こんにちは。コピーライターの青木です。
20代後半になり、同僚とキャリアについて話す機会が増えてきました。コピーライターの道を極める?マネジメントの経験も積む? ……私自身、一度はマネジメントに挑戦したものの、「1人のプレーヤーとして背中で語れる成果を出せていないままじゃダメだ」と感じ、プレーヤーに戻った経験があります。
とはいえ、思い描いたような成長実感が得られず「このまま進んでいけるのかな?」と悩む日も。
同じように、
「チャレンジリーダーをしているけど、うまくいかない」
「リーダーにならないと、成長が止まっているように感じる」
とお悩みの方は、少なくないはず。
今回お話を聞いた営業の相澤知美さんも、そんな風に悩んだことのある1人です。
2020年1月、社長賞ベストプレーヤー賞を受賞した相澤さん。壇上で語った「ハイプレーヤーのロールモデルになりたかった」という言葉は印象的でした。
そんな彼女にお話を聞くと、「最初はメンバーの次はリーダーになるのが当たり前!と思っていたんです。でも、大事なのはリーダーになることよりも自分がどうなりたいか、だったんです。キャリアを考えたときに、私はハイプレーヤーのロールモデルになりたかった。今では素直にそう思えています」
力強く語ってくれる相澤さんに、「自分の戦い方の見つけ方」について聞きました。
【プロフィール】相澤 知美(あいざわ ともみ)
前職は、ウェディングプランナー。2016年にエン・ジャパンに営業として入社。メンバーとして通算3回MVPを獲得し、わずか1年でチャレンジリーダー(*)になるも、再びメンバーとして歩むことを決意。チームを異動し、またしても通算3回MVPに輝く。2020年には、社長賞ベストプレーヤー賞受賞。
(*)リーダー(係長)職や、マネージャー(課長)職に昇格する際、一定の育成期間を設定する制度のこと。2016年より開始。詳細はこちら。
追うべきものがなくなり、心にぽっかり穴があいた
「自分で言うのもおこがましいですが……次にリーダーになるのは私だなって思っていたんです」
『エン転職』の営業として中途入社した相澤さん。入社から半年後には、3ヶ月連続で部署内MVPを受賞。その活躍ぶりは上層部からも注目され、周囲のメンバーよりも早く「チャレンジリーダー」になる話が持ち上がりました。
「せっかくならリーダーになりたいし、なるんだろうなと思っていました。何より私は、営業の仕事が大好きで。リーダーになれば自分の担当クライアントだけじゃなく、チームメンバーのクライアントまでサポートできる。最高じゃんって、リーダーになることがすごく楽しみだった」
しかし、相澤さんを待ち受けていたのは、想像とは違ったリーダー生活でした。
「リーダー業務を行なっているとお客さんに会える時間が減っていたし、どんなリーダーになりたいのかが曖昧になっていたんです」
周囲に期待される一方、自分のキャリアについて本気で悩み始めたという相澤さん。
そして、数ヶ月のチャレンジリーダー期間が終わるとき、彼女が選んだのは、再びプレーヤーに戻る道でした。
「正直、あぁ、キャリアダウンしちゃったなって思いました。当時、リーダーに挑戦してからプレーヤーに戻った人って、多くはなくて。社内でキャリアップしていくとしたら、リーダーを経て管理職になる道だけ。プレーヤーに戻っちゃったら目標もないし、何のために働けば良いんだろう?と分からなくなってしまって……」
先輩すら追い抜いてチャレンジリーダーに選ばれ、活躍を期待されていた順調すぎる日々から一転。あえてリーダーの道を進まない決断をしたことで、追うべき目標を見失ってしまった相澤さん。
「あのときは、もう毎日、憂鬱でしたね」
と当時を振り返ります。
「このチームの顧客リスト、ぜんぶ私にください」
プレーヤーに戻り、先の見えない日々を過ごしていた相澤さん。彼女を支えていたのは、やはり目の前のお客さまでした。
「一度リーダーを経験したからこそ、お客さんと向き合える喜びをより強く感じられるようになったんです。やっぱり私は営業の仕事が好きなんだなって」
とにかく1社でも多くの企業を幸せにしたい。そこで彼女が起こした行動は、「誰よりも高い目標を掲げる」こと。
「チームの顧客リストをぜんぶ私にくださいって、上司に無茶を言ってお願いしました(笑)とにかく私がたくさんのお客さんを幸せにしたい!と思って。大好きなお客さんに向き合うことで、少しずつ新しい目標が見えてきたんです」
また、「環境を変えたことも、前に進めるきっかけになったと思います」と彼女は当時を振り返ります。
「入社からプレーヤーに戻ったばかりの頃までは、新規への提案がメインの部署にいたんですね。そこから、少し規模感の大きいクライアントに対して継続的に採用活動を支援する部署に移らせてもらって」
「新しい環境なので、営業手法も違い、当然できないことが多くありました。でも、だからこそ自分の知識やできることの幅が広がっていく実感が持てた。“新しいステージ”に進めた気がしたんです」
思い切って環境を変え、自ら高い目標を掲げる。そうして彼女は、徐々に入社当初の気持ちを取り戻していきます。
「この環境で、きちんと業績を出そう、1番になろう。自分自身がキャリアの成功事例になりたい!という新しい目標が出来ました」
こじ開けた「ハイプレーヤー」として道
自信を取り戻した彼女は、次々にMVPを獲得。再び高い成果を上げていきます。
もう、相澤さんを「リーダーになれなかった人」と言う人はいない。「ハイプレーヤー」として認識される存在になっていったのです。
彼女の考え方にも、少しずつ変化が現れます。
「ハイプレーヤーとして、組織に何か還元できることはないだろうか。そう考えるようになって。自分の持っているノウハウを独り占めするんじゃなくて、周囲のメンバーに共有していこうと勉強会を開催したんです。相澤の勉強会だから、“アイザップ”とマネージャーが名付けてくれました(笑)」
業績の面から組織を牽引することはもちろん、その中で得たものを組織に還元していった相澤さん。
リーダーではなくとも、ハイプレーヤーだからこそ他の人の模範となって存在感を示していくことはできる。それが確信に変わった瞬間でした。
彼女はこう続けます。
「リーダーというキャリアだけではなくて、もっといろんなキャリアがあるべき。そして、ハイプレーヤーで活躍している人にももっとスポットが当たってもいいんじゃないかと思うようになりました」
自分のキャリアは、自分で掴みとれる
「ハイプレーヤーのロールモデルになりたい」
社長賞の受賞式で、まっすぐこう言った彼女。「自分が社長賞をとることで、キャリアに悩んでいる人の背中を少しでも押したかった」と、心境を語ってくれました。
「今までって、キャリアアップというとリーダーになる選択肢しかないと思っていました。でも私がそうだったように、ステップアップしたくても、リーダーよりプレーヤーに向いている人もいる。リーダーという道を選ばなかった自分が生き生きと働いて、ハイプレーヤーとして活躍することで、“こんな道もあるよ”と示したかったんです」
成果を出し続けられる力がある人が、キャリアに悩み辞めていってしまう。そんな状況を目の当たりにしたこともあるという相澤さん。
選択肢はいくつもあるし、自分のキャリアは、自分で掴みとることができる。相澤さんの社長賞受賞は、私たちにそんな可能性を教えてくれたように思います。
「仮にいま、キャリアに悩んでる人がいるなら、まずは自分がどうなりたいか一度立ち止まって真剣に考えてみると良いんじゃないかって思うんです。結果、それがリーダーじゃないとできないことならリーダーになればいいし、私のように方向転換するのもアリだと思う。自分なりの組織貢献の仕方を、前向きに模索していくことが大事なんじゃないでしょうか」
編集後記
営業とコピーライターは、採用活動における求人広告制作でタッグを組む “相方” のような存在です。私はこれまで、相澤さんのお客様の求人を担当する機会が何度もありました。そのときの相澤さんは、いつもテキパキとしていて丁寧な仕事ぶり。勝手に「失敗をすることがない、1人で何でも完璧にこなせる人なんだろうなぁ」と思っていました。
そのため、思い通りにいかないチャレンジリーダー期間や、悩みながら働いていた時期のお話は意外に感じました。でも、浮き沈みがあったから、彼女は「戦うフィールドを変える」という新しい道を見つけられたのだと思います。かつての相澤さんと同じようにキャリアに迷っている人にも、挫折を味わって立ち止まってしまった人にも、きっと役立つ考え方ではないでしょうか。
取材・文 / 青木みさき
編集・撮影/林玲菜