<<豪雪狼山:01>>
2月15日の豪雪で、山は雪の海となった。
森の我家は、ますます陸の孤島となった。
大雪にはなっても豪雪にはならない山だったが、
いまだかつてないほどに一度に大量に降雪した。
15日の夜に仕事場に行き、翌朝に帰るつもりが、
豪雪で仕事場を出れない状況となり、
周辺の除雪と車の掘り出しに午後まで掛かり、
ようやく夕方の4時に、森の手前まで辿り着いた。
犬達の食料を入れたリュックを背負い、
緊急に購入した小さなカンジキを履き、
犬達の待つ森の我家を目指して歩き始まる。
雪は腰までの深雪だ。歩ける状態ではない。
歩くのではなく、膝と腿で前の雪を押していく。
押してそして、足元の雪を踏み締めていく。
半歩ごとに、何度も雪を踏み固めていく。
そうしないと次の半歩が踏み出せないのだ。
それを延延と続けた。果てしないくらいに。
いつもより気温は高かったが、
それでもスタート時に氷点下8度くらい。
おそらく夜中は同15度くらいだっただろう。
12時を過ぎた辺りから寒気は厳しくなり、
動いていても一向に身体は温まらない。
身体は冷えていき、リュックが肩に食い込む。
胸が張り裂けるほど犬達のことが心配だった。
彼らの状況を考えれば正気ではいられなくなる。
ただただ「あの子たち・・・あの子たち・・・」と想う。
だが進むしかない。それが唯一の道なのだ。
夕方4時から歩き始めたが、
我家に辿り着いたのは、翌朝の7時だった。
徹夜で15時間、雪を押して進み続けた。
犬舎は完全に雪に埋もれていたが、
犬達は全員が無事だった。
その時の安堵は表現できない。
それはとうてい言葉では表現できない。
とにかく緊急の対策作業を始めたが、
それを終えたのが昼の12時だった。
疲労困憊した。この20時間で身体が凍った。
だが犬達の給食を終えたあとに、
再び仕事場に行かなければならなかった。
拓いた雪道トレイルを折り返して車まで戻る。
仕事場に行く途中で、人里まで降りることにした。
熱い汁物を腹に入れて身体を温めることにした。
かけ蕎麦の大盛りを食った。生き返った感じがした。
帰りに車中でルームミラーを眺めてみたら、
信じられないような色の顔が映っていた。
それは赤色なのだが、ただの赤色とは違う。
黒い雪焼けと混じり合った物凄い赤色だった。
いずれにしても、身体が蘇ったということだろう。
あれから毎日、復旧作業を進めてきた。
仕事場の復旧作業もあるから、
毎日10時間くらいはスコップ除雪してきた。
今日は22日だ。身体は平気だ。風邪も引かない。
犬達の無事という喜びが大きなパワーを生んだようだ。
まだ復旧作業は終わらない。まだ当分は作業は続く。
あの子たちと一心同体で乗り越えていく。
≪≪ 「02」に続く ≫≫

踏み込めば、ズドン!と腰まで沈む。

これは誰だろう?どんな動物だろう?
いつも不思議に思うのだが、深雪でも「足跡だけ」なのだ。
普通なら胴体まで沈んで胴体の跡が残ると思うのだが。
なにしろここの雪はアスピリンスノウなのだから。
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2014:02:22 ≫