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2013年11月1日。「狼山晩秋」。
カラ松が金葉となり狼山の秋が終わる。あの白銀世界が近づいている。

1990年。「狼:太郎」。
太郎のホウルは重低音から始まり、辺りの大気を振動させた。
それは誇張ではなく、ほんとうに振動させるのである。
成狼時の肩高は88cmくらいはあっただろう。とにかく大きく重厚な大狼だった。
狼は犬と似たように見えるだろうが、その中身は「全くの別物」である。
どれくらい「全くの別物」かを、想像できる人は少ないだろう。
狼はスマートに見えるが、アゴと牙を含めた全身が別次元である。
それが別次元でなければ、「狼」の立場で生きられないのだ。
太郎と私は服従関係・主従関係ではなかった。
もし雄の真狼に服従関係・主従関係を求めれば、
絆どころか家族として共に暮らすことも不可能となる。
真狼は人間の支配者意識を一瞬で見抜くのである。
そして人間の支配者意識には絶対に屈従しない。
だから私は主人ではなく「父」だった。
真の父になるために、全身全霊で修行した。
毎日毎日、渾身の力を振り絞って修行した。
太郎は私を一瞬で倒せる大力者だが、太郎は私を父と仰いでくれた。
太郎は私をリスペクトしてくれた。私も太郎を本心からリスペクトした。
そして我我は、真実の絆の世界を生きた。
いまも太郎の、あの重厚なホウルが聴こえる。
あの魂のホウルが、この森に響き渡るのだ。
私は深く瞑目し、太郎の魂と無限の彼方に突き抜ける。

「月と光玉」
月と光玉が重なり合っている。
太郎の魂は時空を超えて輝き続ける。
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2013:11:08 ≫