まさか、一生のうち、あんなにおそばで

お顔を拝見できるとは思いませんでした。


上野恩賜公園でのこと。


最初から、なんだか物々しい空気だな、というのは、

遠目でも見て取れました。

公園入り口付近に、

制服を着たお巡りさん、イヤホンをした私服警官らしき男性たちが

やたらと、点々と、待機しているんです。


誰か要人がそばを通るのかしら、と思いながら

公園内に進み、待ち合わせ場所に向かおうとすると、

ランニングウエア風?の男性がおもむろに近寄ってきて、じゃじゃーん! 

水戸黄門の印籠を見せるかのように

派手目の、大きなブローチ?(と一瞬思った)を提示。


「警視庁の者です。大変失礼ですが、今から どちらの方向へ向かわれますか?」


「・・・この先の、上野・韻松亭です」


「お急ぎとは思いますが、あと2、3分、待って頂けないでしょうか?」


「・・・??」


「今から、天皇皇后両陛下がここを通られます。 あと2,3分で

 通過することになっているので、今しばらく、こちらの日陰で

 待っていて頂けないでしょうか?」。


そこかしこで、同じような会話が、

私服警官&お巡りさん 対 通行人の間で繰り広げられ、

次第に、”笑顔のかたまり” が膨らんでいきます。

そうなんですね、待たねばならない理由を知って

皆、笑顔になるんですね!


となりのご夫妻2組グループは、


「あら~、なんてラッキーなんでしょう。

 我々、田舎から出て来たんですよ。 この前に浅草に行こうかって

 話してたんだけど、先に 上野に来てよかったわー」


と、にっこり。


物々しく見えたのも遠目だったからで、

現場のお巡りさん達も、皆 穏やかな顔。


「せっかくだから、最前列で 手を振ってください。

 車の速度を遅くして、応えてくださるんですよ」


と裏技まで教えてくれました(笑)。



・・・・・・・・・


シロバイ2台に先導され、ゆっくりと走ってくる黒塗りの車数台。

情報では、二台目に天皇皇后両陛下が乗っていらっしゃるとのこと。


手を振る私達。


お巡りさんの言うとおり、一台目の車の速度は変わらないのに、

二台目は速度を緩め・・・、

窓を開け手を振り返してくださる両陛下・・・。


白?銀?藤色? 淡い色のお着物をお召しになった美智子様は、

涼しげで美しく、

お隣の天皇陛下も、あの笑顔で応対してくださって、

爽やかな風に頬を撫でられたようでした。