$ 第3章 語り掛け $
裕子に追い返された一平は
納得が行かないのか
首をかしげながら帰宅した
休日に少し遅く起きた一平は
ブランチを摂りながら考えた
『やっぱり、妄想かな・・・』
テーブルの上に置いた『焼きそば屋』のテレカを
ちらりと見てつぶやいた
その瞬間、一平は閃いた
『絵柄は違うが確かに、電話機から出てきた』
『これを使ったらどうなるんだ?』
そう思うとじっとして居れない一平は
慌てて服を着替えて飛び出した
近くの公衆電話に駆け込むと
電話機にテレホンカードを差し込んだ
すると、なんと呼び出し音が聞こえる
一平はドキドキしていた
期待と不安ではち切れそうな気持ちで
待った やがて・・・
『もしもし、岡村ですけど・・・』
裕子だ
落胆した一平
『何だ、裕子かぁ』
『その声は一平ちゃんね、自分から掛けてきて何だ、とはなによ』
一平は異常事態に気が付いた
『なんで、裕子の所にかかるんだ?』
『それはねぇ、貴方が電話を私に掛けたからでしょ、ねっ』
歯を食いしばりながら言ってるのが良く判る
かなりいらいらしてる
『違う、裕子・・・裕子さん・裕子様、聞いてくれ』
昇格していく裕子
一平は今日の一部始終を話した
話し合った結果2たりでテレホンカードを
電話機に入れてみる事にした
やがて、裕子がやって来た
一平はそっとテレホンカードを
裕子に渡した
2人で電話ボックスに入り裕子が
電話機に入れた・・・
何も起こらない・・・
裕子は静に話し出した
『昨日や、さっきは唐突で突飛な話だったから
ハッキリ言っておかしいよって思ってた
でも、一平ちゃんが一生懸命話してくれるから
何かが起こってると思うように成ったよ・・・
だって大好きな詩織の事だもん・・・』
裕子の目から涙が溢れてきた
『でもね、私には見えないし、聞こえないの
だから教えて欲しいの・・・
何が起こって、どんな話ししたのか・・・知りたい・・・』
裕子も寂しかったのだ
寂しい気持ちを心の隅にしまってたのが
今回の件で表に顔を出してきたのだった
しゃがみこんで泣き出した裕子を
いつもは慰められてる一平が今日は
励まし、寄り添って家まで送っていった
そして、今日は真っ直ぐ帰宅する一平だった
まだ、夕方だったがグラスに氷を入れ
アーリータイムを注ぎロックで飲みだした
いつもの無茶飲みとは様子が違う
ベランダの椅子に腰掛けて
夕焼けをじっと眺めてる、静かな時間の流れを
感じているかの様だった
『裕子、我慢してたんだな・・・
僕がダメダメだから、僕の事気遣ってくれて
自分の感情抑えて・・・』
ふっと、ため息をついて一言
『ありがとう・・・』
『でも、僕は詩織の事が頭から離れない・・・
駄目なんだ・・・』
部屋に戻り
『亡き王女の為のパヴァーヌ』を聞きながら
飲んでる一平
夜も8時を過ぎた頃
テーブルの上のテレホンカードが
キラキラと輝きだした
つづく・・・・
