健康政策を考える研究会ができています。日本は現時点でやっと追いついてきただけと考えます。例えば、女性は閉経になると女性ホルモンが減って、骨粗鬆症が進行したり、動脈硬化が進んで心臓血管病のリスク等が高くなるなどの変化があります。


Q: どのような「女性のための医療」が理想的と考えられますか?

A: まず、今の日本の医療にとっては ・医師側が女性のライフステージを理解していること ・患者さんにとってアクセスしやすいことこの2つが重要ですね。例えば更年期などでは、イライラ感や、情緒不安定、また体の不調など多種の症状がでます。色々な科をまわって、結局これといった治療が受けられなかった方に、女性ホルモン療法を行って、かなりの症状が改善する事もあります。これは女性のライフステージを医師側が理解していないとなかなか難しいです。ですから、この2つの条件を兼ね備えた女性医療施設が望まれます。また、実際的には、医師だけではなく、医療関係者(例えば、ソーシャルワーカーや、カウンセラー、薬剤師さん、助産師さん)全てが一体となって、患者さんをフォローしてあげられるようなシステムがあるといいですね。


Q: 将来的には女性は産婦人科のホームドクターを持ったほうがよいでしょうか?

A: もちろんですが、ただし産婦人科に関わらず、女性のライフステージに合わせて精神的にフォローできるような医療が望ましいでしょう。例えば、乳がんの手術はいま、外科の先生が行っていますが、術前・術後の細やかなフォローが今後大切だと思われます。


Q: 例えば20~30代の働く女性が健康を維持するために大事なことは何でしょうか?

A: まず、婦人科検診を受けてください。海外では月経または性行動が始まったら検診を受けることは常識です。日本は婦人科検診を受けたことのない女性が多すぎます。また、自分のなかのホルモンの働きに関する理解を深めてください。例えばピル、更年期のホルモン補充療法など、女性にとってはホルモンを使いこなせるかどうかでQOL(生活の質)が全く違います。


Q: 女性のメンタルヘルスについて重要と思われることはなんでしょうか?

A: 自分の将来に自信がもてないと不安になりますから、妊娠・出産を含めた自分のライフプランをよく考えてください。例えば、子供を持つにしても持たないにしても、自分で決定したかどうかが大きいですから。そのためにも、自分の体に何が起こっているかを知り、コントロールできるようになるのはとても重要だと思います。妊娠にしても、今の日本では、実は望まない妊娠率が7割なんです! 特に10代、20代の中絶率が増えていて、10代では1年間のうち100人あたり1人の割合で中絶しています。医師は、確実で安全な避妊法として、ピルを使うことを推奨しています。ピルの副作用で一番怖いのは血栓症ですが、血栓症のリスクは1/10万人です。ところが通常のお産で命を失うリスクは6or7/10万人なんです。


婦人科検診を受けたこともない私にとっては、ちょっと耳の痛い話でしたが、でも、おっしゃることは大変よくわかります。自分の体のなかで何が起こっているか知らないって、やっぱりなんか変ですよね!・・・・でも、最後に先生は「例えば、仕事をしていて、生理不順になった、生理痛がひどいなんて症状が出た場合は、体が発している信号だと思って、自分の体をよく知る機会とポジティブにとらえればいいんですよ。とにかく自分の体とその仕組みについてよく理解してください」とおっしゃってくださいました。わかりました。どうもありがとうございました。