<<狼山春季>>
猪たちの猪道を少し入ってみた。
それがどちらの方向に続いているのかを、
多少なりとも知っておく必要があるからだ。
だが奥まで入れば彼らも気になるだろうから、
だから少しだけにして引き返したのだ。
しかし大体の方向は直感で分かった。
もちろん私一人で行った。犬たちは犬舎にいる。
犬たちもこの猪道を知っているが、
暗黙の了解があるから、奥までは行かない。
その奥は猪たちのプライベートな場所だからだ。
ところでこの猪道が、元もとのルートなのだ。
「記事:野性の掟」で書いた不測事態の時は、
猪たちは本来よりも我家寄りに近づいていたのだ。
だから我我は突発的に遭遇してしまったのである。
しかし有難いことに彼らは元のルートに戻ってくれた。
そして我我も少し運動ルートをずらして迂回している。
こうして以前のように暗黙の調和が取り戻された。
因みに熊のエリアは我家を中心にすると反対側だ。
熊たちは近年は我家には滅多に接近してこない。
猪よりも熊の方が、さらにデリケートなようである。
だから我我も、そちら方向には運動に行かない。
熊たちにも我我の気持は、きっと伝わっているだろう。
ところでここは、里山でも別荘地でも無く「山」である。
動物たちも、ここでは安心して暮らしているのである。
今日は春季の近況写真を載せてみる。
これまで冬季の写真は一杯載せてきたので。
ここに載せた以外にも家族は大勢いるのだが、
なかなか全員の写真は撮りきれない。
あるいは調練の写真も、普段は撮ることができない。
いつかはそういう写真も撮れればと思う。

これは猪たちの猪道。ずっと奥まで続いている。
この道を見失えば、簡単に森に迷うことになる。
人間ならば延延と彷徨うことになってしまうのである。
それにしても動物たちの感覚は、凄い!の一言である。

元気に回復した山斗と散歩する。
山斗もまた、私の様子を確認しながら進んでくれる。
自分が不安なのではなく、私を気遣ってくれているのだ。

山斗は15歳という超高齢だ。
まだまだ元気一杯だが、肉体の老いは深まる。
壮年期にはブルマスティフのような筋肉だったが、
その筋肉は落ち、ずいぶんとスマートになってしまった。
とても寂しいが、それはしょうがないことだ。
それが今生の命の定めなのだ。

2010年1月。山斗が12歳の時。
雪は非常に深い。この時の気温は氷点下10度くらい。
前方は兄弟の「猛:takeru」である。
猛は山斗よりもさらに筋肉体であり、ブルドッグの如くだ。
肥満のように見えるかも知れないが、これは筋肉なのだ。
もちろん猛も、今も元気一杯である。

「照華:teruka」。後ろは16歳の「悍:kan」。
照華はもうすぐ9歳だ。ほんとうに早いものである。
照華はこの前、野生の猪に突撃して見事に吹っ飛ばされた。
とても小さな女の子なのだが、非常に気が強いのだ。
もちろん私には甘えん坊の、可愛い可愛い愛娘である。

超高齢の「悍:kan」だが、まだまだ元気だ。
この撮影の時に、とても優しい光が辺りを包んだ。

照華と「椿:tubaki」。
我家の犬たちの野性感覚は凄い。
感覚の点から言えば、野生動物に引けはとらない。

椿は10歳だが、運動能力は衰えていない。
彼女は物凄く野性が強い。しかしとてもとても優しい。
普段はとてもとても控え目で、大変に照れ屋さんだ。

2010年1月。「つばき」と「あかね」。

そら。てん。しょう。しん。どう。足写真は「ごん」。
もちろん、彼らは自分の名前を知っている。
名前とは尊いものだから、心を込めて一心に名付けた。
彼らはとにかく丈夫である。心身ともに強靭である。
これまで一度たりとも不調になったことが無いのだ。
そして一度たりとも食欲の落ちたことが無いのだ。
そして氷点下20度の真冬でも元気満満なのである。
ところで「ごん」は、数年前にマムシに咬まれた。
物凄く探検好きな彼は、節度を忘れて深入りしたのだ。
あれほど「節度を守れ!」と厳命していたのだが、夢中になったのだ。
彼は片方の後肢の筋肉を著しく失ったが、健康は完全に取り戻した。
その後も元気満満に、筋肉を失う以前と同様に躍動している。
しかしそれ以前の彼は、
疾走ジャンプで私の頭上を超えるくらいの運動能力者だったので、
往時を想うと少し寂しい気持になるが、彼は全然気にしていないのだ。
私は彼の強靭な体力と強靭な精神力を心から尊敬している。

「天:ten」。犬たちは私を確認しながら進んでいく。
ただし私が「GO!」の合図を出せば、即座に躍動を開始する。
深く深く躍動状況を洞察し、時機を外さないように招呼を掛ける。
私が招呼を掛ければ即座に全員が舞い戻るが、
招呼には家族の命運が懸かっているので、いつも命懸けだ。

これは夜に入った森。
夜の山の森の気配は極めて独特である。
いくら長年棲もうとも、独特の緊張感に身が引き締まる。
猟師は武器を頼りにするが、私はいつも素手丸腰だ。
素手丸腰だからこそ、夜の山が別世界だと実感できる。
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2013:06:02 ≫