<< 愛 狐 山 >>
一昨日の夜中12時半。
深夜の山行を終えて仕事場に向った。
村里経由で車を走らせたのだが、
途中の県道で轢かれた狐を発見した。
車を止めて駆け寄ったが、すでに死亡していた。
車には白いシーツを積んであるので、
そのシーツに狐を包み、後部座席に乗せた。
夜が明けたら、山に埋葬しなければならない。
夜が明けるまで、狐の亡骸と一緒に過ごす。
今は、この車が、狼寺の堂宇である。
この車の中で、一心に冥福を祈る。
そして座席を倒して横になり、狐と一緒に寝た。
狐の魂と、一緒に寝るのだ。
いつも、こうしてきた。
轢かれて死んだ子猪や狐や狸と、
こうして一緒に寝てきたのだ。
彼らの魂を、狼寺が一心に祈る。
≪≪あのくたらさんみゃくさんぼだい≫≫
≪≪南無華厳大悲界 摩訶華厳深冥加≫≫
その狐は、女の子だった。
可愛い可愛い女の子。
生まれてからずっと、
頑張って頑張って頑張って生きてきたのだ。
どれほど懸命に全身全霊で生きてきたか、
この胸に痛切に伝わってくる。
君は俺達の家族。一心同体の家族だ。
亡骸の全身を、心を込めて手で撫ぜた。
綺麗な山土を掘り、心を込めて手で均した。
一心に唱え、一心に手を合わせた。




「2014年5月19日」
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2014:05:21 ≫