<<猪の心>>
今年も猪たちは元気でいるようだ。
我家の近くの「ヌタ場」を見て安心した。
ヌタ場とは、猪たちの泥浴場のことだ。
泥浴にはいろんな意味があるのだが、
なによりも彼らはとても綺麗好きだから、
山の清浄な泥で身体を洗うのである。
我家と彼らには、暗黙の了解がある。
暗黙の了解を互いに護りながら生きている。
彼らは私と犬たちの本心を知っている。
私と犬たちも、彼らの本心を知っている。
だから互いに自然体で暮らすことができる。
今年はヌタ場の淵の一面に綺麗な花が咲いていた。
随分と長い間、ずっと咲いていたのである。
記念にと思い、携帯写真を撮ろうとしたのだが、
なぜか「モヤ」がかかったようにしか映らなかった。
何枚撮ってみても、そのようにしか映らなかったのだ。
「ヌタ場には神が宿る」という言い伝えがあるが、
それは本当のことらしいと感じた。
彼らが生きるのに、どれほど大変か、
それがありありと伝わってくるから、
祈らずにはいられない。
彼らは生まれた瞬間から死ぬ瞬間まで、
全身全霊で生きている。
これは大袈裟な誇張の賛美ではない。
彼らは本当に、そのように生きているのだ。
それを想えば、祈らずにはいられない。
夜の森で野性禅に入っていると、彼らの気配も感じる。
かなり近くまで近寄ってくることもある。
私が祈っていることを、彼らは確かに感じている。
彼らがそれを感じていることが、はっきりと分かるのだ。
***全身全霊の命たちを、ただ一心に祈る***
***阿耨多羅三藐三菩提***

今年はモヤがかかったようにしか映らなかった。
小さな赤い花が一面に。光り輝いて見えるのも花木である。
この後にまた、もっと丸いヌタ場が造られた。

去年の写真。とても几帳面に丸く造る。

去年は、まだ花が咲いていなかった。
■南無華厳 狼山道院■
≪ 2012:09:17 ≫